第1回ARGフォーラムの雑感
メーリングリストで告知いただいた第1回ARGフォーラム(8月17日)に出かけてきました。私は専門家ではないので難しい議論は横に置いておいて率直な感想だけを列挙してみたいと思います。
最も強く感じたことは、従来の本作りは確実に転換点に来ているということです(DTPが登場した頃から言われ続けていることですが)。それは紙から他の媒体でのパブリッシング、読み手の要求を意識した作り方、流通、そして利益構造(ビジネスモデルや著者の印税)などです。
DRM技術の進歩によって音楽や映画のネット配信は主流になりつつあります。これはユーザーが媒体に固執するのではなくユーザビリティーを重視した結果でありましょうし、ネット配信が何よりもユーザーの生活環境にマッチしたことが主な理由でしょう。ネット配信によって経済的に損をした人がいるかと考えますと、CD/DVDのプレス業者や運送会社などの派生的な業種に限定されるわけで、それ以外の人(制作者側)には従来と同じような利益構造が維持されています。
そうすると紙が主体である書籍や雑誌はどうなのでしょう?どこが変われば、従来の紙主体の本作りが変わるのでしょう?そもそも、音楽/映画のネット配信のように、書籍や雑誌を現在手に入れることができる携帯機器やコンピューターで読みたいという人はどれぐらい存在するのでしょうか?もちろん、一般ユーザーがWebで検索するように、研究者が世界中の本を串刺し検索して論文の執筆に役立てるという要求はあるでしょう。
ガソリン自動車が最終的に電気自動車に置き換わると、エンジンやマフラーなどの製造メーカーは職を失います。しかし、ユーザーにとってはコストパフォーマンスが良くて環境保護になり減税されるとなれば、迷わずハイブリッド車や電気自動車に買い換えることでしょう。それと同様に、電子出版がコストパフォーマンスが良くて環境に優しく減税対象となった場合、果たして一般読者はこぞって電子出版に流れるでしょうか?本を読む行為と映画/動画を観る行為は同じ人間の「目」を使った動作ですが、静と動のメディアという以上に何か大きな違いがあるように思うのです。
私の世代は「ながら族」です。小学校には二宮尊徳像があり、歩きながらでも本を読んで勉強することが美徳と教えられました。しかし、今はどこを見ても、携帯電話を見ながら、そして携帯端末で音楽を聴きながらの人々で溢れています。この文化・社会環境の変化の中で本作りはどのように進むべきなのでしょうか?