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世界政治から語るラテンアメリカの歴史
植民地時代から今に続く歴史の重み
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年5月30日
- 書店発売日
- 2026年5月28日
- 登録日
- 2026年4月16日
- 最終更新日
- 2026年5月22日
紹介
コロンブスの航海でヨーロッパ、その後世界とつながったラテンアメリカ・カリブ海地域はどのような軌跡を辿って今のかたちになったのか。先行研究を踏まえ、長年の外交官としてのリアルな経験をもとに語りながら、トランプ政権の西半球政策重視の政策の背景を解き明かす。
目次
まえがき
序章 新旧の世界が出会った大航海時代
1.大航海時代の始まり
2.大航海時代の歴史的意味
3.コロンブスは文明のあった地に到達
4.外縁部に追いやられた先住民の受難
5.新大陸からの贈り物
6.多様なラテンアメリカは四つの世界
おわりに
第1章 スペインの植民地時代が遺したもの
はじめに
1.大航海時代のスペイン
2.封建主義下のアメリカ植民地
3.カトリック教が支配的な地域
まとめ――植民地時代が遺したもの
第2章 多様性に富むラテンアメリカの世界
はじめに
1.ポルトガル領植民地のブラジル
2.ヨーロッパ列強による西インド諸島の植民地化とクレオール文化
まとめ――ブラジルとカリブ海諸国の世界
付論 カリブ海の島の争奪
第3章 啓蒙思想を灯火に独立
はじめに
1.独立前のイスパノアメリカ
2.ヨーロッパから来た啓蒙主義の波
3.独立戦争の経緯
4.世界政治の中の独立運動
5.イスパノアメリカの建国
6.ブラジルの独立
おわりに
第4章 世界から見た19世紀の地域情勢
はじめに
1.19世紀の覇権国はイギリス
2.19世紀前半はカウディリョ政治
3.ブラジルの帝政
4.国境を画定した隣国との戦争
5.帝国主義の時代とラテンアメリカ
6.ラテンアメリカへの英米の経済進出
7.寡頭政治
まとめ
第5章 南米のポピュリズムとメキシコ革命
はじめに
1.ポピュリズムとその政治
2.メキシコ革命とポピュリズム
3.チャコ戦争
まとめ
第6章 米帝国主義とカリブ海の国々
はじめに
1.米国の帝国主義
2.汎米会議
3.ベネズエラ・英領ギアナ国境紛争
4.キューバの独立運動と米西戦争、保護国化
5.パナマと運河
6.債務問題で干渉されたドミニカ共和国
7.ニカラグア介入とサンディーノの反米闘争
8.ウィルソンのハイチに対する軍事干渉
9.ルーズヴェルトの善隣外交
10.第二次世界大戦に向かう米州
まとめ
第7章 冷戦が始まる米州とキューバ革命
はじめに
1.冷戦が始まる戦後の世界
2.米州の集団安全保障体制
3.米国のグアテマラ干渉
4.米州を震撼させたキューバ革命
5.西半球の左翼ゲリラ活動
6.ケネディの左翼対策
まとめ
付論 米国のボリビアとグアテマラへの対応の違い
第8章 権威主義体制と民政化
はじめに
1.権威主義体制の時代
2.軍政が生まれる背景・理由
3.都市の左翼テロ活動と軍政
4.ブラジルの官僚的権威主義体制
5.ポピュリズムを担うペルーの軍政
6.個人独裁のドミニカ共和国
7.米国のラテンアメリカ政策
おわりに――民政になった理由
第9章 中米紛争、対外債務危機、メキシコの民主化
はじめに
1.ニカラグア紛争と米国
2.域内国による和平努力
3.エルサルバドルの内戦
4.対外債務危機の1980年代
5.債務危機で動き始めたメキシコの民主化
おわりに――民主主義の発展を妨げる理由
第10章 ポスト冷戦期のラテンアメリカ
はじめに
1.冷戦後の米国のラテンアメリカ政策
2.新左翼主義の台頭
3.多様な地域統合の動き
4.ラテンアメリカとの関係を深める中国
おわりに――ラテンアメリカのこれから
付論 地理と歴史の深いつながり
あとがき
引用文献
人名索引
事項索引
前書きなど
まえがき
西半球にあるラテンアメリカ・カリブの世界は旧英領などの島嶼国があるカリブ海と中米・南米大陸の33か国からなる。一体感を保持してきたこの地域がコロンブスの新大陸到達後500年余の歴史の中で、どのような軌跡を辿りながら今のかたちになったのかが本書のテーマである。
(…中略…)
この本は時代で区切って序章と10章から構成されている。序章では新大陸にもともといた先住民とその文化、それを征服したスペイン、ポルトガルの大航海時代のことが書かれている。ラテンアメリカ史の舞台を説明する章である。第1章はスペインの植民地時代がテーマである。今日の政治社会の原型ができた時期で、西欧文化圏に組み込まれラテンアメリカの政治社会風土が生まれた。それは法が尊重されるよりも人と人との関係が優先される気風で、今でもカウディリョ(統領)政治としてこの地域の慣行になっている。第2章では、この地域が多様な世界からなっており、スペイン語圏とは違うポルトガル植民地であったブラジルとカリブ海があることが述べられる。カリブ海の島嶼国はイギリス、フランスなどの植民地になり、砂糖生産のためにアフリカ系黒人奴隷が輸入され大陸部とは違うクレオール文化になった。
第3章では、ナポレオンのイベリア半島侵攻を機に啓蒙思想に目覚めた現地生まれの白人層クリオーリョが19世紀初めに独立運動を始め、新生国家をつくったことが述べられる。王室が逃れてきたブラジルは帝政になった。その結果この地域はフランス革命やアメリカ合衆国の独立と異なり封建的な側面を残した。第4章では独立後各国が多様な道を歩み始めた時代が語られる。この時代にヨーロッパの産業革命で必要となった資源、食料などを輸出する国際経済体制ができた。独立後国境線が不明確であったことで隣国と戦争が起こった。
第5章は、19世紀後半から南米などで輸出により財を成した寡頭層の政治が始まり、それに反発する都市の中間層・労働者階層が改革を求めてポピュリズム運動を起こしたことがテーマである。カトリック教会の力が強く、カウディリョによる政治が続いたメキシコでは農民らが加わって革命になった。
20世紀に入る頃から西半球ではアメリカ合衆国の力が圧倒的になる。第6章は米国のカリブ海地域に対する帝国主義がテーマである。米西戦争とキューバの保護国化、パナマ運河の建設、ニカラグア干渉とサンディーノの反米闘争などが説明される。各国がこの軍事干渉に反発し、フランクリン・D・ルーズベルト米大統領は第二次世界大戦を前に善隣外交を始めた。第7章では戦後の冷戦時代に米国が進めた反共政策、米中央情報局CIAのグアテマラに対する干渉などが語られる。その米国の政策に反旗を翻したのがカストロであった。ここではキューバ革命、ラテンアメリカに対する影響について説明される。それを憂えたケネディ米大統領は「進歩のための同盟」を提唱した。
第8章では、この地域が歴年の宿痾として貧困、貧富の格差が大きいことから左翼活動が生まれ、それを懸念した軍が始めた権威主義体制について語られる。その軍政も対外債務問題や幾多の人権侵害を起こしたことで1980年代後半に退場し民政になった。メキシコでは対外債務の問題で革命後の一党独裁体制が崩壊に向かった。第9章では、都市があまり発展しなかったカリブ海地域の国ではポピュリズム運動が起こらずカウディリョ政治が続いたこと、中米で民主主義と格差是正を求めて武力闘争が起こったことが説明される。安全保障の危機を感じたロナルド・レーガン米政権が干渉したので地域紛争に発展したが、地域がイニシアティブをとる交渉によって和平が達成された。
第10章ではポスト冷戦期が扱われる。軍政時代の対外債務問題を解決するために市場原理に基づく新自由主義の政策が主流になった。ところが経済発展の問題を解決しても貧富の格差の是正には有効な手段でなかったことから、その是正を旗印に多数の新左翼の国が生まれた。ベネズエラのウゴ・チャベス政権がその代表格である。米国は冷戦が終焉したことで一時ラテンアメリカに対する関心をなくした。ところが21世紀になると中国の進出が著しく、トランプ第二期政権は再び西半球に対する関心を強め、安全保障と権益確保を重視する政策を打ち出した。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。
