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無数のひとりが紡ぐ歴史 田中 祐介(編) - 文学通信
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無数のひとりが紡ぐ歴史 (ムスウノヒトリガツムグレキシ) 日記文化から近現代日本を照射する (ニッキブンカカラキンゲンダイニホンヲショウシャスル)

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発行:文学通信
A5判
456ページ
並製
価格 2,800円+税
ISBN
978-4-909658-75-3   COPY
ISBN 13
9784909658753   COPY
ISBN 10h
4-909658-75-0   COPY
ISBN 10
4909658750   COPY
出版者記号
909658   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年3月31日
書店発売日
登録日
2022年3月29日
最終更新日
2022年4月25日
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紹介

人間の書くことの歴史と文化を考え、過去を生きた、無数の人々が紡いだ歴史の意味を問う。
過去を生きた未知の人々の小さな歴史に向きあい、書かれた言葉の向こう側に想像力を働かせながら、より大きな歴史との異なりや繋がりを実践的に検証していく書。

全体を、「モノとしての日記・家計簿・手帳の文化史」、「読者を意識した自己の真実性」、「自己を語り直す--日記・私小説・自伝・回想録」、「無数のひとりに出会う」の四部で構成する。

本来ならば絶対に関わらない他者の日記を時代を超えて読むことには、一体どういう意味があるのか。書かれた内容を鵜呑みにできず、一筋縄ではいかない日記という史料にいかに向き合うべきなのか。モノ・行為・史料の視座から掘り下げ、人はなぜ日記を綴るのかという根源的な問いへの向きあい方をも考えていく、最先端の「日記文化」研究。

執筆は、田中祐介/柿本真代/河内聡子/鬼頭篤史/志良堂正史/竹内瑞穂/堤ひろゆき/徳山倫子/大木志門/西田昌之/大岡響子/大川史織/吉見義明/山田鮎美/島利栄子。

【日記は読み手に都合の良い論証の材料ではなく、未知の他者との出会いであり、新鮮な問いが様々に生まれる磁場である。書き手の人格と人生に敬意を払いながら、紙面に留められた言葉のひとつひとつに向きあい、予見を排して慎重に読み解く。そうすることで過去の言葉は再び生彩を放ち、現在の読者の言葉と思考を揺るがし、再考を促すであろう。すなわち日記の読み解きを通じて出会うのは、社会的属性や特定の歴史経験に還元され得ない個別的な他者、換言すれば無数のひとりにほかならない。】……「総論 「日記文化」を掘り下げ、歴史を照射する」より

目次

総論 「日記文化」を掘り下げ、歴史を照射する(田中祐介)

1 はじめに
2 モノとしての日記・家計簿・手帳の文化史を紐解く
3 行為としての日記─虚飾のない自己を綴るという制度
4 自己表象に働く規範化と逸脱の力学
5 史料としての日記にいかに向きあうか
6 おわりに─無数のひとりに出会うために

Ⅰ モノとしての日記・家計簿・手帳の文化史

1章 夏休みの日記の成立と展開
―「夏季休暇日誌」から「なつやすみの友」へ(柿本真代)
1 はじめに
2 夏季休暇をめぐって
3 市販の夏季休暇日誌
4 謄写版から共同購入へ
5 夏季休暇日誌の役割
6 おわりに

2章 家計簿と女性の近代―モノとしての成立と展開に見る(河内聡子)
1 はじめに
2 近代における家計簿の展開─行為からモノへ
3 「中流家庭」の必需品としての家計簿─羽仁もと子編纂『家計簿』に見る
4 女性のモノとしての家計簿─『婦人之友』の記事に見る効能
5 おわりに

3章 昭和戦後期のサラリーマンの手帳文化
―一九六〇年代末から一九八〇年代の手帳をめぐる言説を中心に(鬼頭篤史)
1 はじめに
2 サラリーマン向けの言説への手帳文化の登場
3 情報整理の文脈における手帳文化
4 「知的○○」の文脈における手帳文化
5 おわりに

4章 手帳類プロジェクトの設計と実践
―私的なプレイヤーのためのプラットフォームへ向けて(志良堂正史)
1 はじめに
2 手帳類というプロジェクト
3 手帳類というモノ
4 手帳類というプラットフォーム
5 おわりに

Ⅱ 読者を意識した自己の真実性

5章 自己を書き綴り、自己を〈調律〉する
―中村古峡史料群の「日記」「相談書簡」「療養日誌」(竹内瑞穂)
1 はじめに
2 変容する古峡日記
3 自己を書き綴る書簡
4 療養日誌のメカニズム
5 おわりに

6章 戦場に行かない兵士としての経験を綴る
―大正期師範学校卒業教員の「六週間現役兵日誌」における伝えるべき軍隊像の模索
(堤ひろゆき)
1 はじめに
2 大正期の六週間現役兵教育における日誌指導の内容
3 兵営における六週間現役兵へのまなざし
4 学校・地域に伝えるべき軍隊像を模索する場としての日誌
5 おわりに

7章 飢える戦場の自己を綴りぬく
―佐藤冨五郎日記における書くことの意思(田中祐介)
1 問題設定
2 軍人の文体を貫き通す─佐藤冨五郎の日記から
3 軍人の文体を脱ぎ捨てる─佐藤正太郎日記における文体の変遷
4 冨五郎の「書くことの意思」に接近する
5 結論

8章 昭和初期農村の「模範処女」たちの自己語り
―県農会立女学校の生徒・卒業生作文に見る規範意識と「少女文化」(徳山倫子)
1 はじめに─近代日本における農村の未婚女性の書記行為をめぐって
2 学校・生徒・読者を媒介する県農会報
3 農村の「模範処女」としての自己語り
4 県農会報を彩る「少女」たち
5 おわりに

Ⅲ 自己を語り直す――日記・私小説・自伝・回想録

9章 水上勉文学における自己語りの諸相
―「私小説」のプロトタイプ的理解の一例として(大木志門)
1 はじめに─「私小説」のプロトタイプ論的理解を目指して
2 「私小説」における「自己語り」─「虚構」と「真実」の手法
3 社会派推理小説・中間小説における「自己語り」─「接続」と「分身」の手法
4 評伝文学における「自己語り」─「同一化」と「偽書」の手法
5 おわりに─「日記」と「歴史」

10章 物語化する自己記述―漆芸家生駒弘のタイ滞在日記と自伝の比較から(西田昌之)
1 はじめに
2 自己記述の物語化─日記と自伝の違い
3 自伝─自己を形成する物語
4 日記との比較─語りえなかった出来事
5 変容する事実─真摯なる虚構
6 おわりに─物語が紡ぐ自己の物語

11章 芦田恵之助の回想録と日記の比較から見る台湾表象と「国語」教育観(大岡響子)
1 はじめに
2 芦田恵之助の台湾訪問と二つのテクスト
3 回想録における原住民族表象と「国語」教育観
4 教壇日記にみる台湾経験と回想録との比較
5 おわりに

Ⅳ 無数のひとりに出会う

12章 映画『タリナイ』上映から一年(講演記録)(大川史織)
1 制作背景
2 残された手帳とノート
3 映画と書籍のつくりかた
4 誰のために日記を書いた?
5 日記をめぐる歴史実践
6 マーシャル諸島を再訪

13章-1 吉見義明氏インタビュー(聞き手▼田中祐介・大川史織)
1 史料としての日記との出会い
2 ある女性の日記を追い求めて
3 「女性の日記から学ぶ会」の四原則
4 青木祥子日記との出会い
5 書かれなかったことをどう想像するか
6 日記に書かれている体験をたどる
7 コロナ禍における日記研究
8 今後の日記研究の展望

13章-2 戦争体験から高度成長期体験へ―「青木祥子日記」の検討から(吉見義明)
1 はじめに
2 青木祥子における戦争体験と敗戦の意味
3 青木祥子と安保闘争
4 青木祥子と高度成長期体験
5 おわりに

14章 特別展示 花の日記に私注をつける(山田鮎美)

15章 個人の記録を未来へ継承する(対談記録)(島利栄子・志良堂正史・田中祐介(司会))
1 それぞれの活動紹介
2 お互いの印象
3 活動の共通点・ちがい
4 活動のこれから


シンポジウム開催記録
執筆者一覧
あとがき

著者プロフィール

田中 祐介  (タナカ ユウスケ)  (

明治学院大学教養教育センター専任講師(日本近代文学・思想史)
著書・論文に、「制度化された近代日記の読み解き方 近代日本の「日記文化」を探究する」(『REKIHAKU』第3号、国立歴史民俗博物館、2021年6月)、「真摯な自己語りに介入する他者たちの声 第二高等学校『忠愛寮日誌』にみるキリスト教主義学生の「読み書きのモード」」(井原あや・梅澤亜由美・大木志門・大原祐治・尾形大・小澤純・河野龍也・小林洋介編『「私」から考える文学史 私小説という視座』勉誠出版、2018年)、『日記文化から近代日本を問う』(編著、笠間書院、2017年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。