Author Archives: ポット出版 沢辺均
ネット書店の近刊予約状況を調べてみた。 (最終報告 2017/07/11時点の調査にもとづいて)
添付資料:
20170522ネット書店新刊予約調査.PDF
版元ドットコムでは、6/8木から、ネット書店hontoでの近刊予約システムを稼働させた。
この近刊予約システムを、honto・MJ(丸善ジュンク)と半年以上の協議・準備をかさねてつくったのは、アマゾン以外のネット書店で近刊予約されない・予約を始めるのが遅い、という問題を解消したいからだ。
アマゾンは在庫数量の調整に際して出版社からの営業にほとんど対応しない。
アマゾンは「発注システムからの注文をまて」という考えのようで、新刊配本時に在庫がなかったり、メディアやSNSでの露出による注文急増にまったく対応できない。
したがって、在庫調整に協力可能なネット書店を拡げていこうと考えている。その第一歩が、このhontoとの協業なわけだ。
さらに、この近刊予約システムはほかのネット書店ともすでに利用の相談が始まっている。利用ネット書店の拡大も引き続き努めていく。
この近刊予約システムをさらに有効活用するために、ネット書店における新刊の近刊予約状況の調査を、版元ドットコム会員社の協力を得て調査した。 (さらに…)
書誌情報と書影とopenBD
openBDプロジェクトは、書誌情報・書影の収集を版元ドットコム、APIシステムの開発をカーリル(図書館横断検索サービス開発会社)で分担しあって、書誌情報・書影をAPIで、だれもが利用できるサービスをはじめた。
●だれもが自由に使える書誌・書影
ある本の存在を知るきっかけにインターネットの情報が大きな存在感となっている。
インターネット以前なら、ある本の存在を知るのは書店であったり、新聞・雜誌などの書評や広告だったり、友人・知り合いの口コミからだったりしていた。
インターネットでは、ブログという個人の「日記」、ツイッターやフェイスブックなどのSNSの利用が拡大して、個人の口コミがより手軽になって、広がっている。その際に本の話も多く口コミされている。
こうしたインターネット上での本の紹介では、それを読んでくれた人がその本の購入にたどり着けて欲しい。
特にわれわれ出版社としては、タイトル・ISBN・著者名・出版社名を表示してより確実にたどり着けるようになって欲しいと考える。
また、購入意欲を高めるために書影も表示されたい。
版元ドットコムが図書館蔵書横断検索サービスのカーリルとopenBDというサービスをはじめた動機は、書誌情報・書影をだれもがカンタンに利用できる環境をつくり、われわれのつくった本を一人でも多くのひとに知ってもらいたかったからだ。 (さらに…)
『同性パートナーシップ証明、はじまりました。』をつくったときに、考えていたこと。
今の日本社会にとって、一番大切なのは、自分の価値観・考え方と他の人の(自分のモノとは違った)それを、どうやって「共存」させるかという ことだと思う。
恋愛やセックスが好きな人と、嫌いな人、どっちでもいい人。その対象が異性か同性か、どっちでもいいのか。
さまざまな「人それぞれ」を尊重するってのは、今の日本ではなんとなく「そうだよね~」ぐらいの合意ができているように思える。
ところが、その「人それぞれ」のことから派生する社会制度のことになると、途端に正しさの議論になってしまっていないか? (さらに…)

緊デジへの参加、ありがとうございました。
ポット出版の沢辺です。版元ドットコムでは組合員社(まあ、幹事みたいなもの)の一員です。
緊デジ(経済産業省「コンテンツ緊急電子化事業」)では、JPO(日本出版インフラセンター )で標準化委員などとして参加し、また出版社申請と制作の仕事を担当しました。
版元ドットコムの組合員社・会員社へは、版元ドットコムの一員としてもたびたび協力をお願いし、多くの皆さんに、緊デジ事業に参加していただき感謝しています。
たいへん遅くなってしまいましたが、みなさんに報告とお礼をさせていただきます。
(さらに…)
YouTube(ユーチューブ)への期待と業界通説への違和感
年明け早々です。ってなんの関連もないけど、細切れの話で失礼します。
さて、YouTubeってのがありますよね。
これを利用して、本のプロモーションビデオをつくって公開するってのを考えました。
もう数日で正式にプレスリリースします。
すでに、音楽CDなどのプロモーションにはビデオが一般的なものになっていますよね。
この企画は、これまでの版元ドットコムなどを中心にした共同のインターネットでの[本]の販売促進を、さらに動画をつかってやってみようと考えたもんなんです。
(さらに…)
本とお金
今、出版業界ではISBNの13桁化の議論にかかわり始めたりしたんで、そんなことを書こうかとも思ったんだですが、事実経過を点検しなければならないので、やめました。
今回のテーマは、僕の大好きな「本とお金」です。
出版業に関する、具体的なお金のことを書いて自分の勉強に使わせてもらった「本」の紹介をします。
(さらに…)
取次会社にお願い!新刊配本リストの無料提供を[流通合理化に必須の情報公開・共有]
【“流通合理化”に賛成】
現在、取次各社が返品業務を大幅に変更しようとしている。前提として、僕はこれに賛成します。出版業界とそのシステムには様々な改善・改革の必要があると思っているので、その取組みには大いに期待を持っています。
ただ、そんな今だからこそ取次各社にお願いしたい。同時に、業界全体の流通情報の公開・共有を進めて欲しいのです。 (さらに…)
(その2)自由な社会への道と版元ドットコムとの関係を考えてみた
「本の未来を、私たち版元自身の手で切り開いていくために」などと、ずいぶん肩ひじ張ったものでした。
一年間の新刊点数が7万点をこえています。一日に250点ほどになるようです。
この「7万点」という数字をめぐっては、作りすぎだとか、粗製乱造などというように言われています。
でも、ぼくはどうもその「粗製乱造」論に納得がいきません。
実際7万点が「正しい」新刊点数かはよくわからないし、正しい新刊点数を考えたり決めようとしてもあまり意味があるとは思えません。
しかし、7万点という数はともかくとして、たくさんの本を出すことができる状態はとてもいい状態だと思います。
この、出せる自由、がぼくらの自由の度合いを表す指標となると思うからです。
自分が好きなもの、他者に伝えたい考え、などを出すことができる。
多くの本のなかから自分の好きなもの、知りたいことが書いてある本を選ぶことができる。
こうした自由を増やすことに、近代の人間が力を注いできたのだとすれば、せっかくの自由をへらすようなことはマイナスなのだと思うのです。
よく「こんな本を出すことが表現の自由ではない」といって、一部の本を批判する論調を目にしますが、そんな本を出すことも、自由なのだと
思うのです。
もし、ある本が本当に必要ないなら、買われなかった、という事実で退場させられればいいのだと思います。
いま、僕らが日々入手しているものは、ただたんに生存のために必要なものではなくなっています。
生きるために必要な栄養素として食事をしてるというよりも、おいしいものを食べようとしています。
コンビニの弁当でさえ、安さ・手軽さばかりではなく、おいしさを競っていますよね。
いかに栄養をとるかではなく、とりすぎた栄養をいかに燃焼させるか、のほうが問題です。
必要、ではなくって、好きなもを手に入れることが、今のぼくらには大切なんだと思います。
その程度までに、人間は畑を耕してきて、蓄積させてきた。
で、その好きなものを大切するって態度が、だんだんとうまくなって、他者の好きなものを排斥したりしないで共存できる態度になっていくのではないかな、と思います。
さて、版元ドットコムです。
版元ドットコムは主に小規模の版元(出版社)が結果的にあつまった団体です。
たぶん、出版傾向は、売れるだろうモノよりも出したいモノに傾いているんだと思います。
食べ物にたとえるなら、ニチレイの「冷凍・シュウマイ」ではなく、商店街のお総菜屋の「シュウマイ」だったり、つぶれかけたばあちゃんの店のものだったりするんだと思うのです。
冷凍庫にいれて、仕事で遅くなったときにチンしてすぐ食べられる「冷凍・シュウマイ」は便利だし、味だってずいぶんと工夫されていておいしいもんです。なので、それがいいという人も多いでしょう。
またべつに、総菜屋の「シュウマイ」を好きでこのんで買ってくれるひとも、そこそこにいると思います。
日もちしなかったりするけど、まあそっちが好きなんで、って感じで。
で、その両方があるから、ぼくらの食事は、選ぶ自由を増やすことができて、ついつい食べ過ぎてしまうのだとおもうのです。
総菜屋を選ぶこともできるから、ニチレイの「冷凍・シュウマイ」を選ぶ日もいい、ということになるのではないでしょうか。
小規模の版元が、自分の好み・一部の偏った好みの本をだしていて、全体の本の世界の選ぶ自由の幅が広がってるんだと思うのです。(大きな声では言いづらいですけど「小」があるから「大」があり得るんだぞ、と思ってもいます)
そこで問題は、しかし小規模の出版は、その本の存在そのものを知らせることがむずかしいということです。
東京にすんでるぼくは、大阪のある町のお総菜屋の存在を知りません。
ところが、版元ドットコムの存在は、インターネットという道具をつかって、少なくともその存在を知らしめる最低限のことを実現できるようにしたのだと思います。
あとは、よりいっそう自分自身の好み、一部の好みの本をつくっていくのです。
もちろん、それでもだれからも見向きもされなかったら、退場せざるを得ないかもしれませんが……。
沢辺 均(ポット出版)
版元ドットコムの「初心」を読み返してみる
版元ドットコムがサイトを公開したのは、2000年2月。テ ストサイトとして、データベースだけを公開し、販売システムは間に合 わなかった。販売を開始したのは夏。
その前年の1999年12月と2000年2月に版元を 対象にした説明会を開きました。
そのときに書いた「呼びかけ文」が下記のものです。
サイト公開から5年たった。
当時、版元ドットコムがめざしたものがなんだったのかもう一度ふりかえってみたいと思います。
私たちは、本のデータベース、ネットワークでの販売と決済、本のダウ ンロード販売のサイト(ホームページ)として、「版元ドットコム」 を、2000年3月に試験公開しようとしています。
この版元自身が運営する共同事業に、版元のみなさんの参加を呼びかけ ます。
私たちが版元ドットコムのサイトをつくるのは、版元こそが、「本の内 容」を全国の読者に知らせる責任があると思うからです。
読者が必要とする本の存在を知るためには、どんなタイトルの本があるかではなく、どんな内容の本が、何というタイトルで売られているの か、検索できなければなりません。
その事業は、版元自身が運営しなければならないと思います。
書協がデータベースを運営しています。取次が、書店が、販売のための サイトでデータベースを開いています。書協の基礎的なデータを版元が 提供しているのを除けば、取次と書店が私たちのつくった本を見ながら、データをつくってくれています。しかし、その本を熟知している版 元自身が、本来こうしたデータをつくって全国の読者に利用してもら い、取次や書店にも提供すべきだと思います。
また、本の内容を知らせることは、読者とその本と書き手のためである ばかりでなく、売上げという形で私たち版元自身のためになるのです。
ネットワークよって、「本の内容」を全国の読者にデータベースのサイトで公開することができるようになりました。もう、手をこまねいているわけにはいきません。私たちは、相変わらず客注にかかる時間を短縮できずにいます。版元に届いた短冊の日付を見ると、ゾッとするほど時間の経ったものもあります。たぶん、「迷子」になっていたのでしょう。
客注にかかる時間の短縮にむけて様々な取組が必要だと思います。私たちは、その一つとして、ネットワーク上で決済し、送料無料で直接、版元からお客に送ることにしました。これで、注文を受けてから2〜5営業日後にはお客に届けることができます。
このシステムは書店にも直販するので、客注に迅速に対応してもらえます。書店と一緒にこの客注品問題を解決する、具体的な取組を版元自身もしていかなければならないと考えるからです。ネットワークが拡大する一方、本の売上げが減少しています。いまほど版元に新たな取組が求められている時はありません。
本の企画や内容そのものを除けば、生産と流通でのデジタルの利用が、新たな取組の核心だと思います。
当面、本は紙の姿のままでしょう。しかし、その一部はすでに、CD-ROMなどやオンデマンド印刷という方法をとっています。ネットワークで、デジタルのまま、「本」が販売されてもいます。流通情報は、あらゆる面でコストのかかるVANでなく、インターネットが活用されるようになってきています。
私たちはこうした状況をくぐり抜けていくために、版元ドットコムが武器になると思います。デジタルとネットワークに親しみ、習熟していくのです。
紙の「本」をデジタルでつくっておけば、増刷をオンデマンド印刷にすることは容易です。サイトで販売するにはデータを変換するだけです。
書店の店頭での販売実績はネットワークで公開され始めています。受注・請求・決済をネットワーク上ですませている業界は珍しくなくなりました。
デジタルとネットワークは、これからの出版業界の基本になると思います。ですから、版元ドットコムを利用して、武器を手に入れるのです。私たちは、この版元ドットコムに本のデータを掲載すれば、本が自動的に売れるようになるとは思っていません。日本のネットワークはまだ十分に成熟していません。しかし、情報の交換と通信が、ネットワークでおこなわれていくのは間違いありません。そのときを待っていては遅すぎるのです。今から準備すべきなのです。
私たちはこの版元ドットコムの会費を低コストにしました。入会金1万円、月額会費を2千円から5千円までに抑える見通しを持つことができたのです。
だからといって、すべての版元に参加して欲しいと考えてはいません。専門書の版元同士が横断組織で共同の営業活動をしているように、様々な版元グループが「内容検索データベース」をもち、独自のサービスを提供していって欲しいと思っているのです。
むしろ、そうした様々な版元グループのサイトを、いわば串刺しして本を探すといった、読者の活用の姿を思い浮かべるのです。そのために、様々なサイトと共同したり競争したいと思うのです。本の未来を、私たち版元自身の手で切り開いていくために。
版元ドットコム幹事会社一同・2000年2月1日
ちょうど5年前のものです。
どうだったですか?
(次週に続く)