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ロンドンの公共図書館における社会的包摂の理念と実態
すべての人のための図書館から「わたし」のための図書館へ
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年10月8日
- 書店発売日
- 2026年10月8日
- 登録日
- 2026年8月27日
- 最終更新日
- 2026年9月28日
紹介
1850年から現在までの公共図書館の役割とライブラリアンシップの変遷をたどるとともに、社会的包摂概念の受容・変容・実践をケーススタディから考察。行政・市民・企業による運営形態を比較し、公共図書館員の思想を通して公的サービスの維持可能性を探る。
目次
まえがき
序章 公共図書館における社会的包摂
1.本書の概要とねらい
2.社会的排除と社会的包摂の理論的背景
3.公共図書館における社会的包摂
4.現代のイギリス公共図書館の様相
第1章 イギリス公共図書館におけるライブラリアンシップの歴史的展開
1.公共図書館の法制化と「社会的弱者のための図書館」
2.「すべての人のための図書館」思想への統合とコミュニティ・ライブラリアンシップ
3.社会的包摂の導入と受容
4.図書館界における社会的包摂の発展と細分化
5.イギリス公共図書館におけるライブラリアンシップの意味
第2章 行政主導の公共図書館再編と社会的包摂――アイデアストアの革新
1.タワー・ハムレッツ区の公共図書館再編と現況
2.アイデアストアにおける社会的包摂の実践
3.自治体職員としての図書館職員による社会的包摂への意識
4.公的サービスとしての社会的包摂
第3章 市民主体の図書館運営と新たな社会的包摂――コミュニティ図書館の挑戦
1.ブレント区における図書館の閉館とコミュニティ図書館の開館
2.コミュニティ図書館における社会的包摂の実践
3.ボランティアたちの社会的包摂への意識
4.住民による住民のための社会的包摂
第4章 企業による公共図書館運営と社会的包摂――GLL図書館の拡大
1.グリニッジ区における図書館運営のアウトソーシング
2.GLL 図書館における社会的包摂の実践
3.企業職員の社会的包摂への意識
4.公的サービスを運営する企業としての社会的包摂
第5章 多様な包摂の意識と実践
1.イギリスにおける公共図書館を支える理念の変遷
2.現代イギリス公共図書館における社会的包摂の実践
3.「すべての人のための図書館」から「わたしのための図書館」へ
終章 2020年以降の様相
前書きなど
まえがき
本書はイギリスの公共図書館を対象として、図書館員が共有してきたライブラリアンシップの歴史的展開と、理念のサービスへの表出について、社会的包摂の視点から明らかにしたものである。
序章では本書の背景となる社会的包摂の概念とイギリスの公共図書館を取り巻く状況について概観し、第1章では1850年のイギリス公共図書館法制化から2020年代までの図書館員のライブラリアンシップをたどり、含有される理念の連続性と差異を示した。第2章から第4章はロンドンの公共図書館を対象としたケース・スタディであり、異なる運営形態の図書館において、実際のサービスとサービスを担う図書館員の意識を明らかにした。第5章では第1章から第4章までの内容を踏まえ、公共図書館の役割と意義について横断的に考察した。
本書ではいずれの章においても、社会的包摂の概念を考察の軸としている。社会的包摂を研究の視点として選択した際、「社会的包摂は、すでに政策では見られなくなっており、古い概念ではないか」という指摘を受けた。しかし、多様な社会問題へ包括的に対処し、人々の紐帯を強め、生活の質の向上を目指す社会的包摂の概念と、利用者をさまざまな面から支援しようとする公共図書館の理念は合致する部分が多い。歴史的経緯を踏まえても、イギリスの公共図書館サービス、ライブラリアンシップを検討する上で、社会的包摂は外すことのできない概念だった。
また、イギリスのEU離脱をめぐる社会状況の変化により、公共図書館における移民向けサービスも注目されている。たしかに、公立図書館は国や自治体の方針に影響される部分が大きい。しかし、サービスの実態や、職員の意識について調査を進めるなかで、公共図書館の職員は「目の前にいる利用者が困っていることに対して手助けをする」「サービス対象の地域をより良くする」ことに意識が向いているように感じている。
本書を通して、読者の方々に上記の2点について感じとっていただけたのであれば、幸甚の至りである。
上記内容は本書刊行時のものです。
