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残すための書籍

 新聞、雑誌で仕事をしていた編集者3人が集まって、東京の駒込に小さな出版社をつくったのは7年前のことです。

まずは社名をどうしようかという話になり、当時、航空会社の機内誌の仕事で深く関わっていたハワイにちなんだ名前にしたい……そうだ、kukuiというハワイの樹木から社名を頂いたらどうかと思いつきました。

 kukuiは山や森のなかだけでなく、公園やショッピングセンターなどでもよく見かける身近な樹木です。小さな愛らしい白い花をつけますが、よほど気をつけていないと見過ごしてしまうほど目立ちません。が、ハワイの人にとっては特別な木なのです。
 仕事を通して知り合ったクムフラ(フラの師匠)が、ある撮影のときにkukuiの葉でレイを編んでくれました。「これは何の葉はですか?」と聞くと「kukuiの葉よ。ほら、あそこにあるあの木」と公園の木を指します。
「kukuiの木には3センチぐらいの実がなるでしょう。この実の中にはオイルがたっぷり詰まっていて、昔は料理に使ったり、そのオイルに火を灯したりしたの。その灯りは私たちハワイ人にとって祖先が見つけ出した生活の知恵であり、暗闇を照らして明るい未来へと導く大切のものだった。だからkukuiは知恵の木と呼ばれているのよ」

 そんなkukui booksに最初に舞い込んできたのは、30代の女性2人の仕事の軌跡を残す自費出版の話でした。人生を振り返るにはまだまだ早い彼女たちと何度か話をするうちに、作家でもアーティストでもないごくごく普通の人が、自分たちを書籍に残したいという強い気持ちを抱いていることに気づきました。
 出版社としては売れる書籍をつくりたいのはやまやまです。企業としては当然のことですが、売れることを目的にするのではなく、売れないだろうけれど「残す」ことを目的にした書籍があってもいいのではないか。そこには私たち編集者が見逃してきた知恵や明るい未来へ導くヒントがあるかもしれない。
 
 ありがたくも続けられている雑誌の仕事の傍ら、「残したい」という強い思いを持っている人たちの自費出版を今も行なっています。いつかは出版したいと思っているハワイの知恵を残す書籍は未だ完成に至りません。自らの強い思いが形になる日まで試行錯誤を繰り返しながらコツコツと本作りをしてまいります。

kukui booksの本の一覧

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