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いつかたこぶねになる日
漢詩の手帖
- 出版社在庫情報
- 重版中
- 初版年月日
- 2020年11月5日
- 書店発売日
- 2020年11月10日
- 登録日
- 2020年9月30日
- 最終更新日
- 2023年5月2日
書評掲載情報
2021-03-20 | 朝日新聞 朝刊 |
2021-02-20 |
アンド プレミアム
4月号 評者: 松井亜衣(本屋B&B) |
2021-02-06 |
毎日新聞
朝刊 評者: 渡邊十絲子(詩人) |
2021-01-24 | 静岡新聞 |
2021-01-17 | 埼玉新聞 |
2021-01-17 | 上毛新聞 |
2021-01-17 | 愛媛新聞 |
2021-01-16 | 東奥日報 |
2021-01-16 | 宮崎日日新聞 |
2021-01-16 | 沖縄タイムス |
2021-01-10 | 琉球新報 |
2021-01-10 | 秋田魁新報 |
2021-01-09 | 富山新聞 |
2021-01-07 |
週刊文春
1月14日号 評者: 酒井順子 |
2020-11-29 |
京都新聞
評者: 鵜飼慶樹(京都岡崎蔦屋書店) |
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重版情報
4刷 | 出来予定日: 2023-06-06 |
3刷 | 出来予定日: 2022-02-10 |
2刷 | 出来予定日: 2021-03-25 |
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紹介
池澤夏樹さん推薦!!!
「この人、何者?
極上のエッセーで、文体が弾み、とんでもなく博識で、どうやらフランス暮らし。俳句を作る人らしい。一回ごとに漢詩の引用があるが、その漢詩はいつも角を曲がったところに立っている。しなやかな和訳と読解が続く。
世の中は驚きに満ちている、と改めて思った。」
(本書帯文より)
フランス在住の俳人・小津夜景さんがつづる、漢詩のある日々の暮らしーー
杜甫や李賀、白居易といった古典はもちろんのこと、新井白石のそばの詩や夏目漱石の菜の花の詩、幸徳秋水の獄中詩といった日本の漢詩人たちの作品も多めに入っていて、中国近代の詩人である王国維や徐志摩も出てきます。
巻末には本書に登場する漢詩人の略歴付。
目次
はじめに
いつかたこぶねになる日
それが海であるというだけで
釣りと同じようにすばらしいこと
虹をたずねる舟
翻訳とクラブアップル
とりのすくものす
タヌキのごちそう
おのれの分身と連れ添う鳥
あなたとあそぶゆめをみた
空気草履と蕎麦
屛風絵を旅する男
はだかであること
愛すべき白たち
はじめに傷があった
隠棲から遠く離れて
スープの味わい
イヴのできごと
海辺の雲と向かいあって
生まれかけの意味の中で
砂糖と試験管
紙ヒコーキの乗り方
春夜の一服
ベランダ暮らしの庭
文字の消え去るところ
鏡とまぐわう瞳
無題のコラージュ
ひょうたんのうつわを借りて
貝塚のガラクタたち
ファッションと柳
旅行の約束
わたしの祖国
おわりに
本書に登場するおもな詩人たち
漢詩出典
初出
前書きなど
はじめに
今日、自転車を漕ぎながら、詩っていいものだな、と思いました。
いったい詩のどこをいいと思ったのかというと、なんといってもその短さです。短いおかげで忙しくても自分のペースでつきあえるし、暗唱だってできる。そしていったん暗唱してしまえば、料理をしていようと、シャワーをあびていようと、車窓をながめていようと、本を売ってしまおうといっこうに困らない。
そんないいところのある詩の世界から漢詩ばかりをみつくろい、その黴臭いイメージをさっと片手でぬぐって、業界のしきたりを気にせず、専門知識にもこだわらない、わたし流のつきあい方を一冊にまとめたのが、いまあなたの手にしている本です。それぞれの作品には日々の暮らしや思いつきをつづった文章を添え、漢詩とわたしとの表向きの距離感がみえるようにしました。雑学好きの方のために、ざっくばらんに語った翻訳論や定型論などもはさんであります。あとわたしはふだん俳句を書いているので、漢詩にからめた俳句連作も折り込みました。収録作品は、おおざっぱに分類してこんな感じです。
【生活にまつわるもの】
食べものについて、調理法について、味わいについて、水の真理について、ビオトープについて、昆虫の仕事について、別荘のすごし方について、道具の使い回し術について。
【社会にまつわるもの】
闘う女性について、獄中詩について、左遷について、地方の貧困について、江戸時代の広告について、明治時代の洋行について。
【芸術ないし思想にまつわるもの】
極薄性について、まぼろしと傷について、絵画と没入について、鏡と自己について、定型とコラージュについて、文字と無について、ケンブリッジと漢詩、ブレイクと漢詩、シェリーと漢詩、王朝系サウンド屈指の名盤について、詩とはなにかについて。
【人生にまつわるもの】
すぎゆく時間について、愛する者の死について、夜の閨房について、春の夜のひとときについて、仙人稼業について、隠棲の夢について、老いについて、人間がどこから来てどこへ去ってゆくのかについて、読書への愛についてなど。
詩人たちの国籍は中国と日本が半々くらい。年齢は原則として満年齢で統一しています。翻訳はできるかぎり原典に忠実であることを心がけ、常用漢字外の漢字および音訓を含む語には各篇ごとにルビをふりました。もしもこの本が、あなたならではの漢詩とのつきあい方を発見し、漢詩のある日常を自由にデザインするきっかけになったとしたらとても嬉しく思います。
版元から一言
本書は、フランス・ニース在住の俳人、小津夜景さんによる、世にもめずらしい漢詩翻訳+エッセイ本です。
漢詩といえば、どうしても権威主義的で堅苦しいイメージを抱かれがちですが、本書は、帯に池澤夏樹さんがお書きくださったように、定型詩の実作者でもある著者の清新でしなやかな翻訳と、現在のニースでの暮らしなどを綴るみずみずしい極上のエッセイによって、漢詩がごく自然に生活のそばにあることの愉悦と悲哀をおしえてくれます。
たとえば、表題作「いつかたこぶねになる日」での、動画で観たタコの話から、話題をアン・モロウ・リンドバーグ『海からの贈り物』の「たこぶね」へとうつし、女性の自立というテーマを導出したうえで、江戸時代の男装帯刀の女性漢詩人、原采蘋による漢詩の訳出におよぶという軽やかさは、著者の才気煥発ぶりをよくあらわしています。
本書で紹介される漢詩には、杜甫や李賀、白居易といった古典はもちろんのこと、新井白石の蕎麦の詩や夏目漱石の菜の花の詩、幸徳秋水の獄中詩など、日本の文人たちのあまり知られていない漢詩も多くあり、また、中国近代の詩人である王国維や徐志摩の作品が出てくるのも本書の特色のひとつです。
帯のウラには、「詩は、短くて、切実で、愉快な友。」と記しました。本書を読んでくださった読者の方々にとって、『いつかたこぶねになる日』が友のような存在になれば幸いです。
上記内容は本書刊行時のものです。