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社会的養護における家族の問題
ケアニーズの高い子どもの困難と向き合うということ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2026年10月20日
- 書店発売日
- 2026年10月20日
- 登録日
- 2026年9月17日
- 最終更新日
- 2026年10月19日
紹介
子どもたちの問題をつきつめていくと、
その根底にあったものは「家族」だった。
なぜ、自分の親なのに育ててもらえないのか。
なぜ、自分を傷つけた親は謝ってくれないのか。
なぜ、自分を引き取ろうとしてくれないのか。
社会的養護の子どもたちが、家族との関係のなかで抱える苦悩。その現実を、私たちは本当に理解できているのだろうか。
当事者の語りと、子どもたちの苦悩に向き合い続ける職員の実践を手がかりに、ケアニーズの高い子どもたちが抱える困難を捉え直す。
正解のない問いを前に、葛藤しながら、それでも子どものそばに居続ける職員たち。その営みから、社会的養護における「養育」の意味をあらためて問い直す。
《本書で検討する内容》
▶ 社会的養護の子どもが抱える「家族」の困難
▶ 子どもたちは、いかに人生を引き受けていくのか
▶ ケアニーズの高まりと「医療化」「心理化」の課題
▶ 職員の葛藤と専門性─「良い職員」でなくていい
▶ 養育の意義の復権─社会的に価値あるものとして
目次
序 章 本書のねらい
第1節 研究の背景と問題意識──なぜ今、養育なのか
第2節 研究の目的と意義
第3節 本書の構成
第4節 本書で用いる概念
第1章 変化する社会的養護と子どもたちの現状
第1節 2016年児童福祉法改正とその内容
第2節 入所する子どもたちの現状
第3節 施設に求められる高機能化
第2章 社会的養護にある子どもの困難と職員の苦悩
第1節 調査結果等にみる子どもの示す「問題行動」
第2節 職員の抱える苦悩
第3節 職員は何に苦悩しているのか
第3章 社会的養護にある子どもの困難をどう理解するか
第1節 今日主流にあると考えられる社会的養護の子どもを理解し、支援する枠組み
第2節 社会的養護にある子どもの抱える苦悩とそれを支える新たな視点の必要性
第3節 家族の現実がもたらす困難さ
第4節 社会的養護にある子どもたちの困難への新たな視点の提示
第4章 家族の現実がもたらす困難への支援はどう議論されてきたのか
第1節 養護問題の変質期と考えられる1970年代から80年代
第2節 虐待問題とそこからの議論
第3節 子どもの知る権利の文脈
第4節 家族の現実がもたらす困難への支援の到達点と課題
第5章 当事者が抱える家族の現実がもたらす生きづらさとは何か
──当事者へのインタビュー調査を通して
第1節 本章の目的
第2節 研究方法
第3節 分析結果と考察
第4節 小 括
第6章 施設職員による家族の現実への支援
──児童養護施設における家庭支援専門相談員および施設職員に対する質的調査から
第1節 研究目的および方法
第2節 結果と考察
第3節 小 括
第7章 総合考察
第1節 社会的養護にある子どもの困難の本質とは何か
第2節 支援の本質としての「受けとめ」
第3節 受けとめの構造をめぐって
第4節 受けとめとありのままの自己を受け入れることとの関係性
終 章 受けとめとそれを可能にするもの
──本研究の結論と今後の課題
第1節 受けとめるとは何か
第2節 受けとめを困難にするもの
第3節 受けとめを可能にするもの
前書きなど
おわりに
今、まさに子どもと向き合い、矛盾や葛藤を抱えながらもがいている職員に伝えたい。あなたと同じように、子どももまた、この世界は信じられるのか、信じるに値するのか、人は、そしてあなたは本当に信頼できるのかと、そうした矛盾と葛藤のなかでもがき続けているのだと。
あなたが格闘しているように、子どもも格闘しているのである。その意味では対等なのである。
そして、あなたには、子どもが自分と向き合い、格闘しているということを基盤にすえ、そのなかで逡巡してほしい。子どももまた、現象的にはそうは見えにくいが、矛盾や葛藤のなかにあって、自己への信頼を取り戻そうともがいていると捉えてみたい。そういう意味において、矛盾や葛藤そのものにこそ意味があるのだ。むろん、誰かのサポートがあることは必然であり、それでよい。しかし、それでもなお、子どもはひとりでもがいている。このことを踏まえておきたい。
そして、もうひとつ大切なのは、子どもとのある意味で危機的な状況のなかで自分と向き合うことを通して、職員として、またひとりの人としての成長が生まれるという点である。
こうした経験のなかで、私は自己のゆるやかな解体を経験していった。「良い子」でいる必要はないのだと気づかされたのである。大切なのは、適切に振る舞うことにとらわれることではない。無力であってもよい。子どもを思い、逡巡していく日々にこそ意味がある。そして、その逡巡の過程のなかでこそ、職員として大切にすべき核となるものがつかみ取られていくのだ。
むろん、受けとめは逡巡してよいが、揺ゆらぎのなかにあるからこそ、職員のサポートは不可欠である。そのためにも、チームによるケアが重要になる。ひとりの職員による受けとめには限界があると考えるからである。
ここで述べたいことがある。それは、日々、職員が逡巡しながら子どもと向き合っている、その営みそのものを再評価すべきではないかという点である。それは尊い営みであり、受けとめをし続けること自体が意義深い。「こんな自分でよいのか」と職員が苦悩するのは、子どもを思うからであり、同時に自己と向き合っているからでもある。
できない自分にばかり目を向けるのではなく、「いい仕事をしている」と評価してよいのだと思う。日々、全国の児童養護施設職員は、苦悩のなかにあって、それでもその場に居続けている。それこそが養育の力であり、もっと評価されてよい。社会的にも、である。ここに「養育の意義の復権」を唱えたい。
(後略)
上記内容は本書刊行時のものです。





