書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
工芸史
巻次:一号
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年3月31日
- 書店発売日
- 2024年4月20日
- 登録日
- 2024年2月12日
- 最終更新日
- 2024年7月25日
紹介
二〇二一年三月に設立した工芸史研究会では、陶磁、漆工、染織、金工、木工、ガラスなど、さまざまな素材の工芸品を扱う学芸員、研究者、作家が意見交換を行っています。これまでの工芸に関わる史的研究は、主に素材によって分かれ深められた領域を軸として進められてきました。しかし文化財・作品としての保存・研究・展示、また技術の継承、原料の生産……現代の工芸は、素材を問わず多くの共通の課題に直面しています。当会は、これらの問題について共に話し、各領域における研究動向や手法を共有し、会員の研究を発展させるための恒常的な場を求め、主に若手の有志を募り発足しました。創立より三年を記念し、これまで実施した研究会や講演会のアーカイブのため、そして柔軟性の高い発表・議論の場をさらに整えるべく、本誌を発刊することとなりました。
工芸は地域、時代を問わず、人の手により生み出され親しまれてきました。人々のライフスタイルが変容し、工芸と人の関係もまた少しずつ変化しています。当会は工芸をとりまく文化を後世に伝えるため、情報交換および研究の場となり、交流の基盤を築くことを目指しています。『工芸史』が、その推進力になることを祈念致します。
◯内容
研究会憲章
活動記録
●会員作品 畑中咲輝 (陶芸)
●第一部 これからの「工芸」
――「工芸」・「工芸史」という茫洋と捉えにくい領域を考える指針として、寄稿論考を収録。東京藝術大学の佐藤道信氏は、明治時代における「工芸」概念の成立とその後辿った展開と工芸の未来、そして水本和美氏は、前近代の工芸に関し、出土品/伝世品の探究という表裏の存在である考古学と工芸史の協働の可能性について述べた必読の二編となる。
佐藤道信 「近現代における「工芸」の展開」
水本和美 「考古学と美術工芸史研究」
●第二部
――各分野を専門とする会員の論考(研究ノート・調査報告・研究動向紹介)を掲載。
神野有紗 「澤部清五郎原画《春郊鷹狩》《秋庭観楓》の制作に関する一考察―浅井忠原画《狩の図》制作過程との比較をめぐって―」
高家融 「清朝工芸における「丸文」の受容と展開―天啓赤絵と清朝宮廷コレクションを視座として―」
巖由季子 「〈調査報告〉江戸時代中後期における陶磁器補修の事例」
廣谷妃夏 「〈研究史〉中国「経錦」研究の百年」
●付録:「工芸」関連展覧会年表(関東編、2008~2023)
目次
研究会憲章
活動記録
●会員作品 畑中咲輝 (陶芸)
●第一部 これからの「工芸」
佐藤道信 「近現代における「工芸」の展開」
水本和美 「考古学と美術工芸史研究」
●第二部
神野有紗 「澤部清五郎原画《春郊鷹狩》《秋庭観楓》の制作に関する一考察―浅井忠原画《狩の図》制作過程との比較をめぐって―」
高家融 「清朝工芸における「丸文」の受容と展開―天啓赤絵と清朝宮廷コレクションを視座として―」
巖由季子 「〈調査報告〉江戸時代中後期における陶磁器補修の事例」
廣谷妃夏 「〈研究史〉中国「経錦」研究の百年」
●付録:「工芸」関連展覧会年表(関東編、2008~2023)
前書きなど
『工芸史』創刊のあいさつ
このたび工芸史研究会は、機関誌『工芸史』を発刊します。二〇二一年三月に設立した当会では、陶磁、漆工、染織、金 工、木工、ガラスなど、様々な工芸品を専門とする学芸員、研究者、作家などが集まり、個々に研究を進めながら、お互 いの専門知識や立場を活かした意見交換を行っています。こ れまでの工芸品に関わる史的研究では、上記に挙げたような、 素材によって区分した領域がある程度確立されてきたといえ るでしょう。それぞれの分野において、考古学や美術史学な どの隣接分野と協働しながら研究が進められてきましたが、「工芸」に含まれる各分野間を横断した研究の場は、シンポ ジウムや展示などの一時的な機会にとどまらざるを得なかったと指摘できます。各 素 材が「 工 芸 」として まとめられたのは近代のことですが、文化財としての工芸品の保存、博物館等施設における展示公開、そして生産地における技術の継承など、現代においては差し迫る共通の課題が想定されます。当 会は、これら工芸に共通する問題について共に話し、研究動 向や手法を共有し、会員の研究を発展させるための恒常的な 場を求めて、主に若手の有志を募り発足したものです。
発足当初よりフラットな研究環境の促進のため、会の憲章 を策定したうえで活動してきました。地域の文化や生活を反 映する工芸だからこそ、さまざまな拠点をもつ会員が参加できるよう、当会はオンラインでの研究会を基本としています。 研究発表は会員の目的ごとに種類を設け、未発表の研究内容
に 関 す る 「 研 究 会 」、 会 員 主 体 で 行 う 工 芸 に 関 す る 「 勉 強 会 」 、 分 野 ご と の 研 究 経 過 の 報 告 、調 査 報 告 、意 見 交 換 等 を 行 う 「 部 会」を開催しています。二〇二一年の発足以来、研究会とし て活動するための体制整備、研究発表の実施を経て、二〇二 三年五月には東京藝術大学美術学部芸術学科教授・佐藤道信 氏による特別講演を行うことができました。
本誌は、これまでの研究会・講演会実施の成果を残し、会 の活動のさらなる発展のため発刊するものです。第一部では「これからの『工芸』」と題し、東京藝術大学の佐藤道信先生、水本和美先生にご寄稿いただきました。佐藤先生には近代日本美術の制度史の観点から、水本先生には考古学の観点から工芸史についてご執筆いただきました。第二部では、各分野を専門とする会員からの論考を掲載し、さらに作り手が所属する当会の特色として、作家会員の作品紹介の頁も設けています。また、今後の工芸史研究の資料として活用できるよう、工芸の展覧会に関する年表を付録に付しています。
工芸は地域、時代を問わず、人の手によって生み出され、 広く親しまれてきました。人々のライフスタイルが変容した結果、工芸と人の関係も少しずつ変化しています。当会は工 芸をとりまく文化を後世に伝えるため、情報交換および研究の場となり、交流の基盤を築くことを目指しています。今回の『工芸史』発刊が、その推進力になることを祈念したいと思います。最後に、発刊にご協力いただきました関係各所の皆様に御礼申し上げます。
工芸史研究会運営
版元から一言
これからの「工芸」のために
若手の研究者を中心に発足された、研究者や実作者、工芸に携わるすべての人が 総合的な研究発展を目指す「工芸史研究会」による、初の機関誌『工芸史』を発刊。
上記内容は本書刊行時のものです。