書誌情報と書影とopenBD
openBDプロジェクトは、書誌情報・書影の収集を版元ドットコム、APIシステムの開発をカーリル(図書館横断検索サービス開発会社)で分担しあって、書誌情報・書影をAPIで、だれもが利用できるサービスをはじめた。
●だれもが自由に使える書誌・書影
ある本の存在を知るきっかけにインターネットの情報が大きな存在感となっている。
インターネット以前なら、ある本の存在を知るのは書店であったり、新聞・雜誌などの書評や広告だったり、友人・知り合いの口コミからだったりしていた。
インターネットでは、ブログという個人の「日記」、ツイッターやフェイスブックなどのSNSの利用が拡大して、個人の口コミがより手軽になって、広がっている。その際に本の話も多く口コミされている。
こうしたインターネット上での本の紹介では、それを読んでくれた人がその本の購入にたどり着けて欲しい。
特にわれわれ出版社としては、タイトル・ISBN・著者名・出版社名を表示してより確実にたどり着けるようになって欲しいと考える。
また、購入意欲を高めるために書影も表示されたい。
版元ドットコムが図書館蔵書横断検索サービスのカーリルとopenBDというサービスをはじめた動機は、書誌情報・書影をだれもがカンタンに利用できる環境をつくり、われわれのつくった本を一人でも多くのひとに知ってもらいたかったからだ。
●ネット書店の広告のためのAPIにかわって
現在、個人がブロクで自分が読んだ本を紹介するときによく見る書誌情報・書影の多くはアマゾンのAPIを利用したものになっている。アマゾンのほかにも、楽天など幾つかのネット書店が、APIで書誌情報・書影を提供していて、それが使われる。
ただ、こうしたネット書店のAPIを利用した書誌情報・書影の利用は、そのネット書店を宣伝をするための利用というのが条件になっている。
逆に言えばネット書店は、ブログやSNS利用者に、サイトや本(商品)への誘導に上手に協力してもらっている。
こうした「協力」もひとつの影響力となって、ネット書店の隆盛が起きていると言える。
だから、書店員などがブログやSNSで本を紹介する際に、書誌情報・書影を自分で入力したり、撮影したりするしかない、ということになってしまうのだ。
また、図書館が提供する蔵書検索サービス(OPAC=オパック)では、書誌情報はMARCとして購入しているものを利用できるが、書影を利用するのは難しい。ネット書店の広告で利用するのではないからである。
こうした広告を条件としたネット書店APIとは別に、広告を条件としないAPIを、ひろく配信しようと考えたのは、「本を自主的に紹介してくれる人たちのブログやSNSでの利用」をやりやすくする環境をつくることによって、本が多くの人の口コミになって、本の世界がよりいっそう豊かになってほしいからである。
●すすむ出版界の書誌情報・書影の整備
出版界では、日本出版インフラセンター=JPRO設立を画期として、急速に書誌情報の整備がすすみつつある。
書協の日本書籍総目録からbooks.or.jpが一九九七年九月開設される。この取組みが出版界の書誌情報のインターネット時代に於ける整備の第一歩だ。
二〇〇二年にはJPOが設立され、その在庫情報整備検討委員会での検討・答申(二〇〇四年)をへて商品基本情報センターが二〇〇六年に設立され、出版社から書誌情報の収集体制を本格的にはじまる。その後、新刊予約を普及させるためにJPOが「近刊情報センター」を二〇一一年四月に開設して、現在は「出版情報登録センター」として拡充・整備されている。
最近はひと月に三、七二〇タイトルの書誌情報と二、五三二タイトルの書影が出版社から登録されるようになる(二〇一六年十二月)。
またこの情報を受信しているネット書店のいくつかでは、登録の翌日から数日で予約販売を開始されるようになり、先日三月二三日の日販のプレスリリースによれば、書店向け情報提供システムに、このJPO出版情報登録センターの近刊情報を利用した、近刊予約サービスが拡張された。
「書店店頭では、書籍・コミック・ムックの近刊商品の商品情報・発売予定日をその場で確認し、画面操作のみで注文できるようになります。また予約した商品は、新刊送品と一緒に入荷するため、発売日にお客様にお渡しすることが可能になります」(日販ニュースリリース 2007/03/23)
こうした出版界の書誌情報整備に特筆すべきこととして、商品基本情報センターの運営費用の一部を出版社が、新刊発行一回に限り一冊につき五〇〇円の拠出が始まったことである。
書誌情報の整備を、大手から中小出版社にいたるすべての参加出版社の費用拠出ではじめたことは、出版界の画期であった。書誌情報整備の責任を取次や書店の努力に依存するのではなく、出版社の責任で行うことにしたからである。
●版元ドットコムの書誌情報・書影
こうした、出版界における書誌情報整備の永年の取組みを受けて、版元ドットコムは二〇一五年九月に、ウエブサイトとシステムをリニューアルする。
二〇〇〇年発足からリニューアルまでは、会員社(発足時三四社、現在二四〇社)の本の情報だけを掲載するサイトだったものを、JPO出版情報登録センターが出版社から集約した新刊の情報を受信して、会員社の発行してきた本の書誌情報(目次情報などなるべく多くの情報を登録できるようにしている)と一緒にしてウエブサイトに掲載。検索したり、新刊として紹介したり、新聞書評掲載情報など、ためし読みデータとあわせて紹介するサイトにした。
版元ドットコムサイトに掲載された本の情報は、JPO出版情報登録センターの収集した情報と、版元ドットコムの会員社の情報をあわせて掲載される。つまり基本的に日本のすべての出版社の本の情報をまとめて検索することができるようになった(もちろんJPO出版情報登録センターの新刊収集率はまだ八〇%程度なので「すべて」の本にするためにはさらに収集率を高めなければ「すべて」にならないが)。
●openBDでの利用条件は二つ
openBDはだれでも自由に使える書誌情報・書影のAPIだ。
このAPIをつかった書誌情報・書影などの利用条件は、大きく二つ。
一つは「本の販促・紹介目的」であること。
このことについてはガイドラインで以下のように記している。
「openBD APIが提供するのはデータの「利用権」です。openBD APIが提供する書誌・書影・内容紹介・書評情報などすべての情報は、本の販促・紹介目的に限り使用できます。個人・団体・企業を問いません。」
もう一つの条件は、openBDプロジェクトからの削除要請があった場合には速やかにそれに従うようにする、ということ。
利用規約の第四条(利用者の義務)に
「個別の書誌・書影情報について、プロジェクトからの削除要請があった場合には、速やかにそれに従うものとします。」としている。
一つ目の条件は、このopenBDが、書誌・書影情報を多くの人に利用してもらうことで、本に関わる口コミに書誌情報・書影が手軽にツケられるようにすることが目的であるからだ。
二つ目の条件は、このopenBDのAPI配信の情報が出版社の、発行前からの情報をもとにしているためだ。
まだ本ができる前の情報の場合、まれに発売が延期になるといった場合がある。そこで、それらの情報をいち早く修正したり削除することを、利用者にお願いしている。
この二つの条件がいちばん基本的な条件ということになる。
●高速化をめざしたわけ
また、このopenBDには二つの特徴がある。
一つは、APIの高速化を実現したこと。
プロジェクトでの実測の応答速度(フレッツ回線で計測・・レイテンシ25ms程度)は、
・10件の取得 0・03秒
・1000件の取得 0・5秒
・10000件の取得 5・5秒
・全件の取得 50秒
この高速化は、利用者のストレスを大幅に減らすと同時に、インターネットウエブで高速化のために多く使われるキャシュという、一時的なデータの保管を不要にすることで、書誌情報の修正・削除をいち早く反映できるように、最新の情報を、その都度、利用するようように促すためである。
もう一つの特徴は、書影をAPIで利用できるようにしたことである。本の販促・紹介目的に書影を利用したい場合に、だれもがAPIで利用できるようになったのだ。
openBD発足後、複数の企業、複数の図書館、複数の本の紹介サービスサイト運営者から問い合わせを頂いた。
広告宣伝といった条件のつかない、書誌情報・書影の、それもAPIでの提供が多くの人に求められているからだと思われる。
本というものを商品流通として語られるときに、ISBNという商品コードが業界全体で整備されていることが、特徴・利点として語られることが多い。
だれにとっても入手しやすいという状態を生み出すことがその商品世界に大切であり、その基盤が重要だという認識を持たれるからだ。
書誌情報・書影が、ISBNとならんで、その世界を豊かにする基盤となるのだと思う。
openBDが、基盤のひとつとしてその役に立つことを願っている。
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【資料…01】
■書誌情報項目
→OpenBD 書誌APIデータ仕様 (v1)
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【資料…02】
■openBD データ利用のガイドライン
openBD APIが提供するのはデータの「利用権」です。
openBD APIが提供する書誌・書影・内容紹介・書評情報などすべての情報は、本の販促・紹介目的に限り使用できます。個人・団体・企業を問いません。
提供するデータには近刊情報が含まれますから書誌の内容や書影が時間とともに変更・修正、さらには削除される可能性があります。利用側の事情で書誌データをキャッシュする場合は、データの変更をできるだけ早く反映するようにしてください。
個別の書誌・書影情報について、openBDプロジェクトからの削除要請があった場合には、速やかにそれに従うものとします。
openBD APIから得られたデータを、任意に改変してはいけません。不具合の報告や改善の提案は歓迎します。
→openBD データ利用ガイドライン
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【資料…03】
■openBDのウエブサイト
→openBDのウエブサイトはこちら https://openbd.jp/
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【資料…04】
■openBDで発信する書誌情報・書影データと出版界のデータの流れ
添付 openBDで発信する書誌情報・書影データと出版界のデータの流れ.pdf