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いのちのかたち
時空を超える唐草
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年1月24日
- 書店発売日
- 2020年1月13日
- 登録日
- 2019年12月18日
- 最終更新日
- 2020年9月23日
書評掲載情報
2021-07-07 |
中外日報
7月7日号/第28692号 評者: 磯部 五月 |
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紹介
古代インドで「蓮」は万物創生の華として信仰され、様々な生命誕生
のかたちを創出した。グプタ期に誕生したエネルギー形象「グプタ式
唐草」はしなやかに変容をくりかえしながら東伝し、各地の美意識や
信仰と交じり合って、仏教の「蓮華化生」の源流ともなった。
インド生まれの〝いのちのかたち〟の変容絵巻を703点の写真・図版
(カラー250点、白黒453点)とともにひもといてゆく。
仏教荘厳のルーツをたどる旅。
目次
序 論 唐草の神秘に魅せられて
凡 例
第Ⅰ章 ストゥーパの蓮華意匠―大蓮華から拡がるいのちの世界
第1節 バールフット 欄楯浮彫装飾
第2節 サーンチー第二塔 欄楯浮彫装飾
第3節 ボードガヤー 聖地を囲む欄楯の蓮華意匠
第4節 さまざまな〝いのち〟のかたち 新芽・蕨手形、蕾、長葉形、抽象形
第Ⅱ章 グプタ式唐草の世界―本源からのメタモルフォーシス
第1節 グプタ式唐草の登場
第2節 グプタ式唐草の顕現
第3節 エネルギーの核―此岸と彼岸の媒介者
第4節 生まれ出ずるいのち―グプタ式唐草からの誕生
第5節 始源のエネルギー
第Ⅲ章 拡がるいのちのかたち―グプタ式唐草の東伝
第1節 絲シ ルクロード綢之路
第2節 中 国
第3節 朝鮮半島
第4節 日 本
図版一覧
主要参考文献
前書きなど
冒頭でも述べましたが、本書の原点となったのは拙著『佛教荘厳の研究―グプタ
式唐草の東伝―』(2003年刊)です。全十章に二つの付論から成っていましたが、そ
れを三章仕立てに大きく改変し、さらにその後の私自身の研究成果をできる限り組
み入れました。第一章・第二章については、かつて重ねたインドでの実査の折数万
枚におよぶスライドや写真を一から見直す作業のなかで、自説を再検証することに
もなりました。その再検証の過程でさまざまな発見が重なり、新たな成果を得るこ
とができました。グプタ式唐草の前身と考えられる蕨手風の抽象形がすでにバール
フットやサーンチーのストゥーパ欄楯浮彫に頻出していること、それが蓮華を含め
た植物のエネルギー形象として用いられていることがより鮮明に浮かびあがってき
たのです。また前著ではほとんど実査を伴っていなかったシルクロードでの様相に
ついて、幸運に恵まれ度重なる実査の機会を得て、具体的な検討を加えることがで
きたのは、望外の喜びです。
「あとがき」より
版元から一言
◉辻惟雄氏推薦のことば
「水底の泥の中から生まれる美しい蓮華は、古代インドにおいて信仰の対象
となり、ギリシャ起源とは異なる唐草文様の系譜を生み出す。それは、仏教
と結びついて、著者が「グプタ式唐草」と命名した独特な生命の表現体とな
り、インドから西域、また中国、朝鮮を経由して日本に至る。
著者安藤佳香氏は、その系譜を追って単身インドへの旅を重ね、またシル
クロード遺跡の調査にも加わり、苦心の手取り写真は数万ショットにも及ん
だ。
そこに集積されたイメージは、蓮華と日輪との「円」、波と植物の蔓との
「うねり」を重ね合わせ、蛇・象・亀・鳥・空想獣マカラなどの聖なる動物
を抱合して、無限の変化に富んだ生命の交響となっている。
従来、蓮華唐草あるいはその同類として比較的単純に扱われてきた対象の
原形は、単なる文様を越えた驚くべき「いのち」の表現世界であった。その
ことの実態が、700点を超える本書の図版によって明らかにされた。有名な
「伝橘夫人念持仏」を荘厳する文様もまた、この世界に根差すものだと知る
だろう。解説文も懇切で分かりやすい。
研究者はもとより、宗教や美術、デザインに興味をもたれる方に、強くお
勧めする。」(美術史家・東京大学名誉教授)
上記内容は本書刊行時のものです。