入「社」一年目
初めまして、批評社の渋谷と申します。批評社に入社して、ちょうど一年が経ちました。
私は2005年に大学院を卒業し、批評社に就職しました。批評社という会「社」と、「社」会という二つの「社」に入ったことになります。この一年、学生から社会人への変化と、様々な業界のなかでも出版界と異業種との違いを感じたり考えたりしてきました。
私がこの業界を希望した理由は、もちろんまず本が好きだったことがあります。その他に、自分がしている仕事がどのように形になっているのかを実感しながら働きたいと思っていたからです。大きい出版社より小さい出版社を志望したのもその理由からです。編集、制作、営業等で専門的に仕事をするよりも、包括的に出版のことを覚えたいと考えていました。
それから一年、「もう」というべきか「まだ」というべきかわかりませんが、志すのは簡単ですが、できるようになるのは思った以上に大変です。まだまだ若輩ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
批評社では「教育直語」というシリーズを刊行していますが、この5月にシリーズの3巻、6月に4巻が発行予定と、立て続けに出ます。発売中の『はぐれ教師純情派』は、現役中学校教師のエッセイですが、なかなか軽妙で楽しい。基本的に中学校の話ですが、社会人一般に通じる話題も多いです。たとえば、著者は北陸の先生で、「出勤」の項目では自家用車通勤の「通勤手当」の計算をしています。電車・バス通勤なら定期代としてはっきり額がわかるのですが、自家用車で通勤する場合の金額は何の値段なのか? それは正当な額なのか? という話です。私は秋田出身ですので、父親が似たような話をしていたことを覚えています。今はガソリン代が急騰しているので大変だろうな〜などと連想したりしました。ただこの項で著者は毎日、特に冬場雪道を片道45km運転する苦労に触れ、「満員電車」に揺られて通勤することに「憧憬にも似た感情を抱いてしまう」「満員電車にねぼけまなこで揺られてみたい」と書いています。この辺、実際毎日「満員電車」に揺られて通勤している身にとっては共感しかねてしまいますが。
ふと思ったのですが、最近だんだん暖かくなり、通勤する人びとも徐々に薄着になってきています。さて、夏でも冬でも同じ時間の電車なら同じくらいの人数が乗っているはずです。冬場ならみんなコートを身にまとっています。夏になれば薄着になります。その分、満員電車も若干ゆとりがでるはずではないでしょうか? 一人分はたいしたことがなくても、それが何十人何百人分となれば結構な量です。それなのに満員電車はいつも同じ混雑です。コートの体積はどこにいったのでしょうか?
話がそれました。本の話にもどります。もう一つ、「出張」の項を紹介します。教師の集会への出張等へ行くと、晴れやかな顔をしている人と、つまらない顔をしている人がいるそうです。著者曰く、楽しい学校に勤務している人は出張が嫌い、辛い学校に勤務している人は出張が楽しくて仕方がない。私も営業として、いくつかの出版社合同で教師の集会で直販を行ったことがありますが、確かに妙に生き生きとしている人がおりました。いえ、出版社の側ではなく、教師の側です、もちろん。
このように社会人として、楽しめるエッセイが多々収録されています。また、学校生活について書いている項でもいろいろとうなずける部分が多々あります。何より誰もが一度は中学生だったわけですから、共感や違和感を覚える部分は多々あります。
今回、版元日誌の担当と言われて、何を書いたら良いものか皆目わからず、とりあえず自己紹介と本の紹介をいたしました。版元ドットコムは今は大所帯で日々参加数も増えていますので、次回が巡ってくるかどうかわかりませんが、次なる機会の為に仕事以外で文章の研鑽も積んでおこうとおもいます。雑文失礼いたしました。