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コロナ禍を生きた移民と家族
中国・フィリピン・ベトナムと日本を結ぶネットワークと共同体の持続と変容
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年3月31日
- 書店発売日
- 2026年4月10日
- 登録日
- 2026年3月17日
- 最終更新日
- 2026年4月7日
紹介
コロナ禍という未曽有の危機は、人の国際移動、移民とその家族、移住先国での移民集団にどのような変革をもたらしたのか。中国系、フィリピン系、ベトナム系移民を対象にした綿密な調査により、各移民グループの相互扶助活動に着目し、その主体性と連帯性を明らかにする。
目次
まえがき
序章 「非移動時代」の移民研究――コロナ禍における別様の共同性の創発[賽漢卓娜]
第1節 はじめに
第2節 コロナ禍と移民
第3節 本書の構成
第Ⅰ部 トランスナショナルな「ホーム」を生きる移民たちの実践
第1章 コロナ禍による移動制限と移動の意味――法律実務家の視点から[宮崎真]
第1節 コロナ禍での「移民」のトリアージと移民の行動変容
第2節 移動の自由の位置づけ
第3節 本章で対象とする外国人
第4節 国籍および在留資格による制約の差
第5節 時期ごとの出入国および国内制限の整理
第6節 移動の状況
第7節 各国のコロナ対策が在日外国人に与えた影響
第8節 移動の傾向と在留資格による差異
第9節 日本での生活安定化の戦略――帰化および永住権取得
第10節 まとめ――在留外国人の国境、家族、生活基盤の尊重
第2章 中国人結婚移住女性のトランスナショナルなケア実践――日本東北地方在住者の経験を手がかりに[王石諾]
第1節 はじめに
第2節 トランスナショナルな親族関係の困難と再編――移住女性とコロナ禍の移動制限
第3節 調査概要
第4節 女性一人ひとりの語りから読み解くトランスナショナルな親のケア実践
第5節 やむをえず遠くから看取るという選択――容氏と杏氏のライフストーリー
第6節 日中の狭間に模索されてきた移住女性による遠隔ケアと喪失の経験
第7節 おわりに
第3章 フィリピン人結婚移民女性が経験したコロナ禍――家族と共同体の再発見[矢元貴美]
第1節 はじめに
第2節 在日フィリピン人の来日背景
第3節 コロナ禍前後のフィリピン国籍者の出入国状況
第4節 中高年の結婚移民への影響
第5節 家族と共同体の再発見
第4章 コロナ禍で得た選択――岡山県美作市のベトナム人技能実習生と受け入れ企業[二階堂裕子]
第1節 はじめに
第2節 過疎地域の企業と技能実習生
第3節 ベトナム人にとっての国際移動
第4節 コロナ禍の技能実習生
第5節 おわりに
【コラム1】日本で暮らす中国系の子どもの教育的課題[李原翔]
【コラム2】コロナ禍を経た長崎のベトナム系子育てコミュニティ――支え合いと、アフターコロナにおける母語・母文化の継承[堀江直美]
第Ⅱ部 コロナ禍と送り出し社会
第5章 中国東北部の僑郷における移民の送り出しメカニズム――コロナ禍前後の比較分析を通じて[張龍龍]
第1節 はじめに
第2節 東北部最大の僑郷・方正県の歴史
第3節 先行研究のレビュー
第4節 研究目的と方法
第5節 コロナ禍以前における方正県出身者の送り出し
第6節 コロナ禍と方正県の移住動向
第7節 おわりに
第6章 国境を越えるヘルスケアと終わらないサクリピショ(自己犠牲)――東京在住のフィリピン人女性移住労働者が語るコロナ禍とその後[ジョセリン・O・セレロ/高畑幸 訳]
第1節 はじめに――報われなかったサクリピショ(自己犠牲)
第2節 コロナ禍の前後の日本とフィリピンにおける健康安全保障システム
第3節 概念的考察――サクリピショ(自己犠牲)としての国境を越えるヘルスケアの提供
第4節 東京で暮らすフィリピン人移住労働者の国境を越えるヘルスケア戦略
第5節 健康送金
第6節 国境を越えた癒し――デジタル医療と医療従事者
第7節 考察と結論
第7章 コロナ禍を経たベトナムにおける移住労働の動向[ファム・ティ・ビン/ダム・グエン・トゥイ・ズオン/ブイ・ヴー・タイン・ニャット/高畑幸 訳]
第1節 はじめに――ベトナム国内、および国外への移動
第2節 ベトナム国内における移住労働
第3節 ベトナムからの国際移住労働
第4節 結語
【コラム3】 コロナ禍に帰国したベトナム人労働者たち[宮崎真]
第Ⅲ部 日本のエスニック・コミュニティの変容
第8章 移民たちのトランスナショナルな共助・公助の展開――コロナ禍における支援活動からみた在日中国人・フィリピン人・ベトナム人[賽漢卓娜/高畑幸/矢元貴美]
第1節 はじめに――移民をめぐる「共助」「公助」という視角
第2節 研究対象および研究方法
第3節 コロナ禍をめぐる定住中国系移民の団体――長崎の新華僑を事例に
第4節 在日フィリピン人の共助――名古屋市中区栄東地区を事例に
第5節 コロナ禍が在日ベトナム人へ及ぼした影響と在日ベトナム人への支援
第6節 おわりに
第9章 「非移動時代」のモビリティとつながりの再構築――中国系移民の互助組織が経験したコロナ禍とその後[賽漢卓娜]
第1節 はじめに
第2節 中国人シングルマザーのコロナ罹患記
第3節 互助組織としての移民コミュニティ/ネットワークと災害ユートピア
第4節 「非移動時代」のモビリティと〈共〉の社会理論
第5節 中国系団体Dチャリティーの生成――災害ユートピアを超えられるか
第6節 終わりなき「災害後のユートピア」と複数の〈境界〉に生まれる「共」
第7節 「非移動時代」の移動の複合体
第8節 むすび:危機下での再構築――ヒトの移動の「物理的空間」から「社会的つながり」への転換
第10章 バーチャルな相互扶助――ライブ配信「ネストール兄さんにきいてみよう」にみられるコミュニケーション、支援、連帯[レジー・カパシオ・フィガー/高畑幸 訳]
第1節 はじめに
第2節 生活の改善――ネストール兄さんのフィリピン・コミュニティへのミッション
第3節 ソーシャル・メディアとライブ配信
第4節 地域に根ざした情報共有と支援
第5節 方法を見つける――移民の経済的生存戦略
第6節 ユーモア――つながり、教育、ケアとして
第7節 混乱からコミュニケーションへ
第8節 コロナからの生還――ケイトが経験した道のり
第9節 声を上げ、主体性を主張する
第10節 危機の時代に橋を架ける――政策提言
第11節 まとめと個人的な共感
【コラム4】ベトナム人の帰国困難者を受け入れた徳林寺と支援の輪[土井佳彦]
【コラム5】青空の下で翼を支えた人とその家族――フィリピン航空大阪支店長の回想[斎藤ネリサ/高畑幸]
終章 コロナ禍は移民と家族をどう変えたか[高畑幸]
第1節 はじめに
第2節 移住ネットワークと労働移動の変化
第3節 移住者同士の共同性の変化
第4節 3つの国の出身者たちの共通点と相違点
第5節 おわりに
あとがき
前書きなど
序章 「非移動時代」の移民研究
(…前略…)
第3節 本書の構成
本書は、各方面の専門家がその専門分野を取り扱い、日本国内の研究者だけではなく、研究対象とした中国、フィリピン、ベトナムの研究者も加わっている点に特徴がある。執筆者は、日本、中国、フィリピン、ベトナムの出身であり、外国をフィールドにする日本人や、日本で大学院に在籍し、帰国して出身国で活躍する外国人など、送り出し国も、受け入れ国である日本も知悉している研究者で構成されている。
本書は3部に分かれる。第Ⅰ部は日本に基盤を置く研究者が日本の視点から、第Ⅱ部は中国、フィリピン、ベトナムに基盤を置く研究者が送り出し社会の視点から、第Ⅲ部は移民の共助・公助という視点から執筆している。
具体的には、各部は次のとおりである。
第Ⅰ部は「トランスナショナルな『ホーム』を生きる移民たちの実践」と題されており、次の4つの章(国境管理、中国・フィリピン・ベトナム)と2つのコラム(中国・ベトナム)で構成されている。4つの章は、法律実務家である弁護士が本書の背景となる在日外国人に関して全般的な説明を加えており(第1章)、中国については、結婚移住者の国境を越えた親の介護への影響(第2章)と子どもの教育(コラム1)、フィリピンについては、結婚移住女性の家族と共同体(第3章)、ベトナムについては、技能実習生と受け入れ企業の関係(第4章)、およびベトナム人の育児サークル(コラム2)が紹介されている。
第Ⅱ部は「コロナ禍と送り出し社会」と題されており、フィリピン1名、ベトナム3名、中国1名の外国人研究者が送り出し社会側の視点を踏まえた論証をしている。中国については地縁・血縁に基づき20世紀後半から多くの移民を輩出した中国東北部の移民の動向(第5章)、フィリピンについては、ヘルスケアとフィリピン人特有の家族のための自己犠牲(第6章)、ベトナムについては、ベトナム人の各国への移民動向(第7章)と送り出し国であるベトナムで行った日本語学校の関係者、およびコロナによる帰国者への聴き取り(コラム3)である。
第Ⅲ部は「日本のエスニック・コミュニティの変容」と題されており、日本における各国出身者の共助の団体や移民同士のつながりについて扱っている。中国・フィリピン・ベトナムの共助や公助の全体像(第8章)を述べたうえで、中国についてはコロナ禍を契機として設立され多くの人を巻き込み活動領域を広げながら現在まで続いているボランティア団体(第9章)、フィリピンについてはコロナ禍での移民のつながりを形成したライブ配信(第10章)と航空会社に勤務し移動を支えた人へのインタビュー(コラム5)、ベトナムについては帰国困難者を受け入れた寺と支援の輪(コラム4)が紹介されている。
多様な視点からなる各章を「終章」で総括し、出身国による相違点と共通点を整理し、「移住者たちの共同性と草の根のレジリエンスから学び、コロナ禍の経験を今後の災害(感染症および自然災害)への備えとすることの重要性」を示している。
上記内容は本書刊行時のものです。
