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多言語が織りなす中央アジア 小田桐 奈美(編著) - 関西大学出版部
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多言語が織りなす中央アジア (タゲンゴガオリナスチュウオウアジア) 越境することば・交錯するアイデンティティ (エッキョウスルコトバ コウサクスルアイデンティティ)

語学・辞事典
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A5判 左開き
296ページ
定価 2,800 円+税   3,080 円(税込)
ISBN
978-4-87354-814-2   COPY
ISBN 13
9784873548142   COPY
ISBN 10h
4-87354-814-4   COPY
ISBN 10
4873548144   COPY
出版者記号
87354   COPY
Cコード
C3087  
3:専門 0:単行本 87:各国語
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2026年3月25日
発売予定日
登録日
2026年3月4日
最終更新日
2026年3月4日
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紹介

現代中央アジア5カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス共和国、タジキスタン、トルクメニスタン)は、歴史的に多様な民族と言語が交錯してきた多民族・多言語地域である。チュルク系言語、イラン系言語に加え、ロシア語や様々なマイノリティ言語が併存する中、人々は自分たちなりの方法で多言語状況と向き合い、豊かな言語実践を育んできた。本書は、こうした多言語社会としての中央アジアに着目し、その実像に迫るものである。
多言語状況は文化的な豊かさをもたらす一方で、国民統合やアイデンティティなどに関わる困難な課題も孕んでいる。ソ連崩壊後、中央アジア諸国は新生国家の建設の一環として言語政策を模索してきたが、とりわけロシア語の位置づけは、2022年以降の国際情勢の変化を受け、学術的・社会的に一層重要な論点となっている。
本書は、言語を通して国家と社会を考えるための一冊である。2023年3月に行われた日本中央アジア学会の公開パネルを基に、内容を大幅に発展させて書籍化した。中央アジアにおける国家語政策、文字改革、少数民族の母語教育、コード・スイッチング、言語とアイデンティティ、国際ビジネスにおける言語使用など、多角的なテーマを扱う。
本書の大きな特徴は、社会言語学にとどまらず、文化人類学、教育学、経済学といった多様な分野の視点を取り入れている点にある。執筆者はいずれも旧ソ連地域を継続的に研究してきた研究者であり、現地出身者を含む。現地(語)資料やフィールドワークの成果を最大限に活用することで、具体的な分析を提示している。
本書は学術書ではあるが、研究者だけでなく、中央アジアに関心を持つ一般の読者や、日本の大学・大学院で学ぶ学生にも開かれている。様々な背景や出自の人々が集い、コミュニティや職場の多様性が広がりつつある日本社会の将来を考える上でも、中央アジアの事例と経験は多くの示唆を与えてくれるだろう。

目次

まえがき
凡 例

第1部 現代中央アジアの言語政策
 第1章 キルギス語とロシア語は鳥の双翼か?
     キルギス共和国における公的な二言語主義のゆくえ
   1.はじめに
   2.なぜいま言語法に注目するのか
   3.国勢調査にみる言語状況
    3-1.民族別人口と調査票の概要
    3-2.母語
    3-3.第二言語
    3-4.キルギス語とロシア語の運用能力
    3-5.小括
   4.国家語と公用語に関する言語政策(1989~2023年)
    4-1.国家語の制定から公的な二言語主義の成立へ(1989~2004年)
    4-2.公用語の維持と国家語の優位の強化(2004~2023年)
    4-3.小括
   5.2023年国家語法
    5-1.背景と概要
    5-2.国家語の定義
    5-3.国家語と公用語が使用される領域に関する規定
    5-4.国家語習得義務の大幅な拡大
    5-5.言語政策における言語的側面の重視
    5-6.言語政策関連機関の権限の明確化
    5-7.新国家語法への反応
    5-8.小括
   6.おわりに

 第2章 統合と多様性のジレンマ
     タジキスタンにおける言語政策と言語的マイノリティの現在
   1.はじめに
   2.理論的背景と分析の視点
    2-1.言語政策をめぐる研究の理論的展開
    2-2.言語政策の多層性と複雑性
    2-3.言語権論の発展と言語政策への影響
    2-4.言語政策と社会的不平等
   3.タジキスタンの言語状況の歴史的変遷
    3-1.ソ連時代の言語政策とその影響
    3-2.独立後のタジク語重視の政策転換
    3-3.ロシア語の地位の変化
    3-4.マイノリティ言語の状況
   4.言語使用
    4-1.公的空間における言語使用
    4-2.教育現場での言語選択の問題
   5.マイノリティの言語をめぐる態度
    5-1.タジク人の母語意識とロシア語
    5-2.ウズベク人の言語シフトと言語維持
    5-3.言語権をめぐる問題
   6.考察:多言語社会における言語政策の諸相
    6-1.国家語とマイノリティ言語のバランス
    6-2.言語的ヒエラルキーと社会経済的不平等の関連
    6-3.「下からの」言語政策と言語管理
   7.おわりに

 第3章 カザフスタンにおける文字改革の迷走
   1.はじめに
   2.文字改革の社会・政治的背景
   3.カザフスタンの言語状況
   4.カザフ語の文字改革の経緯
    4-1.文字改革の歴史的背景
    4-2.独立後の文字改革の提言
    4-3.文字改革の本格化――2017~2018年
    4-4.文字改革の迷走は続く――2021年以降の動向
   5.カザフ語のラテン文字化をめぐる賛否両論
   6.おわりに

第2部 多言語社会のダイナミクス
 第4章 中央アジア諸国における少数民族の母語教育保障の利用と乱用
     カザフスタンに焦点を当てて
   1.はじめに
   2.理論的枠組みと本章の視点
   3.ソ連時代の言語教育政策における母語教育保障の理念と実態
   4.少数民族の母語教育保障にかかわる法規定の比較検討
    4-1.ウズベキスタン
    4-2.カザフスタン
    4-3.キルギス共和国
    4-4.タジキスタン
    4-5.トルクメニスタン
   5.カザフスタンにおける少数民族の母語教育保障の実態
    5-1.少数民族語を教授言語とする学校数の減少
    5-2.少数民族生徒に対する言語教育の負担増加
    5-3.政府による少数民族の母語教育保障の利用と乱用
   6.SDGsの達成に向けた多言語教育政策の課題
   7.おわりに

 第5章 『タタール人らしさ』の再定義
     ウズベキスタンのタタール人の言語選択にみるアイデンティティの交渉
   1.はじめに
   2.理論的背景と分析視点
    2-1.言語政策研究の視座
    2-2.言語とアイデンティティの関係性
    2-3.本研究の分析視点
   3.ウズベキスタンの言語状況
    3-1.歴史的背景と現在の言語状況
    3-2.マイノリティの言語をめぐる状況
   4.ウズベキスタンのタタール人の言語選択
    4-1.タタール人の歴史的背景
    4-2.家庭と学校における言語の選択
    4-3.公的領域と私的領域での言語使用
   5.言語政策がタタール人のアイデンティティに与える影響
    5-1.タタール語の地位低下とアイデンティティの揺らぎ
    5-2.ロシア語志向とウズベク語志向の狭間で
    5-3.言語を通じたアイデンティティ形成の模索
   6.考察
    6-1.言語選択における主体性と制約
    6-2.言語とアイデンティティの動態的関係
    6-3.世代間の言語シフトとアイデンティティ再構築
    6-4.先行研究との合致点と新たな発見
   7.おわりに

 第6章 Aralashはキルギス語への侮辱か?
     キルギス語とロシア語のコード・スイッチング現象をめぐって
   1.はじめに
   2.CSとは?
   3.中央アジアにおけるロシア語とのCSの歴史
   4.言語学的視点:CSのパターン・特徴
    4-1.ターンレベルおよび会話全体
    4-2.文内CS
    4-3.借用語をめぐって
   5.社会言語学的視点:CSの機能
    5-1.方向づけ機能
    5-2.表現機能
   6.誰がCSをするのか
   7.CSに対する態度
   8.おわりに

 第7章 ロシア語をめぐる「利益」と「矜恃」の葛藤
   ウズベキスタンにおける「ロシア語離れ」と「ロシア語頼り」の並進
   1.はじめに
   2.中央アジア諸国の言語政策に対する分析視角
    2-1.三つの制度配置
    2-2.ロシア語の国際競争力と機能性:プーシキン記念国立ロシア語大学
      「ロシア語世界地位指標」報告書の分析より
    2-3.ロシア語の商品化と市場規模
   3.2022年2月後のロシア語圏市場とウズベキスタン
   4.ロシア語/ロシア人をめぐる「利益」と「矜恃」
    4-1.ウズベキスタンのIT産業とレロカント
    4-2.ロシア語圏市場の実態
   5.結びに代えて:まだら模様の「ロシア語頼り」

付録1 中央アジア5カ国の基礎情報
付録2 ソ連政権の言語教育政策を支えた基本法・規定
付録3 中央アジア5カ国の憲法、言語法、教育法における国家語、
ロシア語、少数民族語の法的地位、母語教育の権利保障に関する法規定(抄訳)
付録4 キルギス共和国憲法的法律「キルギス共和国の国家語について」
    (2023年7月17日)
付録5 ウクライナにおける「ロシア語離れ」の証言

あとがき

索引

著者プロフィール

小田桐 奈美  (オダギリ ナミ)  (編著

関西大学外国語学部准教授、博士(言語学)。専門分野は社会言語学、中央アジア地域研究、ロシア語教育。主な著作に“Features of Echo Words in Kyrgyz” (co-authored, Aspects of Turkic Languages II: Information Structure and Knowledge Management, 2024)、「ロシア―多様な外国語教育の伝統と現代的課題」森住衛ほか編著『外国語教育は英語だけでいいのか―グローバル社会は多言語だ!』(共著、くろしお出版、2016年)、『ポスト・ソヴィエト時代の「国家語」』(関西大学出版部、2015年)など。

徳永 昌弘  (トクナガ マサヒロ)  (編著

関西大学商学部教授、博士(経済学)。専門分野は国際経済学、環境政策学、ロシアをはじめとする旧ソ連地域の国際経済関係の研究。主な著作に「国際貿易及び海外直接投資に対する社会的紐帯の誘引効果:中東欧・旧ソ連諸国の実証研究に関するメタ分析」(『経済研究』第72巻第1号、2021年)、“Japan’s Foreign Direct Investment in Russia: A Big Return from a Small Opportunity”(co-authored, Eurasian Geography and Economics, Vol. 61(3), 2020)、『20世紀ロシアの開発と環境』(北海道大学出版会、2013年)など。

タスタンベコワ クアニシ  (タスタンベコワ クアニシ)  (編著

筑波大学人間系准教授、博士(教育学)。専門分野は比較・国際教育学、中央アジア諸国の教育制度・政策、言語教育政策。主な著作に「ポスト・ソビエト諸国における言語教育政策―ロシア語教育をめぐるパワーポリティックス」(『比較教育学研究』第67号、2023年)、「多言語教育政策の現状と課題―母語教育保障、国民統合とグローバル化対応の葛藤」ロシア・ソビエト教育研究会編『現代ロシアの教育改革―伝統と革新の<光>を求めて』(東信堂、2021年)、「カザフスタンの少数民族教育政策に関する一考察―教育スタンダードにおける言語教育の比重の分析を通して」(『筑波教育学研究』第13号、2015年)など。

櫻間 瑞希  (サクラマ ミズキ)  (編著

大阪大学大学院人文学研究科言語文化学専攻講師、博士(社会科学)。専門分野は言語社会学、文化人類学、中央ユーラシア地域をはじめとするタタール・ディアスポラ研究。主な著作に「多中心的真正性の交渉―ウズベキスタンのタタール人コミュニティにおける言語・文化継承の動態」(『言語政策』第21号、2025年)、『ニューエクスプレスプラス タタール語』(共著、白水社、2022年)、『タタールスタンファンブック―ロシア最大のテュルク系ムスリム少数民族とその民族共和国』(共著、パブリブ、2017年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。