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凍れる美学
定家と和歌についての覚え書き
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2025年3月24日
- 書店発売日
- 2025年3月27日
- 登録日
- 2025年3月17日
- 最終更新日
- 2025年3月28日
紹介
たぐひなき美遊の世界
古今に冠絶した稀世の手練れ、藤原定家の「歌作り」を、
和歌史という限定されたコンテクストから解き放ち、
東西古典詩というより広い世界へと導く――新しい和歌論。
藤原定家は「本歌取り」という詠歌の技法を詩作の原理として、八〇年に及ぶその生涯で、実に四二〇〇首余りの歌を詠んだ。
その高度な芸術的達成は、ヘレニズム時代のギリシア詩、ローマの詩、ルネッサンスのラテン語詩、一六世紀のプレイヤード派の詩、中国古典詩など、東西の中世詩・古典詩の中でも洗練を極め、一頂点をなすものである。
王朝文化が終焉を迎えた中世初期という暗黒の時代に、天才詩人・定家とその一派の歌人たちは、いかにしてあの象徴性を帯び、形而上的なまでの詩的宇宙を創り上げたのか。
「定家という詩人は、一二世紀から一三世紀にかけての東西古典詩史の上で、最もまばゆい光芒を放った詩人ではなかろうか。」(本書より)
目次
はじめに
第一章 詩歌における創新と模倣・文学作品の再生産
――「文学から文学を作るということ」
(一) 和歌史における定家の功績とその後の和歌
(二) 文学制作の手法としての「本歌取り」とその普遍性
――「文学から文学を作る」ということ
(三) 「詩から詩を作る」ということ
――近・現代詩における独創性重視
(四) 中国古典詩における「本歌取り」的作詩法
――伝統重視の「規範の詩学」と詩人たち
(五) ルネッサンス以後のヨーロッパの詩における「本歌取り」的手法
――典範として作用したギリシア・ローマの詩
(六) ローマの詩における「本歌取り」的手法
――模倣・翻案から独創へ
(七) ギリシアの詩における「本歌取り」的手法
――独創的な上代の詩人たち・ヘレニズム詩の「本歌取り」
第二章 凍れる美学または「点鉄成金」の詩学
――定家の唱える本歌取りの原理
(一) 「本歌取り」の提唱者としての定家とその意義
(二) 詩作の原理としての「本歌取り」・定家以前、源俊頼の否定的態度
(三) 俊成による「本歌取り」手法の導入とその実践
――物語を背景とした和歌・和歌の物語化
(四) 定家の唱える本歌取り・「凍れる美学」の理念
第三章 人工楽園の華麗な幻花・超絶技巧の饗宴
――本歌取りの歌瞥見
(一) 定家の歌吟味
恋の歌三首/自然詠の歌・「凍れる美学」の歌二首/
春の歌二首・梅の花と月の歌
(二) 俊成卿女の歌・夢幻的で艶なる世界
(三) 藤原家隆の歌・「達者のわざ」
(四) 鬼才藤原良経の歌・名歌二首
(五) 後鳥羽院の歌・一代の絶唱/宇治の橋姫の歌
第四章 『新古今和歌集』あるいは地獄の中の人工楽園
――現実拒否の詩的宇宙
(一) 万葉支持派対新古今支持派
(二) 地獄の中に咲いた花・『新古今集』成立の背景
(三) 『新古今集』の文学的到達点・言語芸術の精髄
第五章 付論・和歌とはどんな言語芸術か
――元横文字屋の異見
(一) いかにも「日本的な」詩文学
(二) これまでの和歌の定義
(三) 異常に文学的生命の長い詩文学
(四) 因襲の文学としての尚古主義による規範性の強さ、狭小な詩的世界
(五) 社会性、思想性を欠く優美一途の繊弱な文学
(六) 抒情的な、あまりに純粋に抒情的な文学
――その限界と功罪
主要参考文献
あとがき
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。