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ワセダアジアレビュー No.10
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2011年8月
- 書店発売日
- 2011年9月10日
- 登録日
- 2011年9月8日
- 最終更新日
- 2011年9月12日
紹介
研究、時事問題、NGO、エッセイ…早稲田大学のアジア研究者を中心に、多彩な書き手が集まって、アジアを論じます。特集を軸に、軽く読めて、深い内容をモットーに、年2回のペースで発行していきます。今月の特集は「アジアにおける産業の勃興」です。
目次
巻頭口絵写真 第2タイ-ラオス友好橋 川口正志
機構長挨拶 現代アジアの光と影 小口彦太
フィールドから──Photo Essay 国境地帯の「におい」をもとめて 峯田史郎
巻頭論文 世紀の実験──「中国モデル」をどう考えるか? 毛利和子
【特集】アジアにおける産業の勃興──その光と影
高成長を持続する東アジア経済の現状と将来 浦田秀次郎
依存関係を深めながら展開するアジア農業─現状と課題 堀口健治・石田信隆
中国の大衆資本主義 丸川知雄
韓国経済と企業の光と陰──総合商社員が体験した韓国の日常経済 百瀬 格
パシコムおじさんの見たスハルト開発独裁 村井吉敬
東日本大震災と日本自動車部品産業 小林英夫
マニラ新聞から見た日本の報道 水谷竹秀
[ワセダアジアレビュー10号に寄せて]アジアの大学を歩いて 奥島孝康
IAS研究プロジェクト報告
人モノの流れと経済統合──ソーシャル・ロジスティクス研究所の開設とその活動報告 戸崎 肇
次世代研究者の論考
地域密着型軍隊としての中国人民解放軍──中国における地方の軍事機構、軍分区の役割 弓野正宏
第55回アジアセミナー報告
死刑台から教壇へ──私が体験した韓国現代史 康 宗憲
第59回アジアセミナー報告
韓国人のナショナル・アイデンティティと北朝鮮・南北統一への認識変化 李 來榮
OAS連続セミナー講義ノート
セマウル運動を振り返る 伊藤亜人
My Field :ワセダからアジアへ
フィリピンとプアーツアリズム 川瀬真由
アジアを食べる@早稲田界隈 シャンの家庭料理──ふるさとの味と広がり 砂井紫里
書籍紹介 小林英夫
機構長コラム 中国ビジネスは大変ですよ 小口彦太
What’s going on? 早稲田大学アジア研究機構からのお知らせ
アジアのNGO 活動現場から
アジアのダルフール──ビルマで続く内戦 秋元由紀
前書きなど
【編集長あいさつ】
現代アジアの光と影 早稲田大学アジア研究機構長 小口彦太
産業革命以来長きにわたった欧米優位の経済の時代が終焉を迎えようとしている。ヘーゲルは、世界史は東から西に進むと説き、東洋を出発の始めとし、ヨーロッパを世界史の終結点とした。マルクスは、西欧列強との出会いによって、ミイラが外気に触れてボロボロに崩れるように中国は崩れていくだろうと予言した。しかし、中国は蘇り、ヨーロッパはアジアの後塵を拝することとなった。
但し、このことはバラ色のアジアを意味しない。同じアジアでもいまだ経済的にテイクオフできない国もあれば、GDPにおいて世界トップクラスを占める国もある。私の専攻する中国を例にとろう。周知のように、中国のGDPは世界第二位、近い将来アメリカを抜いて一位になるだろう。一位を占めることは、康煕、雍正、乾隆の世を想起すれば別に珍しいことではない。こうした事実は一面で中国人の愛国心をくすぐるだろう。しかし、その中国の現実を見てみよう。これまた周知のように、沿海部と内陸部、都市と農村との地域格差、そして沿海部の都市住民の間でも貧富の格差は拡大している。格差は人々の不満を増幅させる。民主主義国であれば、その不満は選挙によってとりあえず解消される。権力の不正な行使であれば、裁判所がチェックしてくれる。しかし、中国は肝心のこの二つがまったく機能していない。そうであるとすると、社会的矛盾はどのような形で解消していくのか。王安石のごとき牧民官に期待するしかないのか。
民主主義の成熟度ということでいえば、日本だって偉そうなことはいえない(と私は思っている)。私には今でも鮮明に記憶していることがある。私は一九八一年にハーバードロースクールのパウンドビルの一室で勉強していたが、そこの東アジア法研究プログラムの秘書のエゼルおばさんが廊下にある手紙を張り出していた。何だろうと思って近づいて見てみたら、それは当時の大統領レーガンからの返事の手紙であった。エゼルさんは名うてのディスアーマメントの運動家で、これまた名うての軍拡論者レーガンの政策に反対の手紙を出したのである。それに対する返事が先の大統領直々の手紙とあいなったわけである。私は、正直参ったと思った。なぜ参ったのか。それは政治というものについての為政者と市民の距離の近さという感覚についてであった。あー、これが市民社会かと実感したものである。日本は形だけは民主主義国かもしれないが市民社会ではなさそうである。そうした社会の民主主義の成熟度如何。国会議員であれ、行政官であれ、司法官であれ、いったん公権力を行使する立場に立つと、とたんに市民感覚が雲散霧消し、何事につけ権威主義的になってしまう日本社会。市民との固い壁ができてしまう日本社会。だけれども、この程度の民主主義ですら、アジアの多くの国々にはまだ根づいてはいない。
二一世紀は経済的に見れば、アジアが世界経済を牽引していくであろう。それは、いわばアジアの輝く「光」の部分である。しかし、その光には「影」の部分がそこかしこに存在している。そのアジアの光と影を総体的に鳥瞰しておくことが必要である。これが本号で特集「アジアにおける産業の勃興――その光と影」を組んだ所以である。
上記内容は本書刊行時のものです。
