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絶望のなかのほほえみ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2005年4月
- 書店発売日
- 2005年4月30日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
バンコクを拠点にアジアを撮り続ける若手ナンバーワンのフォトジャーナリストが、カンボジアのエイズ病棟を記録したフォトドキュメンタリー。バッタンバン・リファラル病院。今日もエイズ患者が静かに息を引き取り、幼い子どもが残される。「死ぬ前に私の姿を撮ってほしい」という。そこでは死は日常でした。しかし彼らは誰もうらまず、ほほえさえ浮かべて死の病に立ち向かう。3年間にわたって彼らを撮りつづけた衝撃と感動の写真集です。
目次
まえがき
エイズ「後天性免疫不全症候群」
1 バッタンバン州リファラル病院
2 モム
3 ソフィア
4 リム
5 イン
6 ラッタナー
7 サオ
8 サビンとリン
9 変わりゆく首都
10 売られる子供たち
11 リナ
12 ミセス・コンドーム
13 カンハ
14 チップ
15 ヒム
16 スセップ
17 セリ
18 ホーン
19 キーロック
20 ティー
あとがき
前書きなど
初めてティーと出会ったのは2001年3月だった。
バッタンバン州リファラル病院は市内の川沿いにある。フランス植民地時代に建てられた病院の天井はやけに高く、古くて巨大な扇風機が、頭上でゆっくりと回っていた。時折激しいスコールが降り、病室の床は雨漏りのため、いつも水浸しになっていた。
感染病棟には無造作にベッドが置かれ、その他の設備は何もなかった。15人ほどの患者たちがいたが、動くことのできる者は中庭に出ているので、病棟内は怖いほど静まり返っていた。時折赤ん坊の泣き声が聞こえた。体が弱って動けない寝たきりの人々が、痛みを我慢しながら、じっと窓の外の景色を眺めていた。
一番隅のベッドに、女性がひとりいて、干し終わった洗濯物を1枚ずつ丁寧にたたんでいた。ほほえみながら「私はティーよ」と言った。まるで枯れ木のように痩せ細った彼女は、とても29歳に見えない。ほとんどの患者がそうであるように、ティーもたった1人でエイズと闘っていた。
夫は昨年エイズで亡くなったという。 幼い子供が1人いて、今は祖父に預けているとも言った。
ティーは話をしながら、時々苦しそうに咳き込んだ。エイズは免疫機能を低下させる。感染病棟にいるエイズ患者の8割が結核を患っていて、症状悪化を急速に進めて命を落とす場合が最も多かった。
以来僕は、感染病棟を訪れるたびにティーを訪ねた。果物を食べながら語り合い、時には大部屋の角にハンモックを吊って一夜を明かしながら、僕は彼女にカメラを向けた。エイズが体を蝕み、ひどい痛みを伴う時でも、ティーは笑顔を絶やさなかった。そして日に日に、彼女の姿は変わっていった。少しずつ髪が抜け落ち、全身の皮膚が爛れはじめた頃、彼女はカンボジア人女性にとって命の次に大切な黒髪をばっさりと切った。「体力の限界がきたの。髪を洗う力もなくなったわ」
2002年5月のよく晴れた日、ティーから、病院の中庭で写真を撮ってと頼まれた。同じ病魔と闘っている友人のテットという女性を誘い、彼女は中庭に出た。
「昨日は隣で寝ていた女性が死んだわ。いつ死ぬかもしれないから、その前に写真を撮っておくの」ティーはか細い声で言った。彼女はきれいに化粧をして、一番のお気に入りの...
版元から一言
一枚の写真から深い感動をもらえます。
上記内容は本書刊行時のものです。
