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「命のヴィザ」言説の虚構 菅野 賢治(著) - 共和国
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「命のヴィザ」言説の虚構 (イノチノヴィザゲンセツノキョコウ) リトアニアのユダヤ難民に何があったのか? (リトアニアノユダヤナンミンニナニガアッタノカ)

歴史・地理
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発行:共和国
菊変形判
縦188mm 横150mm 厚さ51mm
重さ 500g
648ページ
並製
価格 5,200円+税
ISBN
978-4-907986-81-0   COPY
ISBN 13
9784907986810   COPY
ISBN 10h
4-907986-81-5   COPY
ISBN 10
4907986815   COPY
出版者記号
907986   COPY
Cコード
C0022  
0:一般 0:単行本 22:外国歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2021年7月31日
書店発売日
登録日
2021年7月15日
最終更新日
2021年12月22日
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書評掲載情報

2021-11-12 週刊読書人
評者: 永岑三千輝(ドイツ現代史)
2021-11-06 山梨日日新聞
2021-10-30 図書新聞  3518号
評者: 細見和之
2021-10-30 図書新聞  11月6日号
2021-10-10 福井新聞
2021-10-03 岐阜新聞
2021-10-03 河北新報
2021-10-03 神奈川新聞
2021-10-03 山陽新聞
2021-10-02 京都新聞
2021-09-26 大分合同新聞
2021-09-26 長崎新聞
2021-09-26 佐賀新聞
2021-09-26 中国新聞
2021-09-25 信濃毎日新聞
2021-09-25 東奥日報
2021-09-19 日本海新聞
2021-09-19 宮崎日日新聞
2021-09-19 南日本新聞
2021-09-19 熊本日日新聞
2021-09-19 愛媛新聞
2021-09-18 北日本新聞
2021-09-18 高知新聞  朝刊
2021-09-18 山陰中央新報
2021-09-18 沖縄タイムス
2021-09-12 読売新聞  朝刊
評者: 加藤聖文(研究資料館准教授・歴史学者・国文学)
2021-08-28 毎日新聞  朝刊
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紹介

第2次世界大戦中、ナチスの〈ホロコースト〉からユダヤ難民を救うために、リトアニアの在カウナス日本国総領事館から発給された、「命のヴィザ」をめぐる物語。しかし、そのヴィザの真の目的は何だったのか。1940年夏のリトアニアで、いったい何が起きたのか。
ニューヨークのユダヤ系機関に保管されている第一級資料にメスを入れ、「神話」から歴史の真実を取り戻し、「もう一つの脅威」をあらわにする迫真の学術ドキュメント。
「日本のシンドラー」に関する伝説は、今後、本書によって書き換えられなければならない。
◎徹底的に歴史の細部を検証する648ページ。主要関係者人名録、関連年譜、索引、参考資料を附す。
◎ブックデザイン:宗利淳一

目次

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はじめに
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本書の主眼
JDC資料――文書保存の重要性
スルガイリスの史料研究
既存言説と一次資料、その驚くばかりの齟齬

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第一章 リトアニアのソヴィエト化以前(一九三九年九月~四〇年五月)
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JDCとリトアニア――第二次大戦開戦の報をうけて
ヴィルノ/ヴィルニュスのリトアニア併合をうけて
ユダヤ人=リトアニア人合同委員会
リトアニア政府の対応(一)新しい国籍法
脱出者が伝える占領下ポーランドの状況
併合直後のヴィルニュス――ヒレル・レヴィン『スギハラを求めて』を批判する
リトアニア人、ポーランド人、ソ連人、そしてユダヤ人
リトアニア政府の対応(二)支援組織の公認
スヴァウキ地区の状況
ベッケルマンによるリトアニアの情勢分析
リトアニア政府の対応(三)難民登録の実施
戦争難民の実数
難民たちの日常生活
支援金の分配方法をめぐって
ブンド派の独立独歩(一)
ナチスの蛮行をめぐる資料体構築の試み
「エストニア」号拿捕事件
ブンド派の独立独歩(二)
ルバヴィチ派からの支援要請(一)ポーランドに残された同胞たちのために
リトアニア政府の対応(四)ヴィルニュス地区既存住民の処遇
難民の国内分散移住
ヴァルハフティグの行動の軌跡(一)通常のアリヤー事業
ソ連領内から六十名の救出計画
中立国リトアニアからの国外移住
中立国リトアニアにおける反ユダヤ主義とナチズムの脅威

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第二章 ソヴィエト・リトアニアの成立からソ連国籍の強制まで(1940年6月~12月)
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一九四〇年六月~七月の大激動
体を殺すドイツ人、魂を殺すロシア人――「ユダヤ的ユダヤ人」に迫る危険
JDC現地資金確保のための奔走(一)資産凍結のあおり
アメリカ国籍者の脱出――フィンランド北端ペツァモ経由
JDC現地資金確保のための奔走(二)JDCの法令順守主義とベッケルマンの苛立ち
共産主義体制下におけるユダヤ難民の立場
ブンド指導者ボルフ・シェフネルの場合
ソ連領通過の可能性
「キュラソー・ヴィザ」言説の論理矛盾――ヤン・ブロッケン『義人』を批判する
ヴァルハフティグの行動の軌跡(二)ヴィザ取得の推奨
杉原千畝・幸子証言と一次資料の明白な乖離
記憶と歴史――日本版〈ホロコースト産業〉への警鐘
「宣誓供述書」による日本通過ヴィザの発給
ギテルマンのために作成された「宣誓供述書」
ドイツ・ユダヤ移民との関係(一)ドイツからリトアニア経由、日本へ
移住支援という選択肢の急浮上
ラビ・カルマノヴィツのイニシアティヴ
イェシヴァー救出のためのユダヤ教組織全体会議(一九四〇年八月十五日)
ルバヴィチ派からの支援要請(二)現地支援から移住支援へ
イェシヴァー救出のための小委員会(一九四〇年九月九日)
JDC現地資金確保のための奔走(三)移住費用「立て替え」案
シオニスト集団の最初の移送計画
JDC現地資金確保のための奔走(四)リトアニア政府からの借款
「キュラソー」への言及――「ヒアス」上海支部からヴィルニュス支部への手紙
イェシヴァー救出計画の顚末(一)重い足取り
ヴァルハフティグの行動の軌跡(三)日本へ、そして横浜からJDCへの提言
イェシヴァー救出計画の顚末(二)ドイツ籍ユダヤ教神学生たちの命運
イェシヴァー救出計画の顚末(三)国務省との折衝
ヴァルハフティグの行動の軌跡(四)「オデッサ・ルート」の開通
イェシヴァー救出計画の顚末(四)一九四〇年十二月二十六日の全体委員会
JDC現地資金確保のための奔走(五)財務省の許可

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第三章 大脱出(1941年1月~2月)
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ソ連人となるか、無国籍者となるか
イェシヴァー救出計画の顚末(五)「外交上」の言語
ベッケルマンの奮闘(一)「今さもなくば無」
モスクワないし日本での最終ヴィザ受給
「キュラソー・ヴィザ」と「杉原ヴィザ」の存在価値(一)ともかくモスクワまで
ベッケルマンの奮闘(二)ソ連出国ヴィザの大量発給
「パレスティナ移送」と「非=パレスティナ移送」の切り分け
ベッケルマンの奮闘(三)「ヒツェム」主導による五百名
「キュラソー・ヴィザ」と「杉原ヴィザ」の存在価値(二)イントゥーリストを介しての日本通過許可
忘れられた実務者たち
ベッケルマンの奮闘(四)JDCニューヨーク本部の誤解払拭
ドイツ・ユダヤ移民との関係(二)リトアニア残留者の命運
「セント・ルイス号事件」との思わぬ関連
ベッケルマンの奮闘(五)最後の二週間

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結論と今後の課題
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ベッケルマンによる総括(一)
ベッケルマンによる総括(二)
ベッケルマンによる総括(三)
ナチスの脅威の存否
彼らは何〈から〉逃れたのか――証言の扱い、画すべき一線
ひとつの「論争誘発的」な比較
ギテルマンのその後
「ユダヤ難民」という言葉がもたらす非思考
出立しなかった(できなかった)人々の命運――避難地としてのソ連領
アメリカと日本に何ができたか
自己を主張しない功労者たち
あるがままの〈好意〉を〈フツパー〉へと貶めないために

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補遺
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 エマヌエル・リンゲルブルムによるイツハク・ギテルマン伝(抄)
 書き手不明のJDC文書「リトアニアにおけるユダヤ人の絶滅」(一九四三年)
  
 註
 主なJDCメンバー略歴
 関連年表

あとがき
人名索引

前書きなど

《筆者は、久しくこの歴史主題をそもそもの一次水準で究めようとする作業のなかで、難民たちのリトアニア滞在と極東への逃避行をめぐり、杉原千畝に関する多くの書物、映像資料、大量のインターネット情報に対し、徐々にさまざまな懐疑の念を抱くようになった。最大の疑問は、一九四〇年夏、カウナスのオランダ領事館や日本領事館にパスポートや国籍証明書をもって詰めかけたユダヤ難民たちが、いったい「何から」逃れようとしたのだったか、だ。
一九四〇年七~八月、リトアニア、カウナスの日本領事代理・杉原千畝による日本通過ヴィザ発給の事跡は、一次資料にもとづく歴史考証の目からすれば、いかにしてもユダヤ・ジェノサイド――いわゆる〈ホロコースト〉――に直接関連づけられるべきものではない。あえて一文にすればこう要約される本書の主旨は、〔……〕杉原の功績と人となりをめぐって過去数十年にわたり蓄積された言説の量、構築されたイメージの強度から推して、最初のうち、少なからぬ読者諸氏の抵抗に遭うだろうことも筆者は十分覚悟している。しかし、……》
――「はじめに」より抜粋

版元から一言

映画化もされ、数々の関連書やメディア、教科書などで知られている杉原千畝と「命のヴィザ」の物語。「命のヴィザがナチスのホロコーストからユダヤ人を守った」という感動的なエピソードは、戦争に覆われた現代史上の美しい「神話」として、国際的にも語り継がれています。
しかし、著者の菅野賢治さんは、その「神話」に「?」を付します。ニューヨークのユダヤ系機関に残されている膨大な一次資料を徹底的に分析・調査し、1940年のリトアニアにいた当事者たちの証言と、日本を含む内外の客観的な史実とを突き合わせました。そして、「杉原ヴィザ」が、ユダヤ難民たちがナチスのホロコーストを見越して第三国への出立を考えたために発給されたのではなく、ソ連の共産主義から逃れるためのものだったことを明らかにしています。これは、巷間伝わってきた「命のヴィザ」「日本のシンドラー」をめぐる物語が誤謬であることを証明する、決定的な研究成果といえるでしょう。
今後、この「神話」についてのほとんどの記述は書き換えられる必要が生じ、本書を参照することが必須となるはずです。その具体的な検証作業に、ぜひ読者として加わってください。

著者プロフィール

菅野 賢治  (カンノ ケンジ)  (

1962年、岩手県に生まれる。東京理科大学教養教育研究院教授。
パリ第10(ナンテール)大学博士課程修了。専門は、フランス語、ユダヤ研究。

主な著書に、『フランス・ユダヤの歴史』(上下、慶應義塾大学出版会、2016)、『ドレフュス事件のなかの科学』(青土社、2002)がある。
主な訳書に、アーノルド・ゼイブル『カフェ・シェヘラザード』(共和国、2020)、ヤコヴ・ラブキン『トーラーの名において』(平凡社、2010)、レオン・ポリアコフ『反ユダヤ主義の歴史』(共訳、全5巻、筑摩書房、2005~07)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。