書店員向け情報 HELP
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
ワーグナー・パースペクティヴ 2026
特集 バイロイト祝祭&《指環》初演150年
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2026年7月31日
- 書店発売日
- 2026年7月24日
- 登録日
- 2026年6月27日
- 最終更新日
- 2026年7月21日
紹介
日本のワーグナー研究の最新動向を伝える年刊誌。
バイロイト祝祭劇場開幕・《指環》全曲初演150周年を多彩な視点から祝う!
『ワーグナー・パースペクティヴ』は、わが国におけるワーグナー研究の成果やワーグナー芸術にかんする多様な情報を発信する年刊誌です。
誌名の「パースペクティヴ」には、「ワーグナーを通して、あるいは対象として、その作品や思想だけにとどまらず、関連するさまざまな事象や世界を多様な観点から論じることのできる場を提供し、本誌を通じて未来のワーグナー研究を展望したい」という理念が反映されています。
第3号となる今号では、「バイロイト祝祭・《指環》初演150年」を特集。
バイロイト祝祭劇場の開幕と《ニーベルングの指環》全曲初演が行われた1876年から150年を記念し、その歴史的意義と現代への響きを多角的に論じます。以下の多彩な論考とエッセイを収録しました(以下敬称略)。
・池上純一(音楽学):本特集の理念的導入として、バイロイトという企てがもつ思想的背景を照射し、「祝祭」とはなにかを問いなおす
・リヒャルト・ワーグナー(松原良輔:翻訳・解題):ワーグナー自身が1876年を振り返った論文「バイロイトの舞台祝祭劇場」の全訳。祝祭劇場構想の原点に触れる重要テクスト
・岡田安樹浩(音楽学):1876年の《指環》全曲初演を支えた「ニーベルンゲン官房」にかんして。総譜校正からパート譜作成まで、開幕へ向けた準備過程を丹念にたどる
また、古楽器による《指環》プロジェクト(ケント・ナガノ指揮、コンチェルト・ケルン)について、同プロジェクトに参画したヴィオラ奏者・矢崎裕一とフルート奏者・松田恵美子がエッセイを寄稿。ヨーロッパのワーグナー演奏実践の最前線を伝えるほか、2025年バイロイト祝祭に合唱として出演した町田天音が、みずみずしい感性でバイロイトの空気を描きだします。
デジタル版公開が進むワーグナー著作全集プロジェクト(RWS)の紹介記事(ベッティーナ・シュヴェーマー、髙松佑介訳)、バイロイト報告(新野見卓也)、国内外の書評(江口直光、フランク・ピオンテク/北川千香子訳)なども充実の内容でお届けします。
目次
まえがき
特集 バイロイト祝祭&《指環》初演一五〇年
祝祭の夢、ワーグナーとニーチェ、神なき時代の祭り──音楽祭の社会史:市民社会から群衆の時代へ(池上純一)
〔翻訳・解題〕バイロイトの舞台祝祭劇場──その定礎式についての報告を付して(リヒャルト・ワーグナー著/松原良輔 訳・解題)
「ニーベルンゲン官房」のアシスタントたちとその仕事──《ニーベルングの指環》の総譜校正とパート譜作成(岡田安樹浩)
後期ロマン派の奏法による《指環》──ワーグナーが聴いた響きを求めて(矢崎裕一)
古楽器とワーグナーの再会──一五〇年の時を繋ぐ(松田恵美子)
Grüner Hügel で初めて過ごした夏──バイロイト祝祭合唱団 二〇二五(町田天音)
紹介
「リヒャルト・ワーグナー著作集(RWS)──歴史的・批判的校訂による全集プロジェクト」(ベッティーナ・シュヴェーマー/髙松佑介 訳)
上演報告
バイロイト音楽祭報告 二〇二五(新野見卓也)
国内主要ワーグナー上演 二〇二五
書評
国内ワーグナー文献 二〇二五(江口直光)
海外ワーグナー文献 二〇二五(フランク・ピオンテク/北川千香子 訳)
執筆者プロフィール
日本ワーグナー協会 二〇二五年活動記録
論文募集要項
前書きなど
まえがき
『ワーグナー・パースペクティヴ』は、早いもので本号で三年目となりました。本シリーズでは、音楽学、演劇学、思想、上演研究、批評、実践といった多様な視点│パースペクティヴ│からワーグナーを捉え直すことを試みています。
今年の特集テーマは、「バイロイト祝祭&《指環》初演一五〇年」です。バイロイト祝祭劇場の開幕とともに《ニーベルングの指環》全曲初演が行われたのが一八七六年。二〇二六年は、その一五〇年の節目にあたります。祝祭の名にふさわしく、まずはこの節目を寿ぎたいと思います。さて、本号では、執筆者たちがそれぞれ異なる角度からバイロイト祝祭劇場と《ニーベルングの指環》初演に光を当てています。そこに立ち現れる一八七六年の諸相を辿っていただければと思います。
特集は、池上純一氏による「祝祭」をめぐる論考にはじまります。祝祭とは何か、その理念や背景を問い直す、本特集の導入ともなる論考です。次に、ワーグナー自身が一八七六年を振り返った論文「バイロイトの舞台祝祭劇場」を取り上げました。祝祭劇場構想の原点に触れることのできる重要なテクストであり、本号のために松原良輔氏には翻訳と解題をご寄稿いただきました。そして、一八七六年の《ニーベルングの指環》全曲初演を支えた「ニーベルンゲン官房」に関する、岡田安樹浩の書き下ろし論文を掲載しています。バイロイト祝祭劇場の開幕へ向けた総譜校正やパート譜作成の過程を丹念にたどりながら、新たな知見を提示する論考です。
エッセイは、ヨーロッパにおけるワーグナー演奏実践の最前線に携わる演奏家のみなさんにご寄稿いただきました。ヴィオラ奏者の矢崎裕一氏、そしてフルート奏者の松田恵美子氏には、ケント・ナガノ指揮、コンチェルト・ケルンを中心に進行している古楽器による《指環》プロジェクトについて、奏者の視点から執筆していただいています。二〇二五年のバイロイト祝祭に合唱として出演した町田天音氏は、バイロイトの空気をフレッシュな感性でみずみずしく綴ってくださいました。
さらに本号では、近年デジタル版の公開が進められているワーグナー著作全集プロジェクトについてご紹介しています。ベッティーナ・シュヴェーマー氏による、歴史的・批判的校訂による著作全集プロジェクト(RWS─Richard Wagner Schriften)の紹介記事を、髙松佑介の訳でお届けします。
バイロイト報告は、音楽批評家でありピアニストとしても活躍されている新野見卓也氏にお願いしました。国内と海外文献の書評はそれぞれ江口直光氏とフランク・ピオンテク氏(訳:北川千香子)にご執筆いただきました。
ところで、バイロイト祝祭劇場が開幕した一八七六年は、はじめてグラハム・ベルが電話を用いた通話に成功した年でもありました。一五〇年を経た今では、スマートフォンひとつで音楽や映像、資料へアクセスできるようになりました。劇場や演奏家がSNSで発信する短い映像を通して、《ニーベルングの指環》のような長大な作品も、切り取られた場面や断片的な引用によって享受されるようになっています。VRによって舞台体験そのものが仮想空間へ移し替えられる未来も、現実味を帯びています。
しかし、それでもなお、実際に劇場へ赴き、身体を預け、長い時間に身をひたす体験とは、ほかに置き換えられるものではありません。今もなお、バイロイト祝祭への巡礼は形を変えながら続いています。
本号を通して、一五〇年にわたり受け継がれてきた祝祭の熱を、読者のみなさまとともに感じることができれば幸いです。
編集委員を代表して 佐藤美晴
上記内容は本書刊行時のものです。
