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家具からインテリアへ
ヴィクトリア朝小説にみるイギリス室内装飾文化史
- 初版年月日
- 2025年3月7日
- 書店発売日
- 2025年3月11日
- 登録日
- 2025年2月5日
- 最終更新日
- 2025年3月5日
紹介
なぜイギリスの中流階級は、インテリア自慢をしてきたのか
〈趣味〔テイスト〕〉 をキーワードに、
階級制度に根ざした室内装飾文化の形成をたどり、
ディケンズ、ギッシング、ジェイムズの小説にみられる室内装飾表象を分析する。
中流階級が支配的社会勢力となったヴィクトリア朝イギリス。貴族階級との差異化を意識した中流階級は、家庭生活と社会的体面〔リスペクタビリティ〕の維持に重きをおくようになる。1851年のロンドン万博を機に促された「デザイン改革」は、中流階級が従うべき「よき趣味〔テイスト〕」に基づく室内装飾を広めていった。「よき趣味〔テイスト〕」を反映した家具への関心は、「審美改革」の影響を受け、パーソナリティの表象となるインテリアの誕生へと連なってゆく。
目次
序章 「私」を語るインテリア
第1節 自己演出の舞台装置としての室内装飾
第2節 イギリス室内装飾文化に関する近年の研究動向
第3節 英米室内装飾文化研究の新たな視点としての「趣味」
第4節 本書の視点と特色、および考察領域
第1章 室内装飾文化誕生の背景
第1節 イギリス文化史研究の変遷と室内装飾文化への関心の誕生
第2節 十九世紀イギリス中流階級の定義とその研究史
第3節 ヴィクトリア朝中流階級と家庭の神聖化
第4節 中流階級の居住空間を〈読む〉
──ベンヤミン、ポー、ブルデュー、そしてボードリヤール
第2章 デザイン改革の明示的な始まりとしてのロンドン万博
第1節 ロンドン万博の文化史的意義に関する先行研究
第2節 国民の趣味の教化を目指したロンドン万博
第3節 ヘンリー・メイヒューの小説に表象された趣味の教化の場としてのロンドン万博
第4節 ヘンリー・メイヒューの小説で諷刺された教化されない国民たち
第5節 『デザインと製品のための雑誌』というデザイン改革の言説
第3章 諷刺されるデザイン改革と展示される装飾品
──ディケンズが描く室内装飾
第1節 『ハード・タイムズ』で諷刺されたヘンリー・コールとデザイン改革
第2節 ヘンリー・コールのデザイン改革と功利主義
第3節 「恐怖の館」で諷刺されたサウス・ケンジントン・システム
第4節 書簡と伝記に反映されたディケンズの室内装飾への関心
第5節 『荒涼館』で諷刺されたロンドン万博と展示される室内装飾品
第4章 デザイン改革から審美改革へ
── 1870年代以降の室内装飾文化
第1節 デザイン改革の終焉
──道徳的価値観から美的価値観へ
第2節 英米における家庭芸術文献(室内装飾指南書)とインテリア・デザイン産業の確立
第3節 『家庭におけるよき趣味についての手引書』に反映されたデザイン改革から審美改革への移行
第4節 W. J. ロフティの指南書シリーズ「家庭の芸術」
──下層中流階級への審美改革の普及と投資対象化する室内装飾品
第5節 W. J. ロフティの指南書シリーズ「家庭の芸術」にみるプロフェッショナル化する女性の室内装飾業者
第6節 所有者の個人的特徴の表現としてのインテリア
第7節 ヒール・アンド・サン社の家具カタログにみるデザイン改革から審美改革への変遷
第5章 十九世紀末の小説に表象された審美改革
──ギッシングとジェイムズが描く室内装飾
第1節 『余った女たち』に描かれたデザイン改革と審美改革
第2節 『女王即位五〇年祭の年に』に表象された、虚栄心の象徴としての書斎への憧れと知覚でとらえるインテリア
第3節 『女王即位五〇年祭の年に』で諷刺された十九世紀末の審美主義
第4節 『ポイントンの蒐集品』に表象された十九世紀末の審美改革
第5節 変容する審美学とヘンリー・ジェイムズの印象理論
終章 趣味の民主化、室内装飾を描く小説、そして内面描写としての室内装飾
上記内容は本書刊行時のものです。