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マリー・キュリーの挑戦
科学・ジェンダー・戦争
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2010年4月
- 書店発売日
- 2010年4月5日
- 登録日
- 2010年3月5日
- 最終更新日
- 2025年7月14日
書評掲載情報
| 2010-05-09 | 東京新聞/中日新聞 |
| 2010-05-02 | 朝日新聞 |
| 2010-04-04 | 毎日新聞 |
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紹介
自然科学を女子の手に!
〈偉大な科学者にして良妻賢母〉伝説を打ち破り、巧みな筆で描き出す真実のキュリー夫人とその時代。結婚と死別、家族と戦争、アカデミーとの闘い、不倫事件、放射能の栄光と悲惨――、彼女が直面したのはすべて現代の問題だ。
目次
序―マリー・キュリーが投げかける問い―
1 少女の怒り
四つの要素/喪われた祖国/少女マリアの夢/「女らしさ」を超えて/答えの出ないジレンマ
2 三つの恋の物語
悲恋に耐えて/故国を捨てた恋/尊敬と愛情/ピエールの突然の死 /予期せぬ不倫/年下の男/「ランジュヴァン事件」と二度目のノーベル賞/数奇な運命/たたずむ男の想い
3 ノーベル賞を有名にしたもの
ノーベルの遺言/格好の受賞者/年を取らないともらえない?/国と国との競争/科学者たちの縄張り争い/悪用された成果
4 墓はなぜ移されたか
パンテオンに眠る最初の女性/墓を移す/フランスの自負/原子力政策とのつながり
5 誤解された夫婦の役割
「理性的な男/感情的な女」というステレオタイプ /「頭脳はピエール、肉体労働はマリー」ではない/ウラン放射線と出会う/徹底した定量実験/新元素を取り出す/賞賛の裏側/原子の意味を変える
6 二つの祖国のために
マリー、戦場を駆ける/戦争と女の関係/悲願のポーランド独立/マリーの戦争観
7 ピエール・キュリーの「個性」
脇道を行く/ピエールの結婚観/自分たちに合った結婚生活/いやいやながらの選挙運動/「負け犬」の崇高な野心
8 科学アカデミーに拒まれた母と娘
女性会員はいない/もう一人の候補者/政治と宗教のねじれた関係/怒りと抵抗/娘イレーヌの闘い
9 変貌する聖女
書き変えられる伝記/見かけだけの平等/第二波フェミニズム運動/新しい伝記への批判
10 マルグリット・ボレルとハーサ・エアトンとの友情
シスターフッドの価値/女が男の所有物だった時代/キュリー母娘を助ける
11 放射能への歪んだ愛
見過ごされた放射線の害/夫妻の症状/広がる犠牲者/甘く見積もられた危険性/「薬は毒」
12 アインシュタインの妻
恋に落ちた留学生/アインシュタインの家族/ミレヴァの母性/「そこそこ」の美人という条件/潰されたキャリア/離婚、そして死まで
13 リーゼ・マイトナーの奪われた栄光
忘れられた「原爆の母」/裕福なユダヤ人の娘/逆境の中で/「淑女」という鎖/ついにポストを得る プロトアクチニウムの発見/孤独な亡命者/核分裂の発見と証明/ノーベル賞を獲りそこなう/名誉は回復されたが
14 放射線研究に斃れた日本人留学生
ラジウム研究所への派遣/命を縮めた研究/誇るべき日々/近代日本が見た夢/女の一生/女性の生き方の変化/放射能を帯びたパスポート
15 「偉大な母」の娘たち
正反対の姉妹/父親の死と祖父の影響/幸せでなかった少女時代/「粗野な」イレーヌ、「エレガントな」エーヴ/それぞれのノーベル賞
16 キュリー帝国の美貌のプリンス
映画スターに比せられた科学者/キュリー夫人の驚愕/二つの姓を持つ/フレデリックの才能と努力/政治的な闘い
17 湯浅年子の不屈の生涯
日本初の物理学専攻女子学生/「ジョリオ先生」の弟子/戦火を縫って/日本では研究ができない/結婚の条件/大いなるロール・モデル
18 キュリー夫人とモードの歴史
青いウェディングドレス/女性ファッションの激動期/簡素な服装とスポーツの奨励
19 「完璧な妻、母、科学者」という罠
なぜアメリカで歓迎されたのか/ジェンダー・バイアス/「女中」の存在/同業者カップルの困難/何を学ぶべきか
前書きなど
序─マリー・キュリーが投げかける問い─
日本の中学生や高校生に「あなたの知っている女性科学者を挙げなさい」と言うと、一位は断然キュリー夫人になります。次にかなり票数が下ってレイチェル・カーソンなどが来るようです。きっと世界中の多くの国々で同じ結果が出ると思います。アインシュタインほどではありませんが、キュリー夫人はその科学的業績を超えた名声を持っています。伝記だけでなく、有名な映画やテレビドラマなどにもなりました。子供向けの偉人伝シリーズでも、キュリー夫人の入っていないものを探すのは難しいでしょう。
では、数ある女性科学者の中で、どうしてこんなにマリー・キュリー(一八六七─一九三四)だけが有名なのでしょう。
ロシア占領下のポーランドに生まれた少女がパリに留学し、そこで成功を収めたという出世物語の部分でしょうか。それとも、夫との共同研究がノーベル賞を受賞したという、男女共同参画の先がけのような側面でしょうか。あるいは、その夫を事故で失いながらも、二人の娘と共に失意の底から立ち上がり、二度目のノーベル賞をはじめとする数々の栄誉に輝いたという、刻苦の物語の部分でしょうか。
十九世紀から二十世紀を生きた一人の女性、マリー・スクォドフスカ・キュリーがこんなにも世界中で注目され続けてきたのには、きっと彼女の持つさまざまな要素が影響しているに違いありません。本書はキュリー夫人とその時代に焦点をあて、いろいろな角度から、この魅力的な女性が現代の私たちに投げかける問題を考えていこうという試みです。
この本でみなさんは、彼女の発見した放射性の新元素をはじめとする科学的な問題だけではなく、ポーランドとフランスをとりまく当時の政治状況、あるいは当時から現在に至るジェンダーの問題、日本とキュリー夫人との深い関わりなど、今まで知らなかったこの女性をめぐる新しい側面を発見することになると思います。
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。
