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教育が臆病になるとき、子どもは社会の残酷さに丸腰で放り出される 兵藤 友彦(著) - 学芸みらい社
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教育が臆病になるとき、子どもは社会の残酷さに丸腰で放り出される (キョウイクガオクビョウニナルトキ コドモハシャカイノザンコクサニマルゴシデホウリダサレル) 生き延びるための授業「リベラルアーツ国語」 (イキノビルタメノジュギョウ リベラルアーツコクゴ)

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四六判
縦188mm 横127mm
388ページ
並製
価格 3,000 円+税   3,300 円(税込)
ISBN
978-4-86757-108-8   COPY
ISBN 13
9784867571088   COPY
ISBN 10h
4-86757-108-3   COPY
ISBN 10
4867571083   COPY
出版者記号
86757   COPY
Cコード
C3037  
3:専門 0:単行本 37:教育
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2026年1月19日
最終更新日
2026年2月9日
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紹介

人を好きになること。それがこの授業の目的だ──。不登校、DV、オーバードーズ、自殺企図。貧困や家庭問題を抱え、過酷な現実の中で学校や社会からこぼれ落ちた生徒たちが集う定時制高校で「リベラルアーツ国語」は生まれた。この授業は、知識を教えない。教えるのは、「話す」「聞く」「間をつくる」という、生き延びるための身体の知恵と力だ。演劇レッスンを通して再び人とつながり、魂をしぶとくする授業の記録。教育が踏み込む勇気を失った時代に抗し、生き延びる力を育てる〈演劇×国語〉の挑戦。巻末に気鋭の哲学者との対談を収録。

目次

口絵──「リベラルアーツ国語」の光景
この本を手にしてくれたあなたへ ~長いまえがき~
【1学期】意識を他者に向ける 12の授業
1 安らぐレッスン 世界を感受せよ
【コラム】からだは意識に先行する────────[兵藤友彦]
2 極力ゆっくり歩く もっとからだを!
3 偏愛マップ合コン 好きなもの、書けるか?
4 並び替え まじめにやってみろ
【コラム】おせっかい、焼けるか?────────[兵藤友彦]
5 箸を挟んで立つ 他者の「気配」
【コラム】ひとりは怖い。でも他者も怖い。────────[兵藤友彦]
6 背中合わせで立つ 自分で立つ。でも、一緒に立つ。
【コラム】「意識を相手に向ける」ということ─────[甲村敬司]
7 倒れかけのレッスン 受け入れる
8 坂道のエチュード 人として接する/モノとして扱う
9 息合わせ 他者の発見
10 ロンド 間(ルビ:あいだ)を作る
11 指先のシンクロ ふたりになる歓び
【コラム】不思議で、生温かい気持ち────────[田窪まり]
12 シンクロンド 自由について
【コラム】アレルギーから観た人間・環境────────[笹本基秀]
【2学期】やりとりの練習 11の授業
13 1から20の数字を重ならないように言う 空気が変わる
14 シンクロ・ジャンプ 空気が変わる
15 ボール回し(名前を呼んで) からだが弾むと
【コラム】「リベ国」は劇薬ではない────────[兵藤友彦]
16 新聞パンチ 協働する
17 ティッシュ吹き(二人一組) MAKING OFが大事 
18 マイムしりとり やり方自体を考える
19 イエスアンドサークル 聞くことと考えること
20 形を作る、場所を作る、場面を作る 変わるということ
21 短いシーンを作る(1) 乗っかる
【コラム】「リベ国は、なにやっても大丈夫な場だから」────────[兵藤友彦]
22 短いシーンを作る(2) 仮面を被(ルビ:かぶ)る
23 創作「~代の娘とお母さん」 自分の中にあるものを形にする
【コラム】公民館の理想の講座────────[北井康弘]
【3学期】言葉の花を咲かす 7の授業
24 コントロールタワー 答えのない問いに向かって
25 目かくしウォーキング 世界をからだで「感じる」
26 話しかけのレッスン 話しかけられてる実感、あるか?
【コラム】私を役者にしてくれたレッスン──[清水万鳳]
27 ボール回し(「ねえ」と呼びかけて) 声が届く
28 「おはよう」「おはよう」のレッスン 想いは伝わる
29 誰の話? 嘘のつき方
30 ズキュンときた言葉/本 人を好きになる授業
【コラム】オレの「ズキュンときた言葉」────────[兵藤友彦]
対談│「不可能」と言われた場所で──リベラルアーツ国語の挑戦 稲垣諭×兵藤友彦
レッスンを見る、レッスンに参加する
「聞く」「話す」「間を作る」──アクティブラーニングへの違和感
「生(ルビ:なま)の言葉」と「社会の言葉」
「刈谷東の生徒たちは、私だ」
生活に負けさせない
リベラルアーツ国語の使命
「親を見切る」──他者の感覚
フィクションを演じて現実に出会いなおす
「倒れかけ」のレッスン──背中をゆだねる
「手を作る」セラピスト
竹内敏晴との出会い
演劇は教育に根づかないか?
言葉にならない身体に触れる言葉を

前書きなど

この本を手にしてくれたあなたへ ~長いまえがき~




まずはお礼です。この本を手にして、ページを開いてくれてありがとう。
私は兵藤友彦と申します。愛知県立刈谷東高校という昼間定時制の学校で教員をしています。
学校設定科目「リベラルアーツ国語」を現任校で創りました。現任校で勤めながら、授業をもって全国の学校をまわっています。

20年以上、現任校に勤めてきました。
この20年で定時制の生徒も随分、様変わりしました。
赴任した頃は荒れた学校でした。それがいつしか不登校を経験した生徒が7割以上を占める学校になって、今では多様性のるつぼのような学校になりました。
不登校を前の学校や中学校で経験した生徒、外国籍の生徒、特性のある生徒、肢体不自由の生徒……。
学力も怖ろしいくらいバラツキがあります。教員より賢い生徒から、ひらがなさえろくに読めない外国籍の生徒まで。
家庭も個々人によって雲泥の差があります。お昼ご飯を食べる余裕のない生徒は、昼の放課のあいだ、グランドを見て佇んでいます。
DV、ネグレクト、リストカット、オーバードーズ、自殺企図、自殺未遂……
書き上げていくととても悲惨な感じですが、普段、生徒たちは大変礼儀正しい。おとなしい。しかし、ある日突然、誰にも見せずこらえていたものが噴き出して、その結果、退学していく生徒も珍しくありません。卒業率は7割いけば良い方でしょうか。
私は好き好んで刈谷東高校に長く勤めています。私自身、ろくでもない人間です。よく県の教育委員会が雇い続けてくれているもんだと自分でも思うくらい、バランスを欠いた人間です。大変生きづらい。
生きづらさを抱えながら、それでもなんとか踏ん張っているという一点において、刈谷東の生徒は私なのです。

刈谷東高校の生徒がなんとか人の世に取り付いて、生き延びてゆけるような武器をプレゼントしたい。こんな人間を長く置いてくれた定時制高校、あるいは教育界に恩返しがしたい。そう思って創ったのが「演劇表現」という授業、そして「リベラルアーツ国語」という授業です。
「演劇表現」は、2014年(もう10年!以上前になるんですね)に開講した選択科目です。演劇の基礎レッスンを丁寧にやることを通して、「やりとり」ができる生徒を育てることを目標とした科目です。演劇の授業というと、芝居を作るというイメージありますよね? 「演劇表現」は、芝居作りをゴールにしていません。演劇の基礎レッスンをやる中で毎時間毎時間、生徒が変わっていくことを目指します。毎時間の授業がドラマ(芝居)なのです。
「リベラルアーツ国語」は学校設定科目です。2024年に開講しました。刈谷東高校の3年生、4年生の生徒はクラス単位で全員受ける授業です。不登校経験者も、外国籍の子も全員がこの授業を受けます。
「リベラルアーツ国語」は、その名のとおり国語の授業です。国語には「読む」「書く」「聞く」「話す」という4つの学習領域があります。その中でも「リベラルアーツ国語」は「話す」「聞く」という領域を扱います。加えて「間(あいだ)を作る」という領域を独自に導入しました。
読み書きなど、しなくても生きてはいけます。しかし、話したり聞いたりしないでは、この世に取り付いていけません。「話す」「聞く」「間を作る」。リベラルアーツ国語は、生き延びるための授業です。20年にわたって続けてきた「演劇表現」という授業の内容に、新たにインプロ(即興劇)の要素を加えました。
〝答えのない問いに向かって協働する力を育む。「非認知スキル」を向上させる。新学習指導要領の3つの評価領域に完全に対応した評価基準を備えている〟
ステキな謳い文句を並べて学校設定科目新設の申請書を愛知県の教育委員会に提出しました。看板に偽りありとならぬよう、中身を整えました。そうして1年がかりで授業をスタートさせることができました。
「体育の次に好きな授業」と刈谷東の生徒にはとても評判が良いです。生徒たちの一番苦手な領域を扱っているというのに、不思議な気分です。

昨年度1年間、夢中で授業を実践していくうちに、私はこの授業をいろんな学校でやってみたくなりました。
生きるのにシンドい思いを持っているのは、なにも刈谷東高校の生徒ばかりではないからです。パッと見、何不自由なく暮らしているように見える高校生たちの中にも、端正に生きている大人の中にも、刈谷東の生徒が抱えているのと同質な困難さがあるからです。これまで400回を超える学校外でのワークショップをやってきました。今現在もCAワークスというNPOを立ち上げ、一般の方向けにワークショップを継続して行っています。そこで出会った高校生たちが、大人たちが私に教えてくれました。

「授業やってほしいのですが」と呼ばれれば、どこにでもいきます。岡山、大阪、京都……。授業の場を求めて彷徨う放浪者のようだと、自分のことを思っています。
竹内敏晴さんという方に、私は随分お世話になりました。竹内さんが亡くなるまでの最晩年2年間、とてもよくしてもらいました。竹内さんは日本で初めて正規の演劇の授業を東京都南葛飾高校定時制でやられた方です。
「絶対オレのレッスンの猿まねをするな」
「教育に演劇を導入するなんて無理だ」
竹内さんは常々私に仰有っておられた。私は一つ目の忠告を忠実に守ってやってきました。そして二つ目の忠告については、ずっと反発しつづけてきました。演劇的手法を教育に導入すること。演劇人ではなく教員が、目の前にいる生徒に向かって演劇的な手法を用いながらアプローチできるような授業を創ること。
「リベラルアーツ国語」は、竹内さんへの私からのファイナルアンサーなのです。
竹内さんも全国を飛び回ってレッスンをやっておられました。竹内さんが師事した林竹二氏も、授業をもって全国の小学校を回っておられた。
お二方の足下にも及ばないのは言うまでもないですが、私も「リベラルアーツ国語」の授業をもって全国を回っています。これからももっと回りたいと願っています。
この世で生き延びるための武器をプレゼントするために。

ここまで長い長い自己紹介を読んでくれたあなた。本当にありがとう。
「おまえは何者だ?」そう訊かれたら、私は迷わずこう答えます。
「私は、授業をする人だ」と。

「話す」「聞く」「間を作る」を1年かけて授業の中で積み上げていくと、人を好きになるみたいです。
いじめられて人間が怖くなった不登校経験者が、ガイジンと差別されて人を恨んでいた外国籍の生徒が、うつ病を患って家から出られなかった主婦が、人間を好きになるのです。
それが「リベラルアーツ国語」という授業です。
小説家の太宰治は、『斜陽』という作品の中で「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」と書いています。
無関心がはびこる今の世で、他者と距離を取って甲殻類のように固い殻を被って自分の世界に籠もることが是とされる今の世の中で、他者を好きになることは、小さな革命なのかもしれないと私は思っています。

この本は、「リベラルアーツ国語」の授業中に私が発した言葉が記されています。「リベ国」の秘密が記されています。人を好きになる授業の秘密が書かれた本です。
さあ、「リベラルアーツ国語」の授業を始めましょう。
私の言葉は、あなたに届くでしょうか。
2026年3月1日 兵藤友彦

版元から一言

不登校や貧困、家庭問題など、さまざまな生きづらさを抱えた生徒たちと真正面から向き合ってきた定時制高校の現場から生まれた一冊です。著者は20年以上にわたり、演劇的手法を用いた独自の授業「リベラルアーツ国語」を実践。「教え込む」のではなく、「話す」「聞く」「間をつくる」という身体感覚を通して、人とつながり、生き延びる力を育ててきました。本書は、その実践の軌跡と思想を、具体的な授業風景とともに記録したものです。教育が踏み込むことをためらう時代に、あえて人間の核心に触れようとする挑戦は、教師はもちろん、子どもと関わるすべての大人に深い示唆を与えます。

著者プロフィール

兵藤 友彦  (ヒョウドウ トモヒコ)  (

1964年、愛知県生まれ。教育者。国語科教諭。特定非営利活動法人「C,A,ワークス」理事長。2003年、愛知県立刈谷東高等学校(昼間定時制)に赴任。以来20年以上に亘って、定時制の多様な生徒たちに生き抜く力を育む教育を実践。演劇的な手法を用いたコミュニケーションの授業「演劇表現」、そして「演劇表現」を深化させた国語の授業「リベラルアーツ国語」を同校にて創始。演劇部の顧問も務め、『Making of「赤い日々の記憶」』(作・演出)をはじめとする作品により、同校演劇部を3度の高校演劇全国大会に導く。人間性を育て、コミュニケーション能力を鍛える演劇表現/リベラルアーツ国語の授業は学外からも注目を集め、全国各地で400回を超える演劇ワークショップを開催。生きづらさを抱えた大人たちも多く参加するワークショップはテレビや新聞各紙でも紹介されている。著書に『今、ここにあなたといること──熱血先生と元不登校児の3000日』(角川学芸出版)、『奇跡の演劇レッスン──「親と子」「先生と生徒」のための聞き方・話し方教室』(学芸みらい社)、『コミュニケーションの準備体操』(岩波書店)など。文部科学大臣賞、中日教育賞等、受賞多数。

上記内容は本書刊行時のものです。