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「化粧」を「文化」として見てみると

こんにちは。ポーラ文化研究所の立川です。
突然ですが、みなさん朝起きたら顔、洗いますか? もちろん私も洗います。顔を洗って、歯を磨いて、化粧をして、ヘアスタイルを整えて…と忙しい朝も決まったステップをこなし、仕事を終えて帰宅したらしたで、化粧を落として、顔を洗って、化粧水などなどと続きます。こうして日常に組み込まれ、習慣化している洗顔、スキンケア、メークといった化粧、歯を磨くことや髪を洗い整えることにも歴史有りということって、意外と意識されていないものです。ポーラ文化研究所は1976年の設立以来、こうした日常のひとこまである化粧、よそおいを文化として捉え、調査し、そこにある意味を研究し、出版物や展示活動などで発表しつづけている機関です。

そんな長年の研究成果から、ざっくりと日本の化粧の歴史をご紹介すると、
化粧のはじまりは古代、3世紀の終わり、中国の歴史書、通称『魏志倭人伝』に、顔や身体に赤い顔料を塗っている日本人の姿が登場。このころは「キレイでいたい」「美人にみせたい」むろん「もてたい」なんて意識ではなく、赤い色に生命や呪術的な意味をこめて化粧をしていたんだとか。(呪術ってちょっとコワイ気もしますが。)
その後、飛鳥、奈良時代に仏教とともに化粧品が伝わり、化粧は中国の影響を大きく受けていきます。平安時代には、学びとった中国のおしゃれ文化を日本風に消化。ここが外国文化を吸収するのが上手な日本人のいいところ。ご存知の源氏物語絵巻に登場するような女性たちの化粧。真っ白な白粉をした顔に、額の上部に描く眉、紅化粧といった日本独自の化粧を形づくっていきます。

よそおいのパワーは根強いもので、貴族社会から武家社会へと戦乱が続く中でも化粧は続けられ、江戸時代には庶民の間にも爆発的に広がり、浮世絵に見られるような華やかな化粧文化が展開していきます。江戸時代の化粧、髪型は、身分や階級、未婚か既婚かといったところを示す記号の役割もありましたが、庶民文化が花開き、おしゃれ意識もかなり高かったこの時代。今でいう均一な制服に工夫をこらす女子校生のように、ルールの中でも自分に似合う化粧、髪型を目指し美容本もかなり読まれ、流行の化粧、髪型も何百と生まれていきました。
かわって明治時代に入ると、文明開化の波がそれまでの日本の伝統的な化粧を変え、和洋折衷時代に突入。とはいえ欧米文化の模倣ばかりではいけないと気がつくのが、これまた起用な日本人。そこは、またまた西洋からきた新しい化粧をも自分たちに似合うものに変化させ、大正、昭和と発展させていくことになります。

こうしてみてみると、かつての「ガングロ」、現代の「美白ブーム」「すっぴん風ベースメーク」も長い化粧の歴史の1ページ。そこに込めた「若くいたい」「もてたい」「キレイでいたい」といった意識も、社会のあり方や女性の生き方、暮らしを反映してのもの。そう、毎日の習慣「化粧」「よそおい」を、歴史・文化としてみてみると、いろいろなものが見えてきます。たかが化粧でもされど!なんです。

ここでひとつ「化粧を文化として見る」のに役立つポーラ文化研究所の入門書をご紹介します。まずはCD-R版『日本の化粧』。江戸時代を中心に、明治の初めまでの化粧風俗を、紅、白粉、お歯黒、眉などに分類し、化粧の様子や歴史、道具の使い方、さらに当時の化粧品の生産や流通、化粧意識までを解説。日本の伝統的な化粧がどう成り立ってきたのか、大きな流れを入門的に掴むことができる一冊です。

もうひとつは、CD-R版『モダン化粧史』。こちらは、明治から昭和の戦前まで、社会背景を織り込みながら化粧、髪型、服飾の流れや当時の美人コンテストの状況、女性の意識、化粧観を紹介。女性の社会進出が進み、現代につながる美容意識、化粧意識が育まれていった時代のよそおいをわかりやすく伝えています。「化粧の履歴書」と題して美容家、早見一十一やメイ・牛山、ブルースの女王、淡谷のり子などの化粧に対するインタビューも掲載、日本の近代化粧の様子を知る生の声として必見です。

もっとご紹介したいところですが、出版物のご案内として化粧や髪型の歴史を映像から学べるDVDなど多数、ポーラ文化研究所ホームページでもご紹介しています。
朝、鏡を見て「顔を洗うっていつからはじまったんだろう」とか「人はなんでアイシャドーを使いはじめたんだろう」なんておもわず考えちゃったらぜひ!「化粧を文化としてみる」化粧文化の扉をあけてみてください。

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