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スポーツ文化の担い手をめざして

はじめまして。昨年秋から参加させていただいております、道和書院です。主に、スポーツや体育に関連する専門書や大学・短大用テキストを刊行しております。
…とは言っても、社長一人、編集者一人(私)の出版社ならぬ出版者。営業や広報担当者はもちろんのこと、WEB担当者もおりません。全て、二人で、文字通り自転車操業で細々と本作りを続けています。

さて今、スポーツ、というと、皆さんがまず思い浮かべるのは、なんといってもトリノオリンピックでの荒川静香選手の金メダル、あるいは、期待された割には振るわなかったスピードスケートやスノーボード競技、でしょうか。今年6月にドイツで開催されるサッカー・ワールドカップを思い浮かべる方もいらっしゃることでしょう。また、ご自身や、お子さんがお楽しみのスポーツシーンもあるかもしれませんね。

しかし一方で、たとえば、オリンピック。マスメディアを通じてさまざまな情報が日々飛び込んでくる中で、華やかな舞台で繰り広げられる勝者や敗者の「ドラマ」を、私たちは容易に眼の当たりにし、アスリートたちの活躍を通して元気と
感動を得ることが出来ます。ですが、オリンピックとはそもそもなんなのか? 
オリンピックを根本から支えている理念とは?といった根本的なところまで考えさせてくれるような情報は、残念ながらそう多くはないのではないかと思います。

「オリンピック憲章」には、次のような「オリンピズムの根本原則」が謳われています。

「オリンピズムの目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにある。その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある。」「スポーツを行なうことは人権の一つである。各個人はスポーツを行う機会を与えられなければならない。そのような機会は、友情、連帯そしてフェアプレーの精神に基づく相互理解が必須であるオリンピック精神に則り、そしていかなる種類の差別もなく、与えられるべきである。」(JOCサイト掲載・日本語版より

もう一つ、例を挙げてみます。昨年の話になりますが、2005年は、国連の「スポーツと体育の国際年」でした。その2年前の2003年に、国連総会で「スポーツと体育を教育全般、健康、開発そして平和に結びつけるための基盤とする」ことを目的として、世界中で様々な催しを展開しよう、という決議がなされたのですが、国内のマスメディアでも出版業界でも、あまり取り上げられることはなかったと、記憶しております。

私には、この国際年に寄せた、“スポーツは単なる楽しみや競い合いでなく…”という、アドルフ・オギ国連事務次長のメッセージが強烈に響きました。
「スポーツの真価は、相手を尊敬すること、ルールと審判の判定に従うことなどの原則の受入れを通じ、人間の尊厳や仲間意識、連帯感を促進する力にあります。私たちの役割は、子どもと若者にスポーツや体育への参加を促すこと、そして、日常生活でもスポーツマンシップの価値を思い出すことにあります。私たちがすべてこの役割を果たし、スポーツが単なる楽しみや競い合いではないことに気づけば、将来の世代によりよい世界を残すための一歩となるでしょう。」

このような、スポーツを行うことは人間に与えられた基本的な人権のひとつである、という考え方。スポーツは世界中の人々にとって非常に高い価値のあるものだという考え方が、私たちの国では、一般の方々に共有されていないのはないでしょうか。スポーツは私たちの生活に密着した文化である、しかし、その文化も、人間の生き方や社会の在り方、そこでのスポーツの存在価値といった、しっかりとした理念的、思想的な裏づけが多くの人によってなされなければ、スポーツは結局、私たちの生活には根付いていかないのではないでしょうか。それは、文化そのものの貧困をもたらすと思います。

事実、日本ではまだまだ、トップレベルの選手から地域のスポーツクラブでスポーツを楽しむ人々まで、スポーツを行うための態勢や制度が充分に整っているとは言えません。また、「勝利」に拘るあまりに「不祥事」を起こしてしまったり、それを「もみ消し」てしまったり、指導者やスポーツ選手自身のモラルが問われるような事件・事故も後を絶ちません。少なくとも、もっとスポーツの価値を考え、それを高めていこうとする姿勢が、スポーツを「する人」「見る人」「しない人」「見ない人」にかかわらず広まり、当たり前のこととして人々の身についていったならば、と日々痛感しています。

長くなりましたが、年間の刊行数も数えるほど僅かな小さな出版社(者)で仕事をしながら、少しでもこれまでに書いてきたような思いを、本作りを通じて情報として発信していくこと、編集者の立場から、「スポーツ文化の担い手」としての役目が少しでも果たせることをめざして、これからも頑張っていきたいと思っております。 これからもどうぞ、よろしくお願い致します。

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