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宮廷芸術家
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年9月
- 書店発売日
- 2026年9月17日
- 登録日
- 2026年8月10日
- 最終更新日
- 2026年8月26日
紹介
レオナルド・ダ・ヴィンチは、ミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァ(イル・モーロ)に仕えた宮廷画家であった。絵画制作にとどまらず、祝祭の演出、軍事技術や機械設計、建築的構想にまで関与し、宮廷における芸術家の職能を著しく拡張した。彼の素描に見られる人体比例の研究と工学的発想との結びつきは、宮廷において要請された知の総合性を端的に示している。こうした活動に照らすならば、宮廷とは単なる制作依頼の場ではなく、芸術家の知と技術が総動員され、それが政治的・象徴的実践へと組みこまれる場であったことが浮かびあがる。一方、ベラスケスとプッサンは、一七世紀ヨーロッパにおける宮廷芸術家のあり方の二つの極を体現している。一人は宮廷の最深部に身を置きながら、自らを宮廷の視覚秩序の内部へ描き込んだ画家であり、他方は宮廷を離れ、ローマという外部に立ちながら、その不在ゆえに後代の宮廷制度や王立絵画彫刻アカデミーにおける「規範」となった画家である。両者の歩みは対照的であるが、いずれも宮廷芸術家という概念を固定的な制度に還元するのではなく、その輪郭を内側と外側から揺さぶっている点で一致している。「宮廷芸術家」は宮廷という制度に一義的に回収される存在ではなく、宮廷、都市、市場、宗教、国家、アカデミーといった複数の空間の交点に立ち、権力と芸術との関係をたゆまず媒介していた。すなわち「宮廷芸術家」とは、固定された身分を指すのではなく、歴史のなかで形成され続ける「関係の配置」をとらえるための批評的概念にほかならない。ヤン・ファン・エイクから、カロン、クラーナハ、ベルニーニ、プッサン、そしてベルナルド・ベロットまで、その変容の軌跡をたどることは、近世ヨーロッパ宮廷文化の多層的な豊かさと複雑さを理解するだけにとどまらず、近代的な「芸術家」という存在そのものが、いかなる制度と権力との交渉のなかから成立したのかを、あらためて根底から問い直す契機となるはずである。
目次
プロローグ 宮廷芸術家とは何か──揺らぐ輪郭をめぐって 望月典子
Ⅰ まさに在るがままに──ブルゴーニュ宮廷の画家ヤン・ファン・エイクとフィリップ善良公の肖像をめぐって 今井澄子
Ⅱ アントワーヌ・カロンの《三頭政治下の虐殺》──カトリーヌ・ド・メディシスの夢幻と政治的プロパガンダ 田中久美子
Ⅲ フリードリヒ賢明公のネーデルラント趣味──宮廷画家クラーナハと《最後の審判》 木川弘美
Ⅳ スウェーデン女王クリスティナとベルニーニ──パラッツォ・リアリオの彫刻コレクションを中心に 新保淳乃
Ⅴ 「不在の宮廷画家」ニコラ・プッサン――グランド・ギャラリーの挫折と古典主義の制度化 望月典子
Ⅵ 景観画家ベルナルド・ベロットとザクセン宮廷──劇場空間創出の試み 金沢文緒
エピローグ 宮廷芸術家の「位置」――ベラスケスとプッサンのあいだで 望月典子
註
人名索引
前書きなど
ブルゴーニュ公とヤン・ファン・エイクに、カトリーヌ・ド・メディシスとアントワーヌ・カロンに、フリードリヒ賢明公とルーカス・クラーナハに、スウェーデン女王クリスティナとベルニーニに、ニコラ・プッサンとグランド・ギャラリーに、ベルナルド・ベロットとザクセン宮廷に、世界を彩るヨーロッパの夢を見る!
上記内容は本書刊行時のものです。
