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編曲の世界
クラシック音楽〈受容史〉再考
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年2月28日
- 書店発売日
- 2026年2月25日
- 登録日
- 2026年1月15日
- 最終更新日
- 2026年2月14日
紹介
編曲だってクリエイティヴ!
クラシックからミュージカルまで、
音楽史を動かしてきた編曲の力にせまる!
大作曲家が書いた名作が世界中に広まったのは「編曲」のおかげだった!?
「オリジナル(原典)」にたいして副次的な価値しかもたないように思われている「編曲」が音楽史の中で果たしてきた役割、さまざまな編曲の手法、楽譜市場における編曲の重要性、ベートーヴェンほか作曲家による自作の創造的編曲などなど、編曲の諸相を明らかにし、クラシック音楽の歴史を動かしてきた編曲の力にせまる!
著者はベートーヴェン研究で知られる若手音楽学者。
全日本ピアノ指導者協会(PTNA)ホームページでの人気連載の単行本化。
◎目次
【第1部】編曲の諸相
[第1章]現代の編曲、歴史の中の編曲
[第2章]編曲の定義とは?──18世紀から19世紀の「編曲」の種類、意義
[第3章]「変奏曲」の「編曲」性
[第4章]編曲と作品の受容・普及・出版利益
【第2部】編曲の音楽内容、その意義
[第5章]さまざまな編曲手法
[第6章]鍵盤楽器のための編曲の多様性と特異性
[第7章]現代も盛んな編曲──特定の様式を超えて
[終章]歴史の中の編曲、これからの編曲
[コラム]「編曲」との関わり方
[コラム]編曲は「編曲」と思われていなかったかもしれない?
[コラム]オマージュとしての編曲
[コラム]編曲は誰のもの
目次
第1部 編曲の諸相
第1章 現代の編曲、歴史の中の編曲
意外と身近な「編曲」
あなたの「編曲」に対する意見はポジティブ? それともネガティブ?
オリジナルv.s.編曲──編曲はなぜ「低く」見られることがある(あった)のか
こんにち「編曲」に注目する理由
第2章 編曲の定義とは?──18世紀から19世紀の「編曲」の種類、意義
きわめて広い「編曲」の定義
「編曲」が持つさまざまな意義
編曲=「大編成」から「小編成」?──“手軽に演奏できるように”縮小するだけが編曲じゃない!
ピアノ独奏曲を拡大!──18世紀末から19世紀初頭の編曲
ベートーヴェンのピアノ曲の「拡大編曲」
「編曲」をとおして、さまざまな響きの可能性を
一部の楽器のみを入れ替え──編曲による演奏レパートリーの拡大
編曲と新たな創意の発露
オリジナルに新鮮さをまとわせる編曲あれこれ
「改作」もBearbeitungのうち
編曲と作品番号──編曲も独立した「作品」たりえた
巨匠に匹敵する巧みさと創造力
楽曲のリサイクル?──「転用」と「改作」
第3章 「変奏曲」の「編曲」性
「編曲」と「オリジナル」の境界
「編曲」概念の射程
当時の人々にとっての「編曲」と「オリジナル」
「オリジナル」はただ一つか
「作品」の認識──受容者の認識が「作品」を生み出す?
第4章 編曲と作品の受容・普及・出版利益
楽譜市場にあふれる編曲
編曲が経済を回す
早く編曲を作らないと、儲けがとられてしまう⁉
編曲から見るヒット・チャート?
「売れる」作品を編曲で出版する
編曲出版の数から人気がわかる?
編曲から見るパブリック・ニーズ
編曲シリーズ──出版社のマーケティング戦略
シリーズ出版、その意図は
一つで複数の編成のための編曲を──フンメルの編曲シリーズ
◉[コラム]「編曲」との関わり方
第2部 編曲の音楽内容、その意義
第5章 さまざまな編曲手法
ケース1:職人業的?──フンメルによる交響曲の編曲シリーズ
フンメルによる交響曲のピアノ編曲
編曲者の楽曲解釈? 当時の演奏習慣?
ピアノはどこまでオーケストラに近づけるか?
フンメルのピアノ編曲から何を読み取る?
ピアノ・ソロからピアノ四重奏へ
原曲の姿を浮き彫りに?
編曲者の解釈?
オリジナルに“忠実”な中にある“独創性”
ケース2:「そのジャンルらしく」──拡大編曲を例に
ピアノ三重奏曲ではなく弦楽五重奏曲を──編曲者カウフマン
編曲者ベートーヴェン
編曲に求める「そのジャンルらしさ」
◉[コラム]編曲は「編曲」と思われていなかったかもしれない?
ケース3:創造的編曲
ベートーヴェンの自作編曲
調の変更──「まったく異なる楽器」のために……から始まって、曲の性格も変える?
テンポと発想標語の変更──弦楽器とクラヴィーアはまったく別の楽器
創造性と様式変化
ベートーヴェンの個性
「真の4声体」を
作曲家の様式変化
作品の「再考」
◉[コラム]オマージュとしての編曲
第6章 鍵盤楽器のための編曲の多様性と特異性
鍵盤楽器のための編曲の用途
個人で楽しむ鍵盤楽器用編曲
「より本物らしく」⑴──鍵盤楽器のための編曲をオリジナルに近づけて
「より本物らしく」⑵──鍵盤楽器のための編曲を通した作品理解
目的に合わせたピアノ編曲──ブラームスの場合
ブラームスのピアノ編曲──弦楽六重奏曲
オリジナルに縛られない編曲
オクターヴをどう使う?
ペダル
実践のために編曲を
◉[コラム]編曲は誰のもの
第7章 現代も盛んな編曲──特定の様式を超えて
歴史の中の即興、こんにちのアレンジ
アレンジと創造性
「クラシック」とは?
そもそもいわゆる「クラシック」の範囲は?
終章 歴史の中の編曲、これからの編曲
用途・機能の多様性
編曲手法の多様性
編曲と創造性
編曲は「作品」か
すぐそこにある編曲、これからの編曲
あとがき
参考文献
楽譜の典拠
URL一覧
前書きなど
序
こんにち一般的に、いわゆるクラシック音楽というと「敷居が高い」「堅苦しい」「難解」のようなイメージがいまだに根強くあるようです。たしかに(とくに日本は)演奏会のチケット価格は安くありませんし、聴衆のマナーが確立した場でよく知らない曲を静かに聞くのは、馴染みのない方にはやや抵抗があるかもしれません。そうした演奏会に赴いた経験が少なく、積極的に録音も聞かないのであれば、その方は「クラシックには縁がない」と自認するのではないでしょうか。
しかし、本当にそうでしょうか?
実際には、現在の我々はクラシックと言葉どおり“完全無縁”の生活は不可能になっています。その原因の一つは「編曲」です。少し意識してみると、日常生活のいたる所にクラシックの編曲があふれている。クラシックだけではありません。現代の楽曲の編曲もそうです。
私たちが日々暮らしていれば、自らの意図にかかわらず、どこかしらで必ず編曲を耳にしているはずです。そして音楽の一分野を成すこの「編曲」というものは、現代だけではなく歴史の中でも大きな役割を担ってきました。その多様性は限りがないようにも見え、また過去に終わった慣習ではなく現代の我々に関連してくる点も少なくありません。ひとたび「編曲」に注目すると、音楽の実用的側面から芸術作品の本質に関わる事柄まで、深遠な問題が次から次へと浮かんでくるのです。
誤解なきよう申し添えておきますと、筆者はオリジナルがつまらないという気持ちは皆無ですし(たいへん面白いと思います)、むやみやたらに編曲を推奨しようというつもりもありません。
それではなぜ、「編曲」をテーマに綴るのか。
それは「編曲」を入り口に音楽の世界に入っていくと、オリジナルを聴き直し、その響きをもう一度吟味するきっかけになったり、「編曲」と我々の接点を見つけることから、音楽と我々の生活・社会との密な関係を探る道へ踏み込んでいけたりする──そんな経験と感覚からです。
こうした考えに立ち、編曲の持つさまざまな面を伝えるべく、本書は2部構成を取りました。第1部では、どちらかというと概念や思想に関する問題を取り上げ、多種多様な編曲の在り方や、そうした多様な在り方に応じた編曲の意義を探ってみます。そして第2部ではより具体的な話に進み、編曲の音楽内容と向き合って編曲者(ときにはオリジナルの作曲家本人)がどのような思惑でどのような編曲を作り出しているのだろうかと、問いかけていきたいと思います。
本書で扱う「編曲」の相は、無尽蔵に思える音楽の世界のごくごく一部に過ぎませんが、そのごくごく一部を刺激に、果てしない音楽の世界に一歩踏み出し、そこで見えてきたものからさらに先へ探究を進めていけるかもしれないと思うのです。
私たち人間は歴史の中で、またこんにち、どんなふうに編曲と、そして音楽と触れているのでしょうか。本書をとおして、この難しくも興味深い問いにしばし思考をめぐらせてみたいと思います。
上記内容は本書刊行時のものです。
