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荷を引く獣たち
動物の解放と障害者の解放
原書: Beasts of Burden : Animal and Disability Liberation
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年9月10日
- 書店発売日
- 2020年9月10日
- 登録日
- 2020年8月2日
- 最終更新日
- 2024年8月1日
受賞情報
本書は、アメリカン・ブック・アワード(2018年度)受賞作品の全訳です。
書評掲載情報
2021-10-09 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 森岡正博(早稲田大学教授) |
2020-12-26 |
朝日新聞
朝刊 評者: 温又柔(小説家) |
2020-10-24 |
朝日新聞
朝刊 評者: 温又柔(小説家) |
2020-10-03 |
毎日新聞
朝刊 評者: 伊藤亜紗(美学者) |
2020-10-03 |
毎日新聞
朝刊 評者: 伊藤亜紗(美学者) |
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紹介
動物の解放と障害者の解放の、深くて大切な結びつき。
アメリカン・ブック・アワード(2018年度)受賞作品!
スナウラ・テイラーは、一人の障害当事者として、障害者運動と動物の権利運動の担い手として、そして一人の芸術家として、読者に問いかける。もし動物と障害者の抑圧がもつれあっているのなら、もし健常者を中心とする制度と人間を中心とする倫理とがつながっているのなら、解放への道のりもまた、交差しているのではないか、と。
彼女は考えつづける。デモに参加しながら、絵を描きながら、対話しながら、食べながら。いったい何が、動物たちから人間を、障害者ではない人たちから障害者を、区別しているのだろうか、と。
彼女は考えつづける。身体的・精神的な能力の有無や高低(世界の中でどのように動いたり、動けなかったりするか)を基準にして、私たちは、自分を「人間」として意識し、他なる者を「動物」として値踏みしてしまっているのではないか、と。「人間」としての自分という自負を保つために、私たちは、「動物」との違いを際立たせることに、どれほど血道をあげているのだろうか、と。
この『荷を引く獣たち』には、「障害」と「動物」という、これまで対立すると見なされてきた問題が、実際には深く結びついているということが、テイラー自身の体験にもとづいて、丁寧に書かれている。
そのうえで彼女は、もっと風通しのよい、ゆたかな経験と共感にくつろぐ未来を、読者に語りかける。目前の世界の姿を、荷車や車椅子の輪のように、ぐるりと回転させ、しなやかに変えてみせるのである。おおらかに、エレガントに。
壊れやすく、依存的なわたしたち動物は、ぎこちなく、不完全に、互いに互いの世話をみる。本書は、そのような未来への招待状である。
目次
プロローグ 鶏〔にわとり〕が積まれたトラック
Ⅰ いくつかの閃き〔ひらめき〕
1 奇妙だけれどほんとうの
2 障害とは何か?
3 動物の不具〔かたわ〕たち
Ⅱ 動物倫理を不具〔かたわ〕にする
4 話すことのできたチンパンジー
5 健常者中心主義と動物
6 動物とは何か?
7 憶えていたチンパンジー
Ⅲ わたしは動物だ
8 猿みたいに歩く子
9 動物侮辱〔ぶじょく〕
10 動物を主張する
Ⅳ すべて自然だ
11 生まれながらのフリーク
12 あらゆる動物は平等だ(だがもっと平等な動物もいる)
13 新たな団欒〔だんらん〕に向けて
14 肉の浪漫〔ロマン〕化
15 肉という天災
Ⅴ 相互依存
16 必要の衝突
17 種〔しゅ〕と能力を超えるケア
18 サービス・ドッグ
謝辞/ 註/ 訳者あとがき/ 索引
前書きなど
「プロローグ 鶏〔にわとり〕が積まれたトラック」〔16-17ページ〕より
一年間見つめ、想いを馳〔は〕せていたあれら一〇〇あまりの鶏たちは、本書のページを繰〔く〕らせるさまざまな問いを書くよう、わたしを奮〔ふる〕い立たせてくれた。すなわち――どうやって動物はモノになるのか? どうやってわたしたちは、このモノ化を正常なことだと考えるよう教えこまれるのか? 動物を、モノとは異なった仕方で見るようになるには、障害について考えることが、どんなふうに助けになるのか?
トラックに詰め込まれた雌鶏〔めんどり〕たちを目にして、わたしは息を殺した――はじめて息を殺したときの、この原初の感情が導きとなって、少しずつわたしは、動物の問題は他の社会正義の問題と深く関係しており、不可分ですらあるということを理解するようになった。ここには、障害の問題も含まれるのだ。でも、あの食肉処理工場で雌鶏たちの写真を撮ろうとしていた当時、もし誰かがわたしに、これからの六年間、わたしが動物に対する抑圧を障害学とアクティヴィズムのレンズを通して考えるようになるだろうと語ったなら、わたしは突拍子〔とっぴょうし〕もないことを言うものだと思っただろう。けれども目を凝〔こ〕らせば凝らすほど、障害化された身体は、動物を利用した産業のいたるところに存在するということに、そして動物の身体は、こんにちのアメリカにおける障害をもった心身の抑圧のされ方と、不可分の関係にあるということに、気づかずにはいられないのである。ある考えが閃〔ひらめ〕いた――もし動物と障害の抑圧がもつれあっているのならば、解放への道のりもまた、結びついているのではないか?
版元から一言
本書『荷を引く獣たち――動物の解放と障害者の解放』は、アメリカン・ブック・アワード(2018年度)受賞作品の全訳です。推薦文を下記に記します。
● レベッカ・ソルニット(『説教したがる男たち』、『災害ユートピア』などの著者)
「スナウラ・テイラーは、あなたが生きる世界をぐるりと裏返し、身に染みた常識を揺さぶり、そして、残酷な体制下での、あなた自身の身体について、また人間や非人間の他なる身体について、あなたがまだ知らないたくさんの魅力的で大切なことを教えてくれます。人間のありようにかんする、読みやすくて驚くべき、ときに愉快な、まったく新たな方向からの探求として、この本は、とても、とても重要です。」
●「The New Yorker」誌の記事
「ジュディス・バトラーは、アッシジの聖フランチェスコに出会う。」
● アリソン・カファー(『Feminist, Queer, Crip』の著者)
「私は、この本を読む前の私とは、同じ動物ではありません。」
● キャロル・J・アダムズ(『肉食という性の政治学:フェミニズム - ベジタリアニズム批評』の著者)
「スナウラ・テイラーは、素晴らしい本を書き上げました。この本は、障害と動物をめぐる常識への処方箋、そして、私たちが自分自身をあらためてイメージしてみることへの招待状、この両方の役割を見事に果たしています。掛け値なしに独創的で華麗な彼女の語り口は、私の想像力を一変させました。」
● マイケル・ベルベ(『Life as We Know It』『The Secret Life of Stories』の著者)
「ついに、やっと、ピーター・シンガーがやらかしたダメージを修復しようとする者が現われた。『荷を引く獣たち』は、果敢で鮮烈な作品です。」
● クレア・ジーン・キム(『Dangerous Crossings』の著者)
「深甚で、しかも驚異的な書物です。正常なものとは何か? 自然なものとは何か? 生命の価値をどのように天秤にかけるのか? そして差異と多様性に輝く人間と動物たちが共に繁栄する世界をいかに想像するか? スナウラ・テイラーは、これらの問いを再考するよう、私たちに呼びかけているのです。」
● マーク・ベコフ(『動物の命は人間より軽いのか』、『動物たちの心の科学』などの著者)
「この『荷を引く獣たち』は、ゲーム・チェンジャーだ。」
● ローリー・グルーエン(『動物倫理入門』の著者)
「ときに痛烈、ときに愉快、ときに身のうえ話、ときに鋭く情熱的、そんな文章のかずかずが、力強くブレンドされています。」
上記内容は本書刊行時のものです。