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サステナブル市場とフェアトレードの転換
消費・企業・生産をつなぐ公正さのゆくえ
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年7月31日
- 書店発売日
- 2026年7月30日
- 登録日
- 2026年7月8日
- 最終更新日
- 2026年7月17日
紹介
「倫理的消費」や「持続可能な消費」の広がりのなかで、フェアトレードはどのように変化しているのか。消費者、企業、生産者、認証制度、環境問題など多様な視点から、「サステナブル市場」におけるフェアトレードの現在地を問い直す。
目次
まえがき
序章 フェアトレードの展開と変容[畑山要介]
1.グローバル経済の構造的な不均衡
2.フェアトレードの展開
3.サステナブル市場の台頭
4.本書の狙い
1章 日本の消費者にとってのフェアトレード[畑山要介]
1.日本におけるフェアトレードの現状
2.市民運動としてのフェアトレード
3.消費文化としてのフェアトレード
4.倫理的消費文化の意義と限界
5.おわりに
2章 フェアトレード認証の進化論――グローバル企業とラベル[佐藤寛]
1.コーズ・リレーテッド・マーケティング(CRM)とフェアトレード
2.チャリティーとフェアトレード
3.独自認証の限界――物語が問題を「はぐらかす」危険性
4.グローバル・サプライチェーンの拡大と倫理的リスクの増加
5.サプライチェーン・マネジメントとフェアトレード
6.認証制度の曲がり角と自己認証への回帰
7.フェアトレード・ラベルの段階的進化論
8.フェアトレード・ラベルの存在意義
3章 フェアトレードを活用した生産組合の挑戦――公平性が生む価値創出[小谷博光]
1.フェアトレード認証は成功を保障するのか
2.世界の砂糖市場とフェアトレードで流通する砂糖
3.マンドゥビラ農協にとっての1990年代の苦難
4.戦略的な認証取得と砂糖を選んだ思惑
5.フェアトレード・プレミアムで得た資金の効果的な活用
6.おわりに
4章 気候変動とフェアトレード[武田淳]
1.はじめに
2.いかにしてコーヒーはフェアトレード商品の中核になったか
3.なぜ、気候変動でコーヒーの収穫量が減少するのか
4.いかにして収穫量を維持するか
5.減りゆく収入をどのように埋め合わせるか
6.自然災害の被害を受けた生産者をいかに支援するか
7.温室効果ガスの削減をいかに図るか
8.「環境化」するフェアトレード商品
9.おわりに
5章 フェアトレードと森林資源との出会い[牧田りえ]
1.「南」の農村貧困層にとっての森林資源
2.商用の野生植物に適用されるフェアトレード認証
3.インドのフェアワイルド認証プロジェクト
4.採集者たちの反応
5.認証の適用における野生植物の特殊性
6.森林資源の採集者に役立つフェアトレードとは
6章 反プランテーションとしての民衆交易――農民の「自立」論再考[箕曲在弘]
1.民衆交易とフェアトレード
2.民衆交易の核心
3.農民の「自立」を目指す民衆交易
4.バランゴンバナナ事業の農民への直接的・間接的影響
5.民衆交易の意義――家族農業に寄与するオルタナティブな経済圏
7章 フェアトレードの目標再考――サステナブル商品としてのルイボス茶を例として[池上甲一]
1.ラベル型フェアトレードからの卒業
2.サステナブル商品としてのルイボス茶
3.ハイファルト協同組合の歩み
4.フェアトレード目標の達成度をどう評価するか
5.ラベル型フェアトレードからの卒業の先に何を見通すのか
終章 サステナブル市場とフェアトレードの行方[池上甲一]
1.消費から生産に遡る――本書の要点
2.サステナビリティ概念の移り変わりとその行方
3.フェアトレードの動揺を乗り越えて
あとがき
謝辞
索引
前書きなど
まえがき
フェアトレードという言葉を初めて知ったのは、いつ、どこだっただろうか? 商品のラベルで、店舗の看板や宣伝で、仕事の関係で、あるいは学校の授業であっただろうか。もしかすると、本書で初めて知るという人もいるかもしれない。今日ではさまざまなところでその名に接する機会が増えている。日本で普及が促進されるようになったのは2000年代であった。フェアトレードのコーヒーや紅茶は、今日ではスーパーやファミリーレストランでも気軽に手にできるようになるなど、身近な存在になってきたように思われる。本書は、そのフェアトレードが現在どのように展開され、どのような課題のもとに置かれているかを、複数の視点から報告し、考察するものである。
(…中略…)
本書は7名のさまざまな専門領域のフェアトレードに関する研究者が、調査や資料・データ分析を通じて考察を交えながら、その現状を報告するという形をとっていく。7つの章はそれぞれが一つの視点であり、本書はこの複数視点から観察できるそれぞれの面をつなぎ合わせることによって、フェアトレードという立体の展開図を描く試みと言っていい。対象を一つの綺麗な立体として描くのが「解説書」だとすれば、それをフラット化した展開図を描く本書は「報告書」と言えるだろう。実際、本書で描かれるのは、フェアトレードの一貫した思想や原理でもなければ、成功物語でも悲劇でも批判でもない。むしろ、フェアトレードを紆余曲折や矛盾、葛藤、交錯、突拍子もない出会いとして記述し、一つの物語には集約できない独特のリアリティを描くものである。
こうしたスタイルをとらざるを得ないのは、解説書的なフェアトレード論では、どうしてもサステナブル市場の中のフェアトレードを上手く記述できないからである。解説書は大事だ。社会正義の論理、公正な対価、社会変革意識、消費者市民社会、責任ある消費、それらの議論が重要であることに違いはない。だが、フェアトレードに関わる人々を観察してみると分かるのは、生産者には生産者自身の生計維持や資源管理戦略、企業には企業自身のマーケティングやリスク管理、消費者には消費者自身の生活や嗜好があり、そしてそれら各々の関心の中にフェアトレードが位置づけられていて、そうであるがゆえに上手くいったり、ときには上手くいかなかったりするということだ。このゴツゴツした手触りのリアリティを捉えるには、解説書はあまりにも綺麗に整い過ぎている。理論的な言葉――フェアトレードという言葉自体がすでにそうであるが――を使って現状を摑もうとすればするほど、手からスルリと何かがすり抜けていってしまう感覚に襲われるのである。
本書は、そのすり抜けていってしまう何かを捉えようとするものである。したがって、フェアトレードとはこういうものであるという定式や、かくあるべきという論理を提供するというよりも、生産、取引、消費の現場で実際に何が起きているのかを報告し、それを考察するというスタイルをとっていく。だからこそ、フェアトレードという言葉を初めて聞く人や高い関心を持っている人ももちろんだが、フェアトレードの解説を聞いて疑問を持ったり、批判的に思っている人たちにこそ、ぜひ本書を読んでもらいたい。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。
