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読書の網目

御多分に洩れず、本好きです。本は何でも好きなので「趣味は読書」と言うと、自分ではちょっと違和感があります。読書は生活の一部で、あえて趣味と言うならば中でも翻訳SFとファンタジー、というところでしょう。
 本を捨てたり売ったりしないので、家にはかなりの量の古いSFやファンタジーがあります。そして始終それらを読み返しています。新しく出たものを購入して読むのと古いものを読み返すのと、時期によってはバランスが1:2くらいになっていることもよくあります。
 古いものを読み返して「うん、やっぱり今読んでも面白い」と思ってそのことを自分のブログやTwitterに書こうとして、すでに出版元で絶版になっている、ということがしばしばあります。確かに古いですし、まして翻訳SFやファンタジーとなるとそもそもの読者数が少ないのも紛れもない事実でしょうから、仕方がないな、とは思います。
 しかし、自分の判断では、この作品が絶版になってしまっているととあるSFの(あるいはファンタジーの)、連綿と受け継がれてきた伝統がぷっつりと途切れてしまっている、少なくとも、受け継がれてきた流れがあるということを今の読者は実際に自分で読んで確かめることが難しい状態になってしまっている、ということをとても残念に思うことがあります。
 古書店には在庫がある場合もあります。しかし、そのような本が存在していることをあらかじめ知っていなければ気付くことが出来ません。出版元のウェブサイトなどで検索をしても、品切れとして表示されるのではなく、検索結果が帰ってこないことがほとんどです。あたかも、その出版社ではそのような本を出版したことが全くないかのように見えるわけです。
 随分昔のことですが、最近書店員の商品知識が足りないのではないか、というような話題の一環として、アルバイト店員が店の端末を叩いて(検索の仕方そのもののミスなのかデータの不備なのかはともあれ)結果が帰らなかったので夏目漱石のとある作品について「そういうものはありません」とお客さんに答えたという笑い話がありましが、今となっては、あまり笑えない話になってしまいました。

 本は一冊のみで存在するのではなく多くの他の本とつながり合っています。本そのものは別に繋がろうと思ってはおらず、自分の独自性だけをつよく打ち出そうと望んでいるのかもしれませんが、少なくとも、豊かな読書体験と言えるものは違うように思います。
 本が絶版になっていくには様々な理由がありますし、価格がついた「商品」なのですから経済的な判断が行われるのは当然です。ただ、そういうものが存在したことを知り、その内容はどんなものであったか知ることが出来るような状態は保っておいて欲しいな、と思います。将来の潜在的な読者を育て、その市場が痩せ細らないようにしておくために、少しだけ水やりをして欲しいな、と望みます。
 
 ここまでは、ある意味では、経済を無視した一愛好家からの自分勝手な望みに過ぎませんが、最近、自分自身も少し努力が足りないのではないかと感じています。
 ある本が好きで、その本の情報が世の中から失われそうなことを心配するのであれば自分でも積極的に「世の中にはこんなに楽しい本がありますよ」と知らせる努力をしていかなければな、と思います。まして私の趣味のように翻訳SFとか翻訳ファンタジーのようにそもそもの総読者数が少なそうなニッチなジャンルについては、愛好家である自分達自身が積極的にそういう事をやっていかないと生き残っていけないかもしれません。
 豊かな読書体験は単品の本で終わるものではないという考えからすると、単に「この本は面白いです」ということではなく、自分が今まで読んできた他の本との関わりを少しでも感じてもらえるように紹介しなければならないでしょう。ある一点の本が面白いと主張するだけなら、それはとても小規模ですが、Amazonなどのランキング一位ということと本質的にはあまり変わりません。ランキング一位の本と二位の本にはほとんど場合何の関連性もないので、一位と二位の本を続けて読んでも豊な読書体験にはなりそうもありません。
 インターネットの発達・普及によって、実は昔よりも一冊一冊の本への紹介や言及を、その本を読んだ当人以外が目にする機会はずっと増えているはずなのですが、それでもなぜか豊かさを感じにくいのは、結局は多くの言及がプチ・ランキング一位とでもいうような形になってしまっているからかもしれません。「自分はかつてこの本を読んだので、今回この本を楽しみました」というようなことを簡単に示せるような仕組みを売りにしたネット上のサービスなどが流行ってくれるといいなぁ、と思っています。つまり、クリックひとつなどで自分の読書体験のなかでも本同士のつながりを見た目にもわかりやくす示せるような仕組み、ということですね。
 仕事としては自社でもそういう事を考えるべき、という思いももちろん頭を過ぎりますが…今回は一読書愛好家の戯言としておきます。

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