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日本最大?のロマン

2023年4月、佐賀県・吉野ヶ里遺跡の未発掘だった「謎のエリア」にて弥生時代後期の「石棺墓」が発見された。
「邪馬台国論争に大きな動きか!?」と全国の古代史ファンもざわついたかと思うが、創刊40年を超えた古代史総合雑誌『季刊邪馬台国』を発刊する弊社にとっても、大いにそわそわさせられるニュースとなった。

「邪馬台国論争」——正確には「邪馬台国の所在地をめぐる論争」とは、
古代日本にて存在したとされる「邪馬台国」が一体どこにあったのかという論争である。
恐らく「邪馬台国畿内説」「邪馬台国九州説」の2説が有名かと思うが、その他にも数十カ所の比定地が存在し、その考察については在野も含め研究家の数ほどの論説があるといっても過言ではない。(しかしながら現在、世論としては近畿説優勢の流れにある)

弊社が九州・福岡にある、ということで、古代史に関する出版相談を受ける際には「九州説なんでしょ?」と尋ねられることが多々ある。
大変恐縮ながら九州の出版社だからといって、九州説一辺倒、弊誌は九州説しか載せない!なんてことはない。近年は世論の流れもあり、近畿説優勢の偏向報道の傾向にあるが、弊誌は両論併記を基本とした誌面づくりがモットーだ。
弊社が『季刊邪馬台国』を発行する理由は、有力な候補地の一つである九州(現地)から発信することに意義があるからである。例え、この地が「邪馬台国」でなかったとしても、その研究の軌跡や論説をまとめ遺していくことは、決して意味のないことではない。
(とはいえ、そりゃ九州だったらいいなぁとは思う。説を推すか、ほんのり期待を抱くかはまた別の話)

「完結しない物語ほど魅力的な物語はない」
邪馬台国論争を思う度、私の頭の中にはこの言葉が浮かぶ。
終わらないクライマックス。
結論が見えそうで見えない、完結しない論争(ものがたり)。
そして、この論争に魅せられる人々が後を絶たない理由は、万人にこの論争に参加できる権利と機会が与えられているからだろう。

しかし、そんな終わらない論争、もはや終わる終わる詐欺といわれても仕方ない論争は誰もが途中参戦できる利点もありながら、手を出そうにもどこからかじり始めたらいいのかわからない、困ったところもあるもので。
かじりやすくしてみようかとできた一冊がこちら。
よもやま邪馬台国 邪馬台国からはじめる教養としての古代史入門

これからこの論争に一枚かみたいという方には是非お勧めしたい。

『季刊邪馬台国』創刊から40年以上、創業50年を超え、創刊当時を知る人も少なくなりつつある。
私自身、もちろん古代史は好きだが、まだまだ論争を熱く語り合うには知識不足で、本づくりの中で教えられる日々である。
「邪馬台国はここだ!」と考察・推理する楽しさもたまらないものだと思うが、たくさんの「かもしれない」を知るのも、悪くないと思う。

2023年6月、佐賀県・吉野ヶ里遺跡にて発見された「石棺墓」内部調査の結果、期待された副葬品や人骨の出土はないものの、石棺内に塗られた赤色顔料や石棺に付けられた×の線刻などから「ランクは不明だが邪馬台国時代の有力者の墓」かもしれないとの結論に落ち着いたらしい。
なぜ何も入っていないのか、塗られた赤色顔料の意味は、石棺につけられた×の意味は…。
どうやら、終わらない論争(物語)に、新しい謎(伏線?)が増えたようである。
9月には、未調査エリアの残る4割部分の調査が再開となるらしい。

かれこれ300年ほど続いている物語だ。
気長に、また新たな「かもしれない」を待つことにする。

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