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イラン全史(下)
ペルシア人からイラン人へ
原書: The Persians: Ancient, Mediaeval and Modern Iran
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年10月10日
- 書店発売日
- 2026年10月27日
- 登録日
- 2026年9月29日
- 最終更新日
- 2026年10月19日
紹介
絶対的な支配者は秩序をもたらしたが、専制は社会を疲弊させた。革命や反乱の希望は、やがて挫折しカオスをもたらした――経済・歴史・文学を横断する卓越した学識と、イラン人視点の2500年の通史を統合し、世界で高評を博したイラン学の金字塔。
目次
凡例
第9章 近代的な専制的支配
混乱の終わり
レザー・ハーン、レザー・シャーとなる
専制的支配、世俗化、近代化
軍隊
部族政策
行政および法制度の改革
教育
社会・文化の変化
経済発展と経済政策
内政と外交
第10章 占領、石油国有化、独裁制
占領と退位
一九四〇年代――混乱の政治
政党および政治団体
アゼルバイジャン蜂起と石油をめぐる対立
モサッデグと国民運動(一九五〇~五三年)
石油をめぐる問題と国内の勢力争い
国民運動の亀裂と分裂
一九五三年クーデタ
独裁制(一九五三~六三年)
第11章 白色革命
石油、国家、専制的政府
アラムの日記が物語ること
国内統治
外交
白色革命
第12章 一九七九年二月の革命
排除の政治
社会と国家の対決
確かな本源、すなわち出自と自己への回帰
左翼運動とその思想
蔓延する不満
抗議運動
革命
第13章 イスラーム共和国
「起こるはずのなかった」革命
イスラーム革命
イスラーム共和国
女性
憲法
人質略取
バニーサドルの失脚
〔イラン・イラク〕戦争
戦時イスラーム主義
絶対的後見体制
停戦
モンタゼリーの失脚
ホメイニーの死去
第14章 ホメイニー死後のイラン
憲法の見直し
さまざまな変化の風
自立した有産諸階層の台頭
四大党派
ラフサンジャーニーの改革
改革主義の最盛期
伝統主義者による反対の動き
民主主義を求める動き
連続殺人
学生紛争と閉塞
ハータミーの双子の法案
その他の国内的争点
外交関係
イランの核開発計画
潮の変わり目
補遺 イランの社会
解説 「遊牧民」から「移動部族民」へ――イラン近現代史再考の一視点
資料
訳者あとがき
主要参考文献
索引
前書きなど
訳者あとがき
(…前略…)
そうした時代状況の中で、私も次第に、イランを「国民国家」として認識するのであれば、そのことと切り離せない基本的な問題として浮上してくる、そもそも、「イラン人」とは誰のことか、といった問題意識に否応なく引き込まれてゆくようになっていった。
そうした矢先に、たまたま目に留まったのが、H・カトゥーズィヤーンのThe Persiansである。彼は、本書上巻の「訳者まえがき」にもあるように、テヘラン出身のイラン人であるが、長い間イギリスで教育を受け、イギリスで教鞭をとり、イギリスで生活をしてきた研究者である。英語で著された本書は、基本的には英語ネイティヴ(より広くは西洋世界)の読者を意識して叙述されていることがうかがわれ、そうした読者の嗜好にも多かれ少なかれ配慮した内容となっている。つまり、実をいえば、タイトルである「ペルシア人」という表現自体も、絶えず緩まず、「イラン」を「ペルシア」と呼び続けてきた欧米世界の慣例の延長上で、歴史上、イランの地(イランザミーン)を生活圏とした人々、さらには現在そこに住まう人々のことを「ペルシア人」と称しているにすぎないことが内容からみえてくる。いわば、カトゥーズィヤーン自身が、想定される主たる読者層の都合に忖度した表現と言い換えてもよいかもしれない。
改めて言及するまでもないことではあるが、イランもご多分に漏れず、いわゆる「多民族国家」であり、その国民を構成する主要な「民族」(qowm)の一つがペルシア人(Fārs=Pārs)である。ほかにもトルコ人(Tork)、クルド人(Kord)、アラブ人(‘Arab)、トルキャマーン人(Torkamān)、バルーチ人(Barūch)などがおり、実に多様な民族構成となっている。したがって、「ペルシア人」と言った場合は、少なくともこの二様の意味合いがあることになる。
つまり、欧米的な言い回しに従えば、国民国家イランの国民としてのイラン人とイコールで結ばれる「ペルシア人」が一方におり、その一方では、国民国家イランの国民としてのイラン人の一部を構成する「ペルシア人」がいるのである。
カトゥーズィヤーンもそうした複雑な状況を十分に認識したうえで本書の叙述に臨んだとは思うが、それでもなお、我々が翻訳に際して、彼がどちらの意味で使用しているかの判断を躊躇せざるをえないような場合(特にイスラーム時代以前やイスラーム時代初期の叙述)に直面することもあった。ところが、本書のペルシア語版では、わずかの例外を除いて、英語版のPersian, Persiansは、ほぼ機械的にĪrānī, Īrāniyānと置き換えられており、これまた安易に鵜呑みにはできないわけであり、したがって「ペルシア人」問題は、我々が翻訳に際してもっとも苦労をし、細心の注意を払った箇所の一つでもある。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。
