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こども理解と観察 大久保 秀子(編著) - ななみ書房
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こども理解と観察 親子観察を通して創造的実践力を育てる授業の試み

発行:ななみ書房
B5判
144ページ
並製
定価 2,500円+税
ISBN
978-4-903355-72-6
Cコード
C3037
専門 単行本 教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年7月
書店発売日
登録日
2018年6月3日
最終更新日
2018年7月11日
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紹介

「子ども理解と観察」は,大学と地域が緊密な連携のもとで創ってきた新しい授業の場である。複雑化する時代に求められる「子どもの健やかな成長」と「保育者養成のあり方」に一石を投じる一つの思考的モデルと言える。講義・体験学習・フィールド実習を一体化させ統合することで,こどもを理解することの基礎知識と技能・態度を学習させようとするものである。その要となる「親子観察」を中心とする体験的学びの意図は,表層的でなく深い子ども理解,自己理解,人間理解ををめざすところにある。

目次

第1章 「こども理解と観察」序論
1 「こども理解」のパースペクティブ
 1 「こども理解」を理解するために
 2 「こども理解と観察」の意義
 3 「こども」をどうとらえるか
 4 「こども理解」に必要な地域社会との関わり
 5 「こども理解」へのパースペクティブ
2 「こどもを理解する」ということ
 1 こどもを総合的に理解する
 2 育ちゆくこころと「わたし」のはじまり
 3 保育・幼児教育の原点
 4 こども理解と自己理解
3 「こども理解と観察」 -授業の特徴と3つの柱-
4 「こども理解」と親子観察
 1 なぜ,親子観察か
 2 親子観察の方法 -乳幼児観察の先行研究に学ぶ-
5 親子観察を中核に据えた授業の構造化 -教育効果をあげるためのプログラム体系-
6 親子観察の目指すもの -創造的実践力を培う-
 1 専門職としての感性を磨く
 2 感情に焦点をあわせ自分のこころに向き合う -共感性に向けて-
 3 命への慈しみや尊厳のこころを培う
 4 自らの発達史をふり返り親子関係を再統合する
 5 自分自身の将来像を確かなものにする
 6 自ら考え主体的にかかわる力をつける
 7 セルフ・エスティームを高める
 8 観察を通して人間理解を深める
7 体験授業を効果的にすすめる
 1 主体的な学びを促進する「学習サイクル」
 2 グループ学習とファシリテーターの役割

第2章 乳幼児期のこども理解を深める
1 「わたしらしさ」の形成と発達
2 乳幼児期のこころの課題
 1 人や外界への信頼感を育む
 2 愛着と「わたしらしさ」の発達
3 「わたしらしさ」の特徴は赤ちゃんの時からある
 1「わたしらしさ」とパーソナリティ
 2 生まれながらの行動特性 -気質-
 3 保育・教育のなかでどう活かすか
4 「わたし」のはじまり -乳幼児期の分離-個体化過程-
 1 こどもの「こころ」の育ち
 2 こころの誕生
5  「わたしらしさ」の確立へ -自我発達と個体発達の分化-
 1 自我と自己
 2 学童期の心理社会的課題 -学ぶ・遊ぶ・マスターする-
 3 思春期の心理社会的課題 -性のめざめ・ひたむきな自己中心性・あたらしい自分との出会い-
 4 青年期の心理社会的課題 -本当の自分・社会的役割・「わたしらしさ」探し-
6 成人期のこころの課題 -「わたしらしさ」の統合へ-
 1 「わたし」と他者と親密になること
 2 成熟することと「わたし」の再確立
 3 「わたしらしさ」の統合

第3章 「こども理解と観察」の実際
1 「こども理解と観察」の基本構造 -親子観察を中心に据えたプログラム-
2 体験授業の構成
 1 親子観察演習
 2 スタジオ観察
 3 体験授業の準備
3 こども理解を支える観察と記録
 1 観察の意義と目的
 2 観察方法と視点
 3 関与観察と非関与観察
 4 記録方法と視点
 5 肉眼による観察とビデオ観察
4 観察を支える親子の発達理解
 1 乳児期の発達を理解する
 2 親の発達を理解する
 3 家族の発達を理解する
5 体験授業の進め方
 1 事前学習
 2 親子観察演習
 3 スタジオ観察
 4 事後学習
 5 ありがとうの会
6 フィールド実習の進め方
 1 親子のひろば「ぽっけ」におけるフィールド実習
 2 「ぽっけ実習」および自主参加による体験学習
 3 「ぽっけ実習」の記録事例
 4 「ぽっけ」で育ちあう学生と親子
7 評価方法
 1 評価規準のとり方
 2 自己評価をする
 3 総合的に評価をする
 4 創造的に学びを高める授業の評価
8 体験授業から得られるもの
 1 学生にとっての体験授業の意味
 2 親子にとっての体験授業の意味
 3 1年間の授業のふり返りから

第4章 展望と課題 -「こども理解と観察」から地域社会の創造へー
1 「こども理解と観察」の授業展開の特質
 1 本当に赤ちゃんがくる
 2 講義・演習・実習の有機的な組み合わせによる授業展開
 3 地域社会に開かれた大学づくり
2 保育者・教育者養成の基軸としての「人間理解」
 1 「こども理解と観察」から自己理解を経て人間理解へ
 2 保育者・教育者養成と「人間理解」
 3 地域社会の創造者を育てる
3 取組みの広がりを求めて

資 料
1 「こども理解」体験授業についてのアンケート(保護者へのアンケート)
2 「こども理解と観察」アンケート(受講学生へのアンケート)
3 体験授業の記録シート
4 自分史の作成シート
5 「ぽっけ」の果実を育てよう

前書きなど

 大人はだれでも次の時代を担うこどもたちが健やかに育ってほしいと願っている。しかし臨床の場からみると,こどもをめぐる社会環境の急激な変化のなかで虐待やいじめ,犯罪,災害,貧困等々,社会的要因によって安心・安全を脅かされ,不安定な状況におかれるこどもたちが増えつづけている。一方でICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などはより進化,広範化してきており,こどもたちの周りにはさまざまなネットコミュニケーション・ツールが浸透し,人と人とのつながり方に大きな影響を与えている。これからの社会はこれまで以上に早いテンポで複雑化,多様化していくことだろう。どんな状況になっても,こどもたちが生きるよろこびを失わず,たくましく未来を拓いていく力を培っていくために,私たち大人はどんな援助ができるのだろうか。確かなことは人間の根幹がつくられる乳幼児期に関わる保育者・教育者の役割がいっそう重要になること,そしてより弾力のある創造的な実践力が求められることであろう。
 「こども理解と観察」は浦和大学が地域と緊密な連携のもとで創ってきた新しいかたちの授業科目である。2007年に開講して以来,学内外の多くの方々の協力によって保育・福祉・幼児教育を志す学生たちの初年次教育の学修形態として定着してきた。そこで10年以上に亘って模索しつつ実践してきた蓄積を省察しまとめることによって,時代の要請にこたえて変容しつつある保育者・教育者養成教育のあり方について,その取り組みへの一つの試行的モデルとしたい。
 「こども理解と観察」は,講義・体験授業・フィールド実習という3つの学修を一体化,統合させた通年の演習科目で,こども理解に関する基礎知識・技能・態度を培うことを授業目標としているが,広い意味の人間教育を目的としている。この3者をつなぐ要にあるのが「親子観察」である。少人数制をとったクラスに1組の乳児親子との交流体験を年間スケジュールに体系的に組み込み,理論的学びを実感をもって理解できるように独自の「学習サイクル」を用いている。単なる表層的な親子観察ではなく,人間の一生を視野に入れて学びながら真にこどもを理解し,自己理解,人間理解を深めていくことをめざしている。
 この授業では「こども理解」の基本として大切にしている点が3つある。
 1つは,広く包括的な観点にたった「こども観」をもつこと。発達途上にある一人の人間として,また個の発達に影響を与える社会・経済・文化…など生態学的な環境を視野に入れてこどもを総合的に理解する。2つ目は,正しく観察する目を養うこと。保育・教育という臨床の場での観察とは,外的な表現(行動や表情など)を「観て」その内にある心を「察する」行為である。観る・観られる双方が主体者であり,その関係の中で理解しようとすることで内面の表現にふれることができる。そして相手と同時に自らを観察する目を養うことで先入観にとらわれない正しい観察力をみにつける。3つ目は,自己理解を深め,自分自身を磨くこと。一人ひとりのその子らしい「わたし」を創っていくプロセスに寄り添う保育者・教育者として,こどもと共に「わたし」を創っている自らのこころに真摯に向き合い,自己理解を通じて人間理解を深める。
 本書の構成内容について簡単に述べておきたいとおもう。
 第1章は,「こども理解と観察」が専門職養成にあたってなぜ必要だと考えるのか,どのような意義があるのか,どのような授業構造や内容なのか等,この授業の全体像を理解していただくための総論である。第2章は,講義の主たる内容をとりあげている理論編である。「乳幼児期のこども理解を深める」というテーマを軸に発達の視点を自我発達におき,「わたしらしさ」の萌芽から確立にいたる成人期までを視野にいれて,こどもの心の育ちへの理解を深めていく。第3章は実践編で,授業全体の構成内容,授業展開の方法など,実際の進め方について紹介する。第4章は,本書の総括として「展望と課題」について考察する。
 本文で用いている「保育者」とは保育士・幼稚園教諭・保育や幼児教育に携わる支援者を,「養育者」とは親・保護者・彼らに代わる大人を著している。また「赤ちゃん」や「乳児」は1歳半から2歳頃までのこどもを対象にして,文脈によって適宜つかっている。
 また,共著者の一定の合意の後,各執筆者の責任において担当箇所を執筆している。
 「こども理解と観察」が多くの方々の目にふれ,保育者・教育者をめざす人びとにとってまた,さまざまな分野で対人的専門職の養成教育に関わる方々にとって,これからの活動や方向性を考えていく際に少しでも活用していただけることを願っている。
 この試行的取組について,いつの日か出版したいと考えてきたが,なかなかその機会を得られなかった。ななみ書房の長渡晃社長にご理解と貴重なご助言をいただくことができ,こうして世に問う機会を得られたことは心からありがたく,編著者として厚く御礼申し上げる次第である。また,長渡社長との出会いへとご紹介の労をお取り下さった,寺脇隆夫元浦和大学教授ならびに松本園子元白梅学園大学教授には,敬意と緊張を感じながら執筆したことを以て心からの感謝を表したい。
 本書をお読みいただければ,この授業が,多くの方々の力の結集であることをご理解いただけると思う。巻末に主な方々のお名前を掲載すると共に,掲載しきれない多数の皆様のお力添えがあったことをここに記し,深謝申し上げたい。

上記内容は本書刊行時のものです。