版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊
音盤を通してみる声の近代 劉 麟玉(編著) - スタイルノート
.
【利用可】

書店員向け情報 HELP

書店注文情報

注文電話番号:
注文FAX番号:
注文メール:

在庫ステータス

在庫あり

取引情報

取引取次:
ト・日     書店
直接取引:なし
返品の考え方: フリー入帳(または「薄井了解済み」でご返品ください)

出版社への相談

店頭での販促・拡材・イベントのご相談がありましたらお気軽にご連絡ください。

音盤を通してみる声の近代 (オンバンヲトオシテミルコエノキンダイ) 日本、上海、朝鮮、台湾 (ニホンシャンハイチョウセンタイワン)

歴史・地理
このエントリーをはてなブックマークに追加
A5判
272ページ
並製
定価 3,000円+税
ISBN
978-4-7998-0208-3   COPY
ISBN 13
9784799802083   COPY
ISBN 10h
4-7998-0208-9   COPY
ISBN 10
4799802089   COPY
出版者記号
7998   COPY
Cコード
C1073  
1:教養 0:単行本 73:音楽・舞踊
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年3月25日
書店発売日
登録日
2024年2月28日
最終更新日
2024年3月29日
このエントリーをはてなブックマークに追加

書評掲載情報

2024-04-20 intoxicate    2024年4月20日号
MORE
LESS

紹介

19世紀に誕生した蓄音機は、20世紀に入りアジアでも急速に普及した。西洋のクラシック音楽の輸入盤ばかりでなく、日本、中国、台湾、朝鮮でもさまざまな録音が行われ、多くの音盤(SPレコード)が発売された。本書では、東アジア各地域におけるレコード史が、日本と関わりを持ちながら展開してきた点に言及し、レコードが東アジアに普及した背景や、複雑な構造の中で日本が音楽の伝承に与えた影響などが論じられている。当時、欧米の外資系を含む日本のレコード会社は、東アジア各地に積極的に進出し、録音、販売を行った。こうした東アジアのレコード産業の歴史は、グローバリゼーションのひとつの例と見ることができる。さらに、台湾と朝鮮半島のレコード産業の発展は中国とは異なり、日本の植民地支配の影響も大きかった。日本のレコード産業と植民地の歴史には、グローバリゼーションや資本主義、植民地主義が複雑に交錯している。また本書が音盤(レコード)を扱いながらも、書名に「音楽」ではなく「声」を用いているのは、当時のこれらのレコードの内容が音楽にとどまらず、歌はもちろんのこと、演説や映画説明、戯劇など、多様な声の表現にわたっていたものだからだ。東アジアの歴史を、音盤を通して様々な角度から探求した一冊。

目次

総説 蓄えられた声を百年後に聴く──私たちはなぜこの百年のレコード史を追っているのか(劉 麟玉)

第1部 東アジアのレコード産業――声の近代
 第1章 日本の円筒録音時代――声の再生、模倣、保存(細川 周平)
 第2章 日本統治時代における台湾レコード産業と「台湾盤」の市場メカニズム(黃 裕元/訳:岡野〔葉〕翔太)
 第3章 台湾テイストを作り出す――日本蓄音器商会の台湾レコード制作の戦略を探る(王 櫻芬/訳:長嶺 亮子)
 第4章 「新譜発売決定通知書」を通してみる台湾コロムビアレコード会社と日本蓄音器商会の間の「対話」──戦争期のレコード発売状況の調査を兼ねて(一九三〇~一九四〇年代)(劉 麟玉)
 第5章 写音的近代と植民地朝鮮、一八九六~一九四五(山内 文登)

第2部 東アジアのレコード音楽の諸相――声の平行と交錯
 第6章 草津節――お座敷からレコードへ、そして外地へ(福岡 正太)
 第7章 戦前・戦中台湾のコロムビアレコードの音から――歌仔戯(ゴアヒ)と新興劇の音楽の繋がりをさぐる(長嶺 亮子)
 第8章 清朝末期から中華民国期の崑曲SPレコード──吹込者と録音内容にたどる近代伝統劇界の変遷(尾高 暁子)
 第9章 義太夫節・パンソリ・蘇州弾詞の歴史的音源に聴く演奏様式の変容(垣内 幸夫)

前書きなど

一八九七年の東京日日新聞に「人の語言を蓄へて、千万里の外、又は十百年の後にても発することを得る機械」というフォノグラフについての記事がある。また、一九〇〇年七月一九日の『台湾日日新報』には「音声を万世に伝ふ」という記事もある。さらには、当時のオーストリア=ハンガリー帝国において、ウィーン政府は「蓄音機の至便至快なるは云ふまでもなきことなるが今や之を利用し十九世紀の音声を悉く網羅し以て後世子孫への一大遺物となさん」という膨大な計画を立ち上げた。その理由は「一九世紀の音声をありの侭に後世子孫に伝へ彼等をして其祖先の音響を聞かしめ宛然祖先に接するが如き」ということであった。当時の有名な人物の声を記録することもその計画に含まれていた。私たちは今、まさにその「万世」の二百年目に入った時点に立ち、蓄音機の歴史を振り返りながら、当時のレコードの音声や音楽が何を語っているのか聞こうとしている。(後略)

版元から一言

蓄音機とその音盤(SPレコード)は20世紀に入る頃から欧米のみならずアジアでも急速に普及しました。当初は輸入された西洋のクラシック音楽が中心だったようですが、ほどなく、日本、中国、台湾、朝鮮でもさまざまな録音が行われ、音盤が発売されました。当時、日本の殖民地となっていくこれらの地域では、日本のレコード会社の進出も盛んで、各地で録音、販売が行われていたそうです。こうした東アジアのレコード産業の歴史は、グローバリゼーションのひとつの例と見ることができるでしょう。一方で、台湾と朝鮮半島のレコード産業の発展は中国とは異なり、日本の植民地支配の影響も大きかったといわれています。政治環境の変化が商品の販売に影響を与えるなど、複雑な状況を生み出したのです。日本のレコード産業と植民地の歴史は、グローバリゼーションや資本主義、植民地主義が交錯する複雑なものです。本書では、東アジアの各地域のレコード史が互いに無関係ではなく、日本と関わりを持ちながら展開してきた点に言及し、論じられています。レコードが東アジアに普及した背景や、複雑な構造の中で日本が音楽の伝承に与えた影響などについても本書では言及されています。また音盤(レコード)を扱いながらも、書名に「音楽」ではなく「声」を用いているのは、当時のこれらのレコードの内容が音楽だけというわけではなく、歌はもちろんのこと、演説や映画説明、戯劇など、声に関する多岐にわたったものだからです。東アジアの歴史を、音盤を通して様々な角度から探求した一冊です。

著者プロフィール

劉 麟玉  (リュウ リンギョク)  (編著

・奈良教育大学音楽教育講座教授
・学位:人文科学博士(お茶の水女子大学)
・専門:音楽学、音楽教育学
・研究テーマ:植民地台湾における音楽教育史・音楽文化史、作曲家江文也研究
・主要著作:『植民地下の台湾における学校唱歌教育の成立と展開』(二〇〇五、雄山閣)、The Art Song in East Asia and Australia,1900 to 1950. (共著、二〇二三、Routledge)、『縱橫西東 ─江文也音樂文集』(共編、二〇二三、時報出版)

福岡 正太  (フクオカ ショウタ)  (編著

・人間文化研究機構国立民族学博物館教授
・学位:芸術学修士(東京藝術大学)
・専門:民族音楽学
・研究テーマ:西ジャワ・スンダ人の伝統音楽とメディア
・主要著作:『現代東南アジアにおけるラーマーヤナ演劇―インドネシア・カンボジア・シンガポール・タイ』(共著、二〇二二、めこん)、『東南アジアのポピュラーカルチャー―アイデンティティ・国家・グローバル化』(共編著、二〇一八、スタイルノート)など。

細川 周平  (ホソカワ シュウヘイ)  (

・京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター所長
・学位:人文博士(東京藝術大学)
・専門:近代日本音楽史、日系ブラジル移民文化
・研究テーマ:明治~昭和戦前の音楽史
・主要著作:『遠きにありてつくるもの―日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』(二〇〇八、みすず書房)『近代日本の音楽百年 全四巻』(二〇二〇、岩波書店)

⿈ 裕元  (ホァン ユイユェン)  (

・国立台湾歷史博物館研究組長・副研究員
・学位:歴史学博士(国立台湾大学)
・専門:台湾における流行歌の歷史、社会文化
・研究テーマ:流行歌のリカバーの問題について、レコード産業、音楽家許石、文夏についての研究
・主要著作:『流風餘韻 ─流行歌曲開臺史』(二〇一四、國立臺灣歷史博物館)、『百年追想曲 ─歌謠大王許石與他的年代』(二〇一九、蔚藍文化)、『流行歌曲年代記』(二〇二三、晨星出版社)

王 櫻芬  (ワン インフェン)  (

・国立台湾大学音楽学研究所特聘教授
・学位:民族音楽学博士(米国・ピッツバーグ大学)
・専門:民族音楽学、歷史民族音楽学
・研究テーマ:南管、台湾音楽史
・主要著作:『聽見殖民地 ─黑澤隆朝與戦時臺灣音樂調查(一九四三)』(二〇〇八、國立臺灣大學圖書館)

山内 文登  (ヤマウチ フミタカ)  (

・国立台湾大学音楽学研究所教授
・学位:文化人類学博士(韓国・韓国学中央研究院)
・専門:東アジア近代音楽史、音響メディア論、帝国・植民地研究
・研究テーマ:植民地近代と朝鮮・台湾の聴覚文化
・主要著作:Asian Sound Cultures: Voice, Noise, Sound, Technology.(共著、二〇二二、Routledge)、『音と耳から考える ─歴史・身体・テクノロジー』(共著、二〇二一、アルテスパブリッシング)、Decentering Musical Modernity: Perspectives on East Asian and European Music History. (共著、二〇一九、Transcript-Verlag)

長嶺 亮子  (ナガミネ リョウコ)  (

・沖縄県立芸術大学芸術文化研究所共同研究員
・学位:芸術学博士(沖縄県立芸術大学)
・専門:民族音楽学
・研究テーマ:戯曲音楽、漢族の音と社会、日本統治期台湾のメディアと芸能
・主要著作:「濱文庫所蔵レコード目録」『九州大学附属図書館研究開発室年報』二〇一九/二〇二〇(共著、二〇二〇、九州大学附属図書館、一-二六頁)

尾高 暁子  (オダカ アキコ)  (

・東京藝術大学音楽学部非常勤講師
・学位:音楽学修士(東京藝術大学)
・専門:中国音楽
・研究テーマ:近現代における中国人の音楽音楽活動の変容や、日本・中国間の音楽交流を歴史的背景から考察する。
・主要著作:「音楽学校の中国人留学生 ─東京音楽学校を中心として」神奈川大学人文学研究叢書三五 神奈川大学人文学研究所編・大里浩秋・孫安石編著『近現代中国人留学生の諸相 ─ 「管理」と「交流」を中心に』(二〇一五、お茶の水書房)四一一-四五七頁。

垣内 幸夫  (カキウチ ユキオ)  (

・京都教育大学名誉教授
・学位:芸術学修士(東京藝術大学)
・専門:音楽学・音楽教育
・研究テーマ:義太夫節の音楽学的研究・東アジアの語り物音楽研究
・主要著作:『義太夫節の様式展開』(共著)(一九八六、アカデミア・ミュージック)『今日の文楽』(共著)岩波講座『歌舞伎・文楽』第一〇巻(一九九七、岩波書店)「義太夫節の音楽学的研究」『國文學二〇〇八年一〇月臨時増刊号』(二〇〇八、学燈社)

岡野 〔葉〕 翔太  (オカノ ヨウ ショウタ)  (

・大阪大学レーザー科学研究所特任研究員/大阪大学大学院人文学研究科招聘研究員
・学位:人間科学博士(大阪大学)
・専門:華僑華人研究、現代台湾地域研究、中国近現代史
・研究テーマ:日本帝国崩壊後の在日台湾人の歴史経験
・主要著作:『二重読みされる中華民国 ─戦後日本を生きる華僑・台僑たちの「故郷」』(二〇二三、大阪大学出版会)

上記内容は本書刊行時のものです。