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カナダの公用語マイノリティ
二つの言語がせめぎあう空間におけるアイデンティティの継承
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年3月31日
- 書店発売日
- 2026年4月3日
- 登録日
- 2026年3月4日
- 最終更新日
- 2026年4月1日
紹介
カナダの公用語マイノリティとは、英仏二つの公用語のうち少数派の言語を日常的に用いる人々のことであり、どちらの話者であるかは地域の区切り方によって変わる。人文地理学および地言語学の視点から、彼らがどのように自身の言語や文化、アイデンティティを継承してきたのかを明らかにする。
目次
はしがき
第1章 はじめに
1 本書の目的とカナダの公用語マイノリティをとりまく現実
2 カナダにおける地言語学的・人口言語学的研究の発展
3 ケベック州外のフランコフォンに関する研究
4 ケベック州のアングロフォンに関する研究
5 本書の構成
第2章 カナダにおける二言語主義の地域的展開
1 はじめに
2 カナダの連邦制の特徴と言語景観
3 カナダにおける母語人口の動向
4 カナダにおける二言語話者人口の動向
5 カナダにおける二言語主義の課題
6 おわりに
第3章 ニューブランズウィック州におけるアカディアンの文化継承
1 はじめに
2 アカディアの歴史的発展
3 ニューブランズウィック州南東部のアカディアン・コミュニティにおける婚姻と家族
4 おわりに
第4章 ノヴァスコシア州ハリファクス地域におけるフランコフォンの言語維持とフランス語系コミュニティの発展
1 はじめに
2 ノヴァスコシア州におけるフランコフォンの居住分布と言語使用状況
3 ノヴァスコシア州におけるフランコフォンに対する制度的支援の進展
4 ハリファクス地域におけるフランコフォンの言語維持とフランス語系コミュニティの発展
5 おわりに
第5章 ノヴァスコシア州ハリファクス地域におけるフランコフォンの社会的特性
1 はじめに
2 ハリファクス地域におけるフランコフォンのフランス語使用状況
3 ハリファクス地域に居住するフランコフォンの学歴と就業
4 ハリファクス地域に居住するフランコフォンの居住地移動
5 おわりに
第6章 地域を展示する世界アカディアン会議――沿海諸州のフランコフォンのイベントが果たす役割
1 はじめに
2 アカディアンと世界アカディアン会議
3 地域を展示する世界アカディアン会議
4 近年の世界アカディアン会議が果たす役割
5 おわりに
第7章 カナダ・アメリカ国境地域におけるアカディアンのアイデンティティ
1 はじめに
2 フランス人の入植と国境の画定
3 セントジョン川上流地方の景観とアカディアン
4 失われるカナダとのつながりとメイン州におけるアメリカ化の進行
5 アカディアン・フェスティヴァルと世界アカディアン会議の開催――カナダとのつながりは復活するか
第8章 沿海諸州におけるアカディアンの文化遺産を活用した地域活性化
1 はじめに
2 カナダの国史跡
3 アカディアンと国史跡
4 ノートル・ダム・ドゥ・ラソンプション大聖堂の史跡指定と地域活性化
5 おわりに
第9章 ケベック州におけるアングロフォンの居住分布と言語環境への適応
1 はじめに
2 カナダ国勢調査の地域区分とケベック州の人口の特徴
3 ケベック州におけるアングロフォンの居住分布
4 モントリオールにおけるアングロフォンの言語環境への適応
5 おわりに
第10章 ケベック州モントリオールにおけるアングロフォンの言語使用とアイデンティティ
1 はじめに
2 モントリオール島およびウエストアイランドにおける言語人口構成の変化
3 モントリオール島におけるアングロフォンの言語使用とアイデンティティ
4 おわりに
第11章 むすびに代えて――転換期を迎えたカナダの公用語マイノリティ
1 21世紀初頭におけるカナダの公用語マイノリティの状況
2 転換期を迎えたカナダの公用語マイノリティ
付録1 ハリファクスにおけるフランコフォンの社会経済的特性に関する調査票(2003年6月実施)
付録2 1970年代以降のモントリオールにおけるアングロフォンの言語適応に関する調査票(2006年2月実施)
文献
索引
あとがき
前書きなど
第1章 はじめに
(…前略…)
5 本書の構成
以上の研究動向をふまえ、本書はカナダの公用語マイノリティのなかでも、おもに沿海諸州のアカディアンとケベック州のアングロフォンに注目し、その言語や文化、アイデンティティの継承をおもにカナダ国勢調査や1990年代末から2019年夏までに実施した現地調査に基づいて検討する。
本書は11章で構成される。第2章「カナダにおける二言語主義の地域的展開」では、二言語主義の空間への反映として言語景観と二言語話者人口に着目し、筆者がこれまでに実施してきた現地調査やカナダ国勢調査に基づいて、カナダの二言語主義の現状と課題を検討する。第3章「ニューブランズウィック州におけるアカディアンの文化継承」では、ケベック州外のフランコフォンの事例として沿海諸州のアカディアンに注目し、その歴史を概観したうえで、カトリック教会の教会簿や聞き取り調査に基づいてニューブランズウィック州におけるアカディアン・コミュニティの婚姻パターンや家族史を検討し、アカディアンの文化継承を考察する。第4章「ノヴァスコシア州ハリファクス地域におけるフランコフォンの言語維持とフランス語系コミュニティの発展」では、まずノヴァスコシア州におけるフランコフォンの居住分布と言語使用状況を非都市地域の伝統的フランス語系コミュニティと都市のフランス語系コミュニティを対比しつつ検討したうえで、州都ハリファクスを事例に、おもに聞き取り調査に基づいてカナダの英語圏都市におけるフランコフォンの言語維持とフランス語系コミュニティの発展を明らかにする。第5章「ノヴァスコシア州ハリファクス地域におけるフランコフォンの社会的特性」では、第4章と同様にノヴァスコシア州の州都ハリファクスを事例に、質問紙調査に基づいてフランコフォンのメディア利用やサービス利用、居住地移動を検討し、カナダの英語圏都市におけるフランコフォンの社会的特性を明らかにする。
第6章から第8章は、イベントや文化遺産の活用を切り口に、現代のアカディアンと地域とのかかわりを考察する。第6章「地域を展示する世界アカディアン会議――沿海諸州のフランコフォンのイベントが果たす役割」では、アカディアン社会の重要イベントとなった世界アカディアン会議に注目し、2014年の第5回会議と2019年の第6回会議の観察を中心とする現地調査および現地新聞記事の分析に基づいて、近年の世界アカディアン会議が地域に果たしている役割を明らかにする。第7章「カナダ・アメリカ国境地域におけるアカディアンのアイデンティティ」では、1970年代から開催されてきたアカディアン・フェスティヴァルに着目し、カナダ側との関係をふまえつつ、アメリカ合衆国メイン州北部のセントジョン川上流地方に居住するアカディアンの文化とアイデンティティを検討する。第8章「沿海諸州におけるアカディアンの文化遺産を活用した地域活性化」では、国立公園局の史跡情報データベースおよび現地調査に基づいて、沿海諸州のアカディアンに関連する史跡を事例に、エスニック集団の文化遺産を活用した地域活性化の試みを検討する。
第9章と第10章は、もう一つの公用語マイノリティであるケベック州のアングロフォンに目を向ける。第9章「ケベック州におけるアングロフォンの居住分布と言語環境への適応」では、カナダ国勢調査に基づいてケベック州におけるアングロフォンの居住分布を三つの地域スケールで明らかにしたうえで、英語を使用言語とする組織や古くから居住するアングロフォン住民への聞き取り調査に基づいてモントリオールにおけるアングロフォンの言語環境への適応を検討する。第10章「ケベック州モントリオールにおけるアングロフォンの言語使用とアイデンティティ」では、アングロフォンが地域人口にしめる割合の高いモントリオール郊外のウエストアイランドとよばれる地域を取り上げ、カナダ国勢調査に基づいて人口言語学的状況を確認したうえで、質問紙調査に基づいてアングロフォンの言語使用とアイデンティティを考察する。
最後に、第11章「むすびに代えて――転換期を迎えたカナダの公用語マイノリティ」では本書の議論をまとめ、2020年以降の動向を概観しつつ、残された課題に言及する。
上記内容は本書刊行時のものです。
