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周縁の文学
ベルギーのフランス語文学にみるナショナリズムの変遷
- 出版社在庫情報
- 在庫僅少
- 初版年月日
- 2007年2月
- 書店発売日
- 2007年2月28日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2023年2月15日
紹介
フランスとドイツの間に位置する小国ベルギー。文化的中心地・フランスへの憧れ/反発を常にかかえるこの国は、他国家と共有する3つの公用語(フランス語、オランダ語、ドイツ語)をもつこともあいまって、陰翳に富んだ独特なナショナリズム、及びそれと切り離せない文学とを生み出してきた──ベルギーにおけるフランス語文学の系譜をたどりつつ、文学と国家/言語と国家/文学と言語の関わりを剔抉する、意欲的論考。
目次
序章 国家と文学─ベルギーの場合─
はじめに 「他者の言語」を生きること
第一節 ベルギーの言語について
第二節 フランス語による「ベルギー文学」の定義
第一章 ベルギーにおけるロマン主義運動─想像の〈国民文化〉形成─
はじめに 独立と「ロマン主義」
第一節 革命と「フランス」の幻影
第二節 フランス・ロマン主義の受容=自由主義
第三節 出版資本主義 海賊版 contre-faon 論争をめぐって
第四節 〈ロマン主義型ナショナリズム〉と雑誌文化
第五節 ナショナリズムとゲルマン性
第六節 フランス的「文明」の幻想とドイツ的「文化」の現実
第二章 シャルル・ド・コステルとベルギー国民神話の誕生
はじめに ベルギーの「国民文学」作家
第一節 『フランドル伝説』
「伝説」の起源─フランドル的なるもの=民族的アイデンティティを求めて─
言語の問題─テクストのひずみと中心の不在─
「周縁」の創造性
第二節 『ウーレンシュピーゲル伝説』
意図された民族主義文学
テクストにおける時間・空間の解体
テクストの普遍化と神話的記号としての『ウーレンシュピーゲル伝説』
第三章 「ベルギー文芸ルネサンス」と文芸雑誌の役割─世紀末三大雑誌と象徴主義─
第一節 文芸雑誌の変遷─周縁文化の越境─
小国における文学・芸術雑誌の役割
文芸雑誌の変遷
新たな「境界」とその越境へ向けて
第二節 「若きベルギー派」のめざしたもの─ブリュッセルにおけるコスモポリタニズム─
「我々らしく Soyons nous」(1881-1882)
「恐れることなく Ne crains」(1882-1889)
象徴派との確執
『若きベルギー』の終焉
第三節 『ワロニー』誌にみるベルギー象徴派のコスモポリタニズムと地域主義
象徴派雑誌としての『ワロニー』誌
『ワロニー』誌の地域主義と限界
「中心」へ
第四節 『現代芸術』とベルギー文芸ルネサンス
『現代芸術』と「社会芸術」
「若きベルギー派」との闘い
『現代芸術』とナショナリズム、権威主義
境界の文学、沈黙の文学へ向けて
第四章 「ベルギー象徴派」の民族性と国際性
第一節 メーテルランク『ペレアスとメリザンド─ドビュッシーによる〈女中たち〉の削除をめぐって─
〈女中たち〉の構造的意味
異界 l'autre monde、水の精としての〈女中たち〉
〈女中たち〉とゲルマン伝説
メーテルランクにおける民族精神
第二節 『ペレアスとメリザンド』における〈メリザンドの歌〉の変更をめぐって
二つの〈メリザンドの歌〉
〈メリザンドの歌〉の変遷
〈メリザンドの歌〉と『一五の歌集』
『ペレアスとメリザンド』の根源的民族世界
第三節 ローデンバック『死都ブリュージュ』における民族性の問題
パリの読者へ
テクストの時間構成について
空間構成と事物主義
沈黙の美学
風景写真と都市の影
都市の支配と他者の侵入
「ベルギー文学」としての『死都』
第五章 世紀末ベルギーの植民地主義と文学テクスト
はじめに 〈我々〉と〈彼ら〉
第一節 三つのベルギー「植民地文学」と帝国主義
『フレム - オゾ』のヨーロッパ主義
『コンゴにて』とベルギー大国意識
『ジム』と異質なるもの
第二節 コンラッド『闇の奥』と不在の都市ブリュッセル
第三節 「植民地文学」とベルギーのアイデンティティ
終章 ベルギー・ナショナリズムと「ベルギー文学」の可能性を問う
はじめに ベルギー独立一七五周年
第一節 ナショナリズム概念とベルギー文学
第二節 ベルギー文学のその後─二〇世紀の諸制度─
第三節 現在のベルギー文学の位置
第四節 ベルギーそしてベルギー文学のこれから
上記内容は本書刊行時のものです。