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シマで戦争を考える 兼城 糸絵(著) - 北斗書房
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シマで戦争を考える (シマ)

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発行:北斗書房
A5判
価格 800円+税
ISBN
978-4-89290-069-3   COPY
ISBN 13
9784892900693   COPY
ISBN 10h
4-89290-069-9   COPY
ISBN 10
4892900699   COPY
出版者記号
89290   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
書店発売日
登録日
2023年11月27日
最終更新日
2024年4月10日
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目次

● 目 次 ●

シマで戦争を考える

Ⅰ はじめに
Ⅱ 奄美群島の戦争遺跡を訪ねる
 1 戦争遺跡とは
2 鹿児島県の戦争遺跡
3 大学生と考える奄美群島の戦争
4 フィールドに残る戦争の記憶
5 戦争を体験していないわたしたちができること
Ⅲ シマの戦争を聞く
 1 戦争体験をいかに記録するのか
2 文化人類学・考古学ゼミの合同フィールドワーク
3 ケーススタディその1:奄美大島(龍郷町)
4 ケーススタディ2:徳之島(天城町・伊仙町)
5 シマの戦争を考える
Ⅳ ふるさとの戦争の記憶を未来へ
 1 戦争をめぐる語り
2 喜界島と第二次世界大戦
3 野間昭夫さんへのインタビュー
4 依田茉奈美さんへのインタビュー
5 野間さんと依田さんの想いの交差
6 ふるさとの戦争の記憶を未来へつなぐために

Ⅴ おわりに

前書きなど

はじめに     
     兼城糸絵

 本書は、奄美群島の戦争遺跡を題材にシマ(注1)の戦争の記憶をいかに記録し後世へ伝えていくのかという問題について考古学・文化人類学・歴史学の立場から検討したものです。では、なぜ奄美群島の戦争遺跡を取り上げるのか、ここではその背景を説明していきます。
奄美群島とは、鹿児島県と沖縄県の間に位置する島々のうち、奄美大島、喜界島、加計呂麻島、与路島、請島、徳之島、沖永良部島、与論島を指します。これら群島全体では現在約一二万人の人々が暮らしています。中でも一番大きな奄美大島には約五万七〇〇〇人が暮らしています。奄美群島について近年最も話題になったことといえば、ユネスコの世界自然遺産登録(二〇二一年)ではないでしょうか。奄美群島には世界的にも貴重な生物多様性がみられる地域であるとのことから、奄美大島と徳之島が沖縄島北部および西表島とともに世界自然遺産として登録されました。奄美群島は今や自然豊かな美しい島々として国内外に知られるようになり、島を訪れる観光客も増加しています。
そのようなポジティブなイメージがある一方で―意外と知られていませんが―、奄美群島には戦争の痕跡が至るところに残されています。奄美群島はかつて本土防衛という観点から、軍事的に重要な場所であるとみなされてきました。そのため、明治から昭和にかけて、旧日本軍の司令部や監視所、弾薬庫、砲台、そして飛行場などといった軍事施設が数多くつくられてきました。これらの軍事施設は森の中のような目立たない場所につくられることが多かったのですが、人々が暮らす集落の近くにつくられることもありました。
では、これらの軍事施設はその後どのような運命を辿ったのでしょうか。通常であれば、軍事施設の多くはその役割を失うと壊されたり、別の施設に転用されたりします。しかし、奄美群島の場合、いくつかの要因により破壊を免れたこともあり、数多くの旧軍事施設が比較的良好な状態で残されています。現在、それらの一部は戦争遺跡として整備され、観光客が見学できるようになっています。
その一方で、それらの戦争遺跡は長らく「放置」されてきたこともあって、地域社会との関係について十分に検討されてきたとは言い難い状況にあります。無論、軍事施設は基本的に機密事項を多く抱えていたことから、民間人が軽々しく立ち入ることができなかったと思われます。しかし、当時の状況を踏まえると、軍の関係者だけで施設の建設が行われたとは考えにくく、何らかのかたちで島の人々も関わっていたことが予想されます。
 本書の執筆者は、そもそも奄美の人々が体験した戦争とはいかなるものだったか、そして奄美の人々と戦争遺跡との関係がどのようなものだったのかという問題意識のもと、二〇一九年から共同研究を行っています。本書にはその成果の一部が収められています。
 戦争がすでに過去のものになって久しい現在、戦争の記憶の継承・活用は社会的にも喫緊の課題となっています。このような課題に対し、戦争遺跡は地域社会における戦争の記憶を伝えるメディアとして一定の役割を担ってきました。たしかに、戦争遺跡はそれぞれの地域において固有のものであり、地域の戦争を語る上で欠かせない存在であると位置付けることもできます。しかし、戦争遺跡はあくまで「遺跡」(モノ)であるため、それ自体が自らの過去について語り出すことはありません。そのため、メディアとしての戦争遺跡は「あくまで不特定多数の来訪者に向けて、過去の記憶や体験を象徴的に物語るものであるだけに、しばしば見る者の多様な解釈を可能」(福間 二〇一五:二四六)にしてきました。そうであるがゆえに、戦争遺跡はともすれば地域の記憶とは乖離したイデオロギーをもつ存在になっていくことすらありえます。適切なかたちで記憶を継承するためには、まず何が〈ここ〉で起きていたのかを把握し、それを後世に伝えていくためのストーリーを適切なかたちで構築していく必要があるといえます。
本書の執筆者は、地域社会の戦争の記憶を検討するにあたって、まずは地域社会で起きた出来事を複数の位相から把握する必要があると考えています。本書ではその第一歩として、考古学・文化人類学・歴史学という三つの位相から戦争遺跡と地域社会の関係について検討しています。特に、戦中・戦後を通して生活圏内に存在し続けた戦争遺跡が現在どのような状態におかれているのか(考古学)、そして戦時下において人々の暮らしと戦争がいかなる関係にあったか(文化人類学)、そして、戦争の記憶をいかに位置づけ後世へ継承していくことができるのか(歴史学)という観点から奄美群島の戦争遺跡についてそれぞれの立場から論じます。
なお、「戦争遺跡」という言葉は「近代以降の戦争に関連して形成された遺跡」を指す場合と、それに加えて「戦争に関連する慰霊碑や記念碑などのモニュメント群」などを含めて使われている場合があります。分野によってその取り扱いに幅があることから、本書ではあえて「戦争遺跡」という言葉の意味を統一せず、各章の執筆者の裁量に委ねることにします。

著者プロフィール

兼城 糸絵  (カネシロ イトエ)  (

[略歴]
1982年沖縄県生まれ。東北大学大学院環境科学研究科博士後期3年の課程単位取得退学。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員(DC2)を経て、2013年より鹿児島大学法文学部にて研究・教育を担当。鹿児島大学学術研究院法文教育学域法文学系准教授。専門は文化人類学、地域研究。

[主要著書]
『日本で学ぶ文化人類学』(昭和堂、2021年、共編著)、「奄美大島における共同納骨堂に関する一考察―宇検村の事例を中心に―」、渡辺芳郎(編著)『奄美群島の歴史・文化・社会的多様性』南方新社、118-133頁、2020年など。

石田 智子  (イシダトモコ)  (著/文

[略歴]
 1981年福岡県生まれ。九州大学大学院比較社会文化学府日本社会文化専攻博士後期課程単位取得退学、博士(比較社会文化)。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015年より鹿児島大学法文学部にて研究・教育を担当。鹿児島大学学術研究院法文教育学域法文学系准教授。専門は考古学。

[主要著書]
「鹿児島県における弥生時代研究の課題と展望」(『鹿児島考古』50、2021年)、「デジタルコンテンツを活用した戦争遺跡体験」(『人文学科論集』89、2022年)など。

佐藤 宏之  (サトウヒロユキ)  (著/文

[略歴]
 1975年新潟県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(社会学)。2010年10月より鹿児島大学教育学部にて研究・教育を担当。鹿児島大学学術研究院法文教育学域教育学系准教授。専門は近世日本史。

[主要著書]
 『近世大名の権力編成と家意識』(吉川弘文館、2010年)、『自然災害と共に生きる 近世種子島の気候変動と地域社会』(北斗書房、2017年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。