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諏訪之瀬島火山―火山研究のミッション
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2026年3月31日
- 書店発売日
- 2026年4月7日
- 登録日
- 2026年1月10日
- 最終更新日
- 2026年4月7日
目次
はじめに
Ⅰ 概要―沈み込み帯とトカラ列島、そして諏訪之瀬島火山―
コラム1 マニアックこそ王道?―火山灰モニタリング研究への端緒―
Ⅱ 現在の諏訪之瀬島の噴火活動
火山地質学① 地質学の基本法則―「地層累重の法則」
Ⅲ 火山灰とは?―ミクロの世界の解読で噴火のダイナミックスを理解…
火山地質学② 噴火推移の復元
Ⅳ 噴火推移のケーススタディ―文化の噴火―
火山地質学③ 地質学の基本―「降下・重力流の識別」
コラム2 諏訪之瀬島野外調査―30年前の大学生事情
Ⅴ プロキシマル火山地質学の実践
Ⅵ 火口の変遷と山体崩壊
火山物質科学① マグマの脱ガス過程
Ⅶ 明治溶岩とマグマの性質
火山物質科学② マグマの物性
Ⅷ 富立岳の白水の滝:九州一の滝
コラム3 30年前の島の思い出
Ⅸ 調査船による海域調査
Ⅹ 火山学と防災―火山は災害も多様―
Ⅺ 火山地質学への心構え 王道は王道!―フィールド調査の取り組み方
前書きなど
はじめに
トカラ列島の諏訪之瀬島は、世界でも有数の活動的火山です。長年にわたって噴火活動を続けているのですが、あまり一般には知られていません。しかし、最近、諏訪之瀬島における噴火による災害とそこからの人命救助を題材にした邦画作品が公開されました。また、トカラ列島では火山性と思われる群発地震の活動が活発化しており、もしかしたら今後、ちょっとだけ名前が知られるようになり、この地域の地球科学的な理解が少しでも前進するとよいと思っています。一方で、むやみに火山噴火を恐怖れる人も増えるのではという心配もあります。火山には、時として牙をむく側面もありますが、平時は温泉や豊かな自然などの恵みを与えてくれる側面もあります。日常的に火を噴く諏訪之瀬島は、こうした火山の両側面を見せてくれる貴重な存在ともいえます。まだまだ研究で分かっていることは少ないですが、ぜひ、両側からの景色を見てほしいと思い、本書を著すことにしました。
さて、九州には今も噴火を日常的に目撃できる活発な火山がいくつもあります。阿蘇あるいは桜島でも、しばらくじっと噴火を眺めていると、すぐに、すべての噴火はその時限りのもので、似ていても全く同じ噴火は二度と起こらないことに気づきます。噴煙の色、形、高さ、たなびく方向など、さまざまです。こうした多様な側面を持つ理由は、噴出物に含まれる火山灰の性質、温度、量、火孔の形状、気象条件などが時々刻々と変化するためだと考えられます。では、どのような仕組みでこうした現象の違いがでるのでしょうか? 現状、さまざまなアイデア(仮説)が挙がっていますが、まだ、確固たる理解に達しているわけではありません。いずれにしても、こうした多様で複雑な火山噴火のメカニズムの理解には、ひとつひとつ仮説を立てつつ、繰り返し観測を行って、仮説の検証を行えた方が望ましい。残念ながらなかなかそういう火山はありませんが、諏訪之瀬島では何十年も頻繁に噴火を繰り返していますので、そうした研究に非常に適しています。しかも、山頂からは火孔を見下ろすことができ、火山活動も小規模なので、火口近傍での活動観測が比較的安全に行えるという点でも適しています。
一方、諏訪之瀬島火山は、これまでの長い歴史で幾度も大きな噴火を繰り返してきました。この島は有人島ながらさほど大きくなく、人口も少なく、人の手もあまり入っていません。そのおかげで調査や観測には、毎度、苦労しますが、さまざまな火山現象による地形・堆積物が手つかずのまま残されており、火山地質学について学ぶことができる貴重な火山です。本書では、諏訪之瀬島火山での噴火現象や噴出物・堆積物について紹介・解説しながら、フィールドワークを基盤とした火山地質学研究の魅力を知ってもらうために書きました。これを読んで、少しでも多くの若者が諏訪之瀬島を訪れ、地質学や火山学に関わってもらえたらそれにまさる喜びはありません。(ただし、諏訪之瀬島火山の火口周辺には規制があり、無断での一般の立ち入りは禁止されています。安全対策を十分行って、許可された範囲のみ立ち入るようにしてください。なお,一般的な火山地質学の入門書としては遠藤・小林(2012)、諏訪之瀬島の活動については青木(2005)を見てください.)
上記内容は本書刊行時のものです。
