教えるときに「教えます」と言うのはNG!?
人材を育てるにあたり「教えます」「指導します」はNGです――先日参加した人材マネジメントの研修で、講師からこのように言われました。教えるときに「教えます」と言えないなんて何か変ですが、講師曰く「教えるは上から目線」「若い人とは対等な関係で接しなければならない」とのことです。周囲の参加者はみんな頷いており、隣に座っていた方からは、教えると言わないよう教師に伝えている小学校もあると聞きました。
私が勤める近代セールス社は、銀行等の金融機関向け専門出版社として、雑誌や書籍はもちろん、通信教育講座も多数展開しています。そのテキストをいくつかめくると、「教えるときには…」「指導の質を変化させよう」など、教える・指導という文字が頻出…。そういえば私も以前、銀行の女性管理職のインタビュー原稿を書いて掲載前にチェックしてもらったところ、「指導という言葉はすべて『サポート』に直してください」と指示されました。指導と書くと、その記事を見た若い行員に偉そうと思われるかもしれないと言うのです。
今後は通信教育のテキスト改訂時に、教える・指導するという文字を見るたび、校正を入れるべきか悩むことになりそうです。
▲弊社の通信教育テキストの一部。意外と出てきます…
かつては「ノートにメモを取る」「会社を休むときの連絡は電話でする」、そして「仕事は出社してする」というのが当たり前でした。いま、これらを社員に強要していては「時代遅れ」と言われてしまうでしょう。昔は「人前で叱ることはNG」でしたが、いまは若い人を叱ること自体がNG。「頑張ってください」と言うのも、相手にプレッシャーを与えるからダメ。「可愛い」と言うのも上から目線だと感じる人がいるそうです。
このような意識の変化と同じように、教える・指導するという言葉も、もちろんそれ以外の、いまは当たり前のように使っている言葉も、いつか「違和感がある」という人が増えて別の言葉に置き換わっていくかもしれません。そうした変化・トレンドをしっかりキャッチして、今後発刊する書籍や通信教育テキストの校正・校閲に活かしていかなければいけないと思うのです。
折しも、放映中のドラマ『不適切にもほどがある!』(主演・阿部サダヲさん、脚本・宮藤官九郎さん)が話題になりました。阿部さん演じる昭和のおじさんが令和のコンプライアンスをぶった切っていくストーリーなのですが、私も阿部さんが放つセリフに共感を覚えたものです。これすなわち、私が昭和のおじさんであることを示しているのですが、意識を改めて、仕事では周りに教える・指導するのではなく、周りをサポートする・支援することを心がける――これにより、令和のおじさんに変わっていくことを目指します。