本の販売員もまた楽しからずや
今年は爽やかな秋ですが、秋というと、去年参加した高円寺の「本とアートの産直市」を思い出します。小社は初めての出展でした。それまで見に行ったこともなかったので、どんなことをやっているのか、全く知りませんでした。2日間のうち、初日はどうしても他の用があり、会場に行けないので、参加は無理だと思っていましたが、それでも大丈夫ということで、参加してみたのです。
事務局からまず、本を詰めるダンボールが送られてきました。つまり、箱ショップでの参加です。前年の写真をお手本にし、ダンボールの蓋を開けてすぐお店になるように本を詰めました。小社の場合は、頂いたダンボールを半分以下の大きさに縮めました。最悪1冊も売れなくても、自分で引っ張って帰れるように、ほどほどの大きさにしたのです。
本の背が見えるように詰めましたが、小社は絵本が多いので、背といっても、7ミリから10ミリほどしかないのですから、ほとんど目立ちません。お客様が手に取って下さるでしょうか? 2日目に勇んでいったところ、なんと1冊も売れていませんでした。やっぱり全部そのまま引っ張って帰るのかと思い、ぞっとしました。
2日目、お客様がたくさんいらっしゃいました。本の好きな方ばかりです。もちろん親子連れもいました。箱ショップでも、販売員がいるといないでは大違いです。詳しく本の説明をすると、少しずつ売れていきました。ホールの真ん中でサイン会や煮干の解剖が始まると、箱ショップはあちらへこちらへと移動しなければなりませんでしたが、小さいお子さんには本が手に取りやすく、「これ、ほしい!」と自分で決めてくれたのは嬉しいことです。
原則定価販売ですが、安くしてあげるととても喜ばれます。売るほうも買うほうも、参加して良かった、ここに来て得をしたと思うようなやり方がいいのでしょう。シングルマザーの方、学生さんには大幅に値引きをしてあげました。「本のお祭りだから、1冊買った人に1冊プレゼントしてもいいんだよ」というアドバイスも頂いていたので、そうしたときもありました。絵本のポストカードも惜しみなく配りました。
箱ショップには欠点もあります。ショップの中に販売員が入れないのです! 身の置き所がなく、長い時間たいへんでした。熱心な読者とずっと話をしていたとき、私は中腰に疲れ果て、とうとう床に座り込んでしまいました。箱ショップの販売員は座布団を持参すべきです。もう一つ持参すべきものがあります。それは、おにぎりです。ひっきりなしにお客様がいらっしゃるので、お昼を食べに行く時間がなかったのです。その日は、占いの方に頂いたアンパンの差し入れで生き延びました。
(* スタイルノート 池田さま撮影)
結局、2日目だけで33冊売れました。残ったのは数冊だけだったので、箱を処分していただき、身軽に帰ることができました。帰りの電車の中で他社の方と反省会をし、高い本をそのまま売るより、多少汚れがあっても500円均一というような売り方をするのもいいかもしれない等と話していました。次回はもっといい方法を考えたいものです。こういうイベントは、何よりも読者の方と直接お話ができるのが楽しいですね。
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