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金子文子 獄中のうた 大田 美和(著) - 明石書店
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金子文子 獄中のうた (カネコフミコゴクチュウノウタ) アナーカ・フェミニストの短歌を文学テキストとして読む (アナーカフェミニストノタンカヲブンガクテキストトシテヨム)

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発行:明石書店
四六判
328ページ
上製
価格 3,200 円+税   3,520 円(税込)
ISBN
978-4-7503-6140-6   COPY
ISBN 13
9784750361406   COPY
ISBN 10h
4-7503-6140-2   COPY
ISBN 10
4750361402   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2026年7月20日
書店発売日
登録日
2026年6月22日
最終更新日
2026年7月8日
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紹介

家父長制社会、国家権力に抗い、人間は平等であるとし、自身で歩み、自分のことばで語った金子文子――。これまで光が当たってこなかった獄中で詠まれた短歌165首を、歌人である著者が丁寧に読み解く。没後100年に、新たな角度から光を当て、金子文子の豊かな実像を立ち上がらせる。

目次

 はじめに

第一部 金子文子の短歌を読む前に

 第一章 金子文子を文学テキストとして再読するために

 第二章 金子文子の短歌の諸問題
  (1)墨塗りという問題
  (2)『啄木選集』との関係
  (3)作者としての意識、読者への要望

 第三章 テキストの問題
  (1)五つの歌集
  (2)新聞・雑誌や書籍に公表された短歌

第二部 解釈と鑑賞

 第一章 独房と庭
  (1)獄庭の四季
  (2)自由を奪われて

 第二章 生い立ちと成人まで
  (1)両親について
  (2)月の歌
  (3)勤労学生
  (4)性愛、性暴力

 第三章 友情の歌
  (1)友だち
  (2)同志たち

 第四章 反逆の夢
  (1)同志 朴烈へ
  (2)反逆の夢

 第五章 獄中の執筆と読書
  (1)ペンだこ
  (2)読書の中から

 第六章 死の恐怖
  (1)死刑判決と恩赦
  (2)無期囚として
  (3)死の恐怖と、死の安らぎ

 第七章 監獄の内と外
  (1)社会批判
  (2)女看守と女囚
  (3)権力を守る男たち

 第八章 最後の八首の問題

 終章

 註
 参考文献
 あとがき

資料篇
 1 金子文子の短歌五十首セレクション
 2 「金子文子歌集 補遺」について
 3 雑誌等に公表された短歌
  (1)「獄中雑詠」三十首
  (2)「ツツヂの花」五首
 4 私信(書簡)の中に書かれた短歌 合計三十四首
  (1)一九二五年六月十六日
  (2)四月二十四日
  (3)九月一日
  (4)年月日不明
  (5)弁護士山崎今朝弥宛
 5 『獄窓に想ふ』黒色戦線社、一九八七年
 6 「自我人社諸兄へ」『自我人』第二巻第一輯(生前最後の寄稿)
 7 金子文子と関係者についての年譜

前書きなど

はじめに

 (…前略…)

 植民地主義と天皇制国家に反対した金子文子が短歌を作っていたと聞くと、短歌は「奴隷の韻律」であり、天皇制国家を支えた伝統詩型とみなす人たちの中には驚く人がいるようだが、彼女は、石川啄木の登場により、短歌の受容と創作が新たな局面を迎えた時代に生きていた。獄中の金子文子は、啄木の歌を引用した手紙で『啄木選集』を差し入れてほしいと頼んでいる。
 歌人の田中綾は、「〈恩赦〉の詩型と金子文子――歌集『獄窓に想ふ』」の中で、短歌は個人にとっては抒情の調整弁であり、国家を言祝ぐ場ではなにかを許してしまう伝統の詩型という側面があると述べて、これを〈恩赦〉の詩型と名付けている。そして、短歌形式と天皇制に「甘やかなつながり」をみる一方で、金子文子にとって、短歌とは石川啄木へのあこがれ、ただそれのみであったと述べ、中浜哲や後藤謙太郎と同様に、〈恩赦〉の詩型の意識を持たずに短歌を作ったと論じている。
 戦前の日本、とりわけ、十五年戦争の挙国一致体制の下における、天皇主権の国家と詩歌の協力関係は、短歌や俳句にとどまらず現代詩も例外ではなかった。金子文子は、そのような時代の始まる少し前にこの世を去っている。

 (…中略…)

 本書では、他のアナキストの詩や短歌も、時代背景を考える資料として取り上げる。多くの活動家が短歌を作っていたことの意味を、改めて考える機会ともしたいのである。
 金子文子が手記に残した、今も息づいているような力強い言葉に魅せられた者の一人として、金子文子の短歌を読みやすい形で、多くの読者に手渡したい。宅下げされた原稿は、その後紛失したので定本を作ることは不可能だが、複数の媒体に発表された短歌の異同をたどりながら、金子文子の短歌の真の姿に近づいていきたいと思っている。
 金子文子の場合は、本人が歌集を編纂する時間の余裕はなく、同志の古川時雄や栗原一男が歌集の構成に携わっている。ただし、書簡の中で、地の文に続けて本人が記載した短歌の場合は、連作意識によって作られたものがある。
 金子文子の短歌の背後には、伝記的・社会的・歴史的・文化的コンテキスト(背景、文脈)が広がっている。そのようなコンテキストを理解し、短歌という窓を通して、金子文子とその仕事を一望する一助としたい。
 第一部では、最初に、金子文子の書き残したものを、文学の視点で読む必要性について議論する。そのために、金子文子の書き残したもののうち、厳密に考察されていない短歌作品を取り上げ、文学的視点で読むための前提に関するいくつかの問題点を押さえておきたい。
 第二部では、金子文子の短歌のヴァリアントを取り上げ、別ヴァージョンの語句の異同について読み比べ、歌の語句の背後にある歴史や社会や文化を視野に入れながら、解釈と鑑賞を行っていく。

著者プロフィール

大田 美和  (オオタ ミワ)  (

中央大学文学部教授(英文学)、歌人、詩人。東京大学大学院人文科学研究科英語英文学専攻博士課程単位取得満期退学。専門は近代イギリス小説、ジェンダー論。1980年代後半に朝日新聞「朝日歌壇」で活躍。未来短歌会で近藤芳美に師事。1988年「朝日歌壇賞」受賞。1994年、日本ブロンテ協会奨励賞受賞。『朝鮮学校無償化除外反対アンソロジー』、「「女の平和」国会ヒューマンチェーン」、『詩の檻はない』に参加。
 主な著書・業績に、歌集『きらい』(河出書房新社、1991年)、『アン・ブロンテ――二十一世紀の再評価』(中央大学出版部、2007年)、『大田美和の本』(北冬舎、2014年)、『世界の果てまでも――大田美和思考集〔エッセイ〕』(北冬舎、2020年)、「尹伊桑と近藤芳美の幼少年期――近代朝鮮における作曲家と歌人の自己形成」『政策文化総合研究所年報』(第23号、2020年)、「在日コリアンの歴史と今」『人の移動とエスニシティ――越境する他者と共生する社会に向けて』(明石書店、2021年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。