発行:草風館
この版元の本一覧
A5判 336ページ 上製
定価:5,825円+税 総額を計算する
ISBN978-4-88323-082-2(4-88323-082-1) C3325
在庫あり
奥付の初版発行年月:1995年06月
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紹介
調査重ね厳密な解釈 平易な文章で興味深く
「私の弟子であり師匠である」(故知里真志保氏)、「空前絶後のアイヌ語地名研究家」(服部四郎東大名誉教授)—同学の人々をしてかくいわしめた在野の研究者、山田秀三氏の「アイヌ後地名の研究—山田秀三著作集」全4巻が完結した(草風館)。小冊子に発表されてきた同氏の文章や論文がまとめて公刊された意義は大きい。
よく調べると北海道では溝のような小川にまでびっしりアイヌ語地名がついている。漁業や狩猟で暮してきた民族らしく、そのほとんどが地形からつけた地名である。
語尾に「ペッ」(一般的に大きな川の意)、「ない」(一般的に小さな川、沢の意)、「ウッシ」(××が群在する所の意)がつく地名が、アイヌ語地名の半分以上を占めている。青森、岩手、秋田の東北3県の主として山間部にも無数のアイヌ語地名が残っている。
津軽海峡をはさんだ北海道側と青森側には、同じアイヌ語地名の土地がたくさんある。これは北海道と東北の北半部が地名上は切れ目のないアイヌ語地名地帯であり、東北に住んでいた「エゾ」がアイヌ語族だったことを示している。
以上が山田秀三氏の研究の要約である。この著作集の第4巻には7000余のアイヌ語地名の索引がついているが、こうした研究の結論は氏の丹念な現地調査と独学で習得したアイヌ語による厳密な地名解釈に裏付けられたものである。
アイヌ語地名研究者としての山田氏の経歴は変わっている。戦前は軍需省化学局長まで務めた一高、東大卒のエリート官僚だった。昭和16年、仙台鉱山監督局長だったとき、東北各地を歩いて日本語では意味がわからない風変わりな地名があることに興味を持った。
昭和24年、北海道登別に設立された北海道曹達会社の社長に就任、こんどは道内のアイヌ語地名の調査を始めた。この時期に金田一京助、その弟子のアイヌ人言語学者知里真志保両博士の知遇を得た。初めて金田一氏を訪れたとき、東北のアイヌ語地名に関する山田説を披露すると、博士の目がギラギラ光り出したという。
(朝日新聞1983.6.20読書欄) ↓「前書きなど」に続く
目次
第一部 アイヌ語地名のために
北海道のアイヌ地名十二話
アイヌ語種族考
アイヌ語族の居住範囲
アイヌ語の地名を大切にしたい
アイヌ地名・アイヌ語の古さ
狩猟のアイヌ地名を尋ねて
黒曜石のアイヌ地名を尋ねて
第二部 アイヌ語地名分布の研究
津軽海峡のアイヌ語時代
北海道のナイとべツ
東北地方のナイとペツの比
アイヌ語地名の三つの東西
メナという地名とその分布
前書きなど
↑「内容紹介」から続く(その2)
山田氏はアイヌ語地名の群在の南限を、秋田、山形の県境と仙台北部を結ぶ線としている。奈良時代初期の和人政権と「エゾ」勢力圏との境界に一致するという。富士山のアイヌ語起源説や語路合わせ的な解釈はきびしく排している。
83歳の現在も東京都大c区の洗足池に近い自宅と北海道を頻繁に往来して研究と調査に没頭している。
「松浦武四郎や永田方正が大きな遺産を残してくれた。金田一先生や知里君がそれを机の上の研究で深めた。僕は現地調査をやったんだ」
「なにも天下に自慢する気はないのよね。要するに自分の道楽なんだから。でも骨とう道楽だってニセ物つかまされたらいやでしょ。僕も自分の道楽でニセはいやだから、調査と解釈にはうるさいの」
「本来の目的は東北の古代史でね。アイヌ語地名の研究は、それに到達する手段としてやったんだけど、もう残り時間が少なくなっちゃって」
著作集の中での珠玉は、第1巻に収められている「アイヌ語種族考」(昭和47年に発表された論文)といってよいだろう。アイヌ語地名との出合い、金田一、知里両博士との交友を語りながら、簡潔に研究の成果をまとめている。
アイヌ語の研究を通してアイヌ民族のこころを語った書物として、知里真志保博士の「アイヌ語入門」(昭和31年刊)と比肩しうる文章ではあるまいか。かつて大江健三郎氏は「アイヌ語入門」を「精神の力をはらんだ闘争的な本」と評したが、「アイヌ語種族考」からは研究者の無垢のこころが伝わってくる。
山田氏の著作の特色は、平易な文章にある。アイヌ語地名にせまっていく旅行記的、かつ推理小説的面白さも手伝って、部外者にも興味深く読める。北海道や東北の北半部が「アイヌモシリ」(アイヌの国土)であったことを、読者は素直にさとらされるだろう。
著者プロフィール
山田 秀三(ヤマダ ヒデゾウ)
(略歴)本籍 福岡県
明治32年6月30日 東京市赤坂区榎坂町に誕生
大正6年3月 東京府立第一中学校卒業
10年3月 第一高等学校卒業
13年3月 東京帝国大学法学部政治科卒業
13年5月 農商務省工務局属
14年4月 商工省工務局
14年11月 高等文官試験行政科合格
昭和2年5月 特許局審査官
2年6月 商工省工務局
3年6月 内閣資源局調査課
4年4月 同 局 総務部
8年6月 同 局 調査課長
12年10月 企画院調査部
14年4月 同 院 第三部
15年4月 同 院 調査官第四部(兼)第一部
15年11月(兼)総力戦研究所員
16年5月 同 院 第二部第一課長
16年6月 仙台鉱山監督局長
18年3月 内閣官房調査官(兼)内閣東北局長
18年5〜6月 鈴木行政査察使随員
18年7〜10月 藤原行政査察使随員
18年11月 内閣官房参事官
19年4月 山下行政査察使随員
19年11月 軍需省化学局長
20年8月 商工省整理部長
20年10月 退官
24年4月 北嶺道曹達株式会社取締役社長
36年3月 北海道文化財保護協会創立に参加、理事
44年11月 北海道曹達株式会社会長
54年3月 北海道曹達株式会社相
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