書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
地域から国民国家を問い直す
スコットランド、カタルーニャ、ウイグル、琉球・沖縄などを事例として
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年10月10日
- 書店発売日
- 2019年10月10日
- 登録日
- 2019年10月2日
- 最終更新日
- 2019年10月23日
書評掲載情報
2019-12-14 | 日本経済新聞 朝刊 |
MORE | |
LESS |
紹介
一つの国家に一つのネイション(国民=民族)と一つのアイデンティティしか認めない「国民国家」と対峙する少数派は吸収・統合されるしかないのか? それとも独立か? 複数のネイションが共存する国家は可能なのか? 欧州、カナダ、中国、日本を例に考察。
目次
はじめに
第1章 総論――「国民国家」の問題を考えるに当たって[奥野良知]
第2章 〈イギリス①〉スコットランドの独立運動とイギリス政治のゆくえ[山崎幹根]
はじめに
1 スコットランド独立運動の歴史的背景
2 2014年9月 独立を問う住民投票
3 その後も続くSNPの躍進
4 スコットランド法の改正と権限移譲
5 2016年6月EUからの離脱を問う国民投票
6 2017年下院選挙と今後のゆくえ
第3章 〈イギリス②〉北アイルランド自治の現状と課題[福岡千珠]
はじめに
1 分断と自治
2 「自治」なき時代
3 ベルファスト和平合意後の「自治」
4 紛争の停止から対話の実現に向けて――「多極共存型民主主義」の評価
おわりに
第4章 〈スペイン①〉問われているのは「地域」か「国家」か――自己決定権をめぐるバスクの動向を追う[萩尾生]
はじめに
1 「バスク地方」とは――空間領域意識の問題
2 バスク・ナショナリズムの系譜
3 バスク自治州体制
4 自決権をめぐる駆け引き
5 今後のシナリオ
第5章 〈スペイン②〉カタルーニャ・スペイン問題――問われているのはスペインの多様性、民主主義、人権[奥野良知]
1 カタルーニャの独立派と反対派
2 スペイン・カタルーニャ問題略史
3 1978年憲法の制定と自治州
4 新自治憲章の制定(2006年)と違憲判決(2010年)
5 ラホイ国民党政権による再中央集権化
6 独立に向けた「プロセス」の開始(2014年~)とスペイン政府の対応
7 住民投票、独立宣言、自治権停止
8 「政治犯」とカタルーニャ問題の国際化
むすびに代えて――終わらないスペイン・カタルーニャ問題
第6章 〈カナダ〉ケベック問題が問いかけるもの[太田唱史]
はじめに
1 国民国家とトルドーの国家観
2 カナダ国民形成とケベック・ナショナリズムの興隆
3 揺れ動く国家観
4 ケベック問題の本質
おわりに
第7章 〈旧ユーゴスラヴィア〉コソヴォの独立を考える――独立宣言から10年を経て[柴宜弘]
はじめに
1 コソヴォ紛争とは
2 どのような独立だったのか
3 独立以後の問題
むすびに代えて
第8章 〈中国〉〈国民国家〉と〈国際関係〉の中の新疆ウイグル自治区[田中周/鈴木隆]
はじめに
1 中国共産党の民族政策の概観
2 新疆ウイグル自治区における中国共産党の国家建設
3 中国‐中央アジアの国際関係からみる新疆ウイグル自治区
おわりに
第9章 〈日本〉民族の自己決定権に基づく「復国」としての琉球独立――中華民国・琉球関係、国際法、カタルーニャ独立を導きの糸として[松島泰勝]
1 琉球独立を巡る中華民国の外交
2 琉球独立の国際法上の正当性
3 国連、国際法を活用した脱植民地化運動
4 カタルーニャ独立が琉球にとって持つ意味
むすびに代えて――県民投票後、琉球は何をすべきか
前書きなど
はじめに
国民国家(ネイション・ステイト)というのは、一つのステイト(国家)には一つのネイション(国民=民族)と一つの国家語しか認めないとするユニナショナルな立場に立つ国家を指し、日本もこれに含まれます。そして、ユニナショナルな国家の問題点は、本来その国家が歴史的に持っている民族的・言語的な多様性を否定し、政治的に多数派の集団の言語・文化・歴史を、その国家のあたかも唯一の中立的かつ市民的な国民文化と規定して満足してしまうことにあります。
ですが、日本が明治以降、国民国家形成の手本とした西ヨーロッパ諸国からして、日本の人々が思い描いているほどには歴史的に均質な民族・言語から形成されている訳ではなく、実はかなりの地域的な多様性が現在に至るまで存在します。そして、日本という国家の中にも実は少なからぬ地域的な多様性が存在します。アイヌの人々や琉球・沖縄の存在は、そのような多様性の典型的かつ雄弁な事例だといえます。同様のことは、世界中の多くの国々にもいえます。
本書では、常に均質化を求めてくる国民国家に対し異議申し立てを行っている地域を通して、国民国家がマルチナショナルな国家(複数のネイションの存在を認める国家)へ移行する可能性の有無や、一見マルチナショナルな国家に見える国家が内包している問題点について、あるいは国民国家に異議申し立てを行っている地域の自決権や、もしそのような地域が自決権を行使して独立した場合、それは旧態依然たる国民国家が増えるだけのことを意味するのか、それとも新たな可能性の芽生えとなるのか、というようなことについて、一緒に考えていければと思います。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。