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東アジアのケアレジームの再編に向けて 全 泓奎(編著) - 明石書店
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東アジアのケアレジームの再編に向けて (ヒガシアジアノケアレジームノサイヘンニムケテ) ケアの担い手をめぐる国際研究 (ケアノニナイテヲメグルコクサイケンキュウ)

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発行:明石書店
A5判
256ページ
上製
価格 4,500 円+税   4,950 円(税込)
ISBN
978-4-7503-6089-8   COPY
ISBN 13
9784750360898   COPY
ISBN 10h
4-7503-6089-9   COPY
ISBN 10
4750360899   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2026年3月25日
書店発売日
登録日
2026年2月27日
最終更新日
2026年3月27日
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紹介

近年、東アジアの域内の移動が増加するなかで、各国・地域が共通して抱えている課題として「ケアの危機」が浮かび上がっている。その構造を捉え直し、それぞれの課題に応えるための「ケアレジームの再編」に向けた、東アジア比較研究の一歩となる論集。

目次

 はじめに

第1部 ケアの危機からケアの再生へ

第1章 東アジアにおけるケアレジームの再編を問う――ケアの危機からケアの再生に向けた社会開発アプローチへ
 1.東アジアにおける生産主義的福祉資本主義モデルとケアサービス
 2.東アジアのケアを取り巻く現状
  1)高齢化する東アジア
  2)少子化が進む東アジア
  3)矮小化する東アジアの家族
  4)ケアレジームについて
 3.ポスト工業社会における東アジアの新しい社会的リスクの急増
 4.ケアレジームにおける国家・市場(雇用)・家族(コミュニティ)の役割変容とケアの危機
  1)韓国におけるヤングケアラー(家族ケア青(少)年)問題に対する社会的関心の背景
  2)東アジアにおけるダブルケア状況について
  3)ケア労働を取り巻く外国人受け入れ政策
 5.まとめに代えて――社会的経済・社会開発の可能性

第2章 ひとり親家庭に対する公的なケアサポートの課題――ひとり親家庭日常生活支援事業の利用実態から
 1.はじめに
 2.ひとり親の生活実態と時間の貧困
 3.ひとり親家庭日常生活支援事業
  1)制度の変遷
  2)制度の概要と現状
 4.利用者の制度への接近の実態――実態調査より
  1)基本的属性
  2)子育ての状況
  3)本事業の利用
  4)満足度と要望
  5)制度に関しての課題―当事者からの意見・要望
 5.自治体の現場の声――自治体ヒアリングより
  1)実施体制と委託先に関する状況・課題
  2)利用者とのマッチングと情報周知の課題
 6.公的サービスとしての課題
  1)本事業の有効性と低い周知度
  2)サービスの非普遍性と民間セクターとの協働
  3)曖昧なサービス内容と自治体間の相違
 7.最後に――公的サービスとしての責任とジェンダー化されたケア役割の社会化

第3章 地域福祉における子育て支援の変容
 1.はじめに
 2.子育て支援政策と地域福祉
 3.社会福祉協議会による子育て支援の動向
  1)堺市の概況
  2)堺市社会福祉協議会の特徴
  3)校区福祉委員会による子育て支援活動
  4)こども食堂と地域福祉活動
 4.地域福祉と子育て支援の一体的な展開に向けて
  1)混合するセクター
  2)中間支援組織の役割

 【コラム①】家族も自分も大切にできる社会へ
 【コラム②】堺市におけるダブルケア支援事業

第4章 当事者の声からみえてきた子ども・若者ケアラー支援の課題
 1.ヤングケアラーの社会的背景と日本における社会問題化・施策化
 2.「子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト」(YCARP)について
 3.YCARPで明らかになった当事者の実態――ケアの連続性
  1)ヤングケアラーから若者ケアラーへ
  2)子ども・若者ケアラーからアダルトケアラーへ
  3)ケアの連続性
 4.今後の子ども・若者ケアラー支援における課題と方向性
  1)移行期の若者ケアラーを支える仕組みの必要性
  2)年齢にかかわらない「ケアラー」を支える仕組みの必要性
 5.ケアラー支援の具体化に向けて

 【コラム③】総社市ケアラー支援の推進に関する条例について
 【コラム④】ヤングケアラー支援条例制定の動き
 【コラム⑤】市民・行政・議会でつくりあげるケアラー支援

第5章 危機から照射する日本のケアレジーム――災害時の断絶と平時の歪み
 1.危機が照射する現実
 2.危機時のケアレジーム
 3.日本のケアレジームからみた遅れてきたサードセクターの位置
 4.平時に影響する危機時のメカニズム

 【コラム⑥】被差別部落におけるまちづくりと子ども支援

第2部 東アジアのケア実践

第6章 中国の少子化対策の課題――ケアの視点からみる発生要因との乖離
 1.はじめに
 2.少子化の現状――「三重苦」に直面している中国
  1)出生率の低下
  2)出生数の減少
  3)年少人口比重の下降
 3.少子化の「三重苦」をもたらす複合的要因
  1)出産適齢女性人口の減少
  2)若者の結婚・出産の意識変化
  3)結婚・出産のメリットの希薄化
 4.出産・子育てと晩婚化・未婚化支援に焦点をあてた政策
  1)時間的支援に関する政策
  2)経済的支援に関する政策
  3)保育サービスに関する政策
  4)晩婚化・未婚化に焦点をあてた政策
 5.少子化対策と現実の乖離構造
  1)ジェンダー不平等構造と家庭内ケアの再生産
  2)地域格差と社会資源の不均衡
  3)社会的価値観の変容と少子化対策の非整合
 6.むすびに代えて

第7章 台湾における家族支援政策と子どもへのケアの課題――高リスク家庭支援とヤングケアラーの視点から
 1.問題の背景と本章の目的
 2.台湾における家族支援――高リスク家庭への支援
  1)台湾の家族を取り巻く状況
  2)高リスク家庭への支援の開始
  3)「高リスク家庭へのケアとガイダンス計画」の概要
  4)「高リスク家庭へのケアとガイダンス計画」への評価
  5)台湾の家族支援の特徴と子どもへの個別支援の限界
 3.家族単位の支援では捉え切れない問題――ヤングケアラーの問題を事例に
  1)台湾のヤングケアラーをめぐる概念
  2)親化した子どもの実態をめぐる調査――家庭扶助基金会による調査
  3)まとめ
 4.制度的ギャップと政策課題の分析
 5.まとめと今後の課題

第8章 韓国における地域社会中心の障害者統合ケアの課題と展望
 1.序論
 2.地域社会統合ケアの歴史的背景
  1)「コミュニティケア」から「地域社会統合ケア」へ
  2)「医療・療養等地域ケアの統合支援に関する法律」制定
 3.障害者政策の観点から見る統合ケアにおける争点
  1)「ケア」、「療養」というアプローチの両面性
  2)「地域社会中心」に対する2つの思い
  3)障害者における保健・福祉協力の実効性
  4)高齢障害者――理解不足 VS 対応の緊急性
 4.障害者統合ケアの課題および展望
  1)ケア統合支援法改正を通したアプローチ体系の整備
  2)療養機能の大幅な拡充および革新
  3)地域社会居住支援(脱施設)政策との関係確立
  4)実質的な保健・福祉協力法案の模索
 5.結論

第9章 シンガポールのケアレジームにおける家事労働者支援の位置付け――ケアの政治とサードセクターの役割
 1.序論――高齢化社会に伴うエイジング・イン・プレイスと外国人家事労働への依存
 2.在宅ケアをめぐるイデオロギーの地理的背景
 3.方法論
 4.家事労働の問題点
  1)親密性の市場化――家庭という職場
  2)拘束と過度な「マイクロマネジメント」
  3)情動的虐待とメンタルヘルス
  4)高齢者ケアに特有の「技術的困難」
 5.移住産業の特徴
 6.「ケアする者をケアする」――サードセクター支援の空間と課題
  1)空間政治――ゲイラン地区で構築された空間的支援拠点の都市歴史的コンテクスト
  2)支援拠点中心性をめぐる空間的戦略
  3)「ケアする者をケアする」支援の特徴
 7.結論

 索引
 おわりに
 執筆者紹介

前書きなど

はじめに

 (…前略…)

 第1部の第1章では、本書の問題意識を振り返り、編著者である全泓奎が本書全体のテーマとかかわる東アジアの動向や今後の実践に社会開発アプローチという試論を提示している。ケアの危機は、単なるケアの関係性の復元だけでなく、ケア費用負担の政策的議論やケアサービスの供給に向けた実践的な模索を必要としている。既に国内外ではこうした議論が成されているが、より本格的な比較研究に向けたアイデアとして、福祉と開発の統合的な取り組みにかかわる社会開発アプローチをケアの危機に対応するアイデアとして模索していくことの必要性を示した。
 第2章の吉中季子は、ケアされる対象の一つである「ひとり親家庭」に焦点を当て、「ひとり親家庭日常生活支援事業」を取り上げる。本章はこの事業にあたり、ひとり親家庭サポート団体全国協議会が2024年に当事者と事業者に実施した調査を基に分析している。(……)
 第3章の東根ちよは、日本の子育て支援政策と地域福祉の関係性について、社会福祉協議会による子育て支援の取り組みの動向を振り返りながら地域福祉における子育て支援の将来に向けた考察を行っている。とりわけフィールドとしてかかわってきた堺市と同市の社会福祉協議会を対象に、校区福祉委員会による子育て支援活動や子ども食堂など、今後も子育て支援における地域福祉的アプローチの重要性が増すことを論じている。
 第4章の河西優は、自身もヤングケアラーとしての経験をもっていることから、これまで実施してきた当事者参画型アクションリサーチ(「子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト(Young Carers Action Research Project, YCARP)」)の成果を論じている。とりわけ子ども・若者ケアラー(ヤングケアラー)に対する関心が高まるようになってきた昨今の状況のなかで重要性が増しているヤングケアラーをめぐる日本の動向を概観し、その日本的な特徴を指摘する。(……)
 第5章の菅野拓は、災害とケアとの関係を論じている。日本は既知の通り大規模災害が頻発する災害大国である。それは平時とは異なる非日常の危機でもある。しかし平時のケアレジームが災害時のケアレジームと齟齬をきたしている問題点を、国と自治体、そしてサードセクター間の役割分担の構造的なずれから指摘する。
 第2部として第6章以降は、東アジアのいくつかの国や地域を取り上げ、ケアを取り巻く現状と制度や実践的な動向を紹介している。
 まず第6章の楊慧敏は、ケアの視点から中国における少子化対策と現実の乖離を指摘する。世界のなかでも屈指の人口大国である中国も人口増加に陰りを見せ始めていることから、中国における少子化の現状とその発生要因を突き詰め、関連する対策が家族の変化とケアの社会的条件と乖離している点を指摘する。(……)
 第7章の川瀬瑠美は、台湾の高リスク家庭支援策について取り上げる。台湾も東アジアのどの社会とも時を同じくして少子高齢化や家族形態の多様化が進んでいる。一方家族構成においては外国からの結婚花嫁が増え、多文化の背景を持つ家族が増えている。そうした状況を踏まえ本章では、台湾政府が2004年に創設した「高リスク家庭へのケアとガイダンス計画」に焦点を当て、制度評価をした上でその限界を踏まえた課題を述べている。(……)
 第8章の金辰宇は、韓国における障害者統合ケアを展望する論考をまとめている。筆者は元韓国政府保健福祉部にて、障害者福祉政策課長を務めた後に大学教員に至った経験を持つ。政府の役員だった時に大統領府の秘書官を務めた経験もある。今回の論考では、2026年に施行を控えている地域社会統合ケアを前に、障害者に対する統合ケアの課題を探ることを目的に寄稿してもらった。
 (……)
 第9章のコルナトウスキ・ヒェラルドは、シンガポールのケアレジームにおける家事労働者支援について論じている。シンガポールは強力な政府のガバナンスの下で、福祉システムのほとんどが市場に委ねられる形で外注化しており、サービス労働は移住労働者に頼っている。ケアに関しても、家族と市場領域が分担する形をとっているものの、家事や介護サービスの多くは市場部門によって賄われている。政府はその費用の一部を負担している。(……)
 その他本書では、制度や実践にかかわる内容をコラムとしてまとめている。大阪市でダブルケア支援を行っている民間の支援団体(一般社団法人 君彩~kimidori~)や窓口を設置しこれらの問題に対応している堺市のダブルケア支援、そしてヤングケアラー支援関連でも条例を制定して対応に乗り出している岡山県総社市と備前市、そして京都市のケアラー支援条例の事例を紹介する。また、被差別地域における子ども支援の現場の紹介も取り上げている。

著者プロフィール

全 泓奎  (ジョン ホンギュ)  (編著

所属:大阪公立大学都市科学・防災研究センター・大学院現代システム科学研究科教授
専攻分野:比較福祉政策論、社会的包摂論、アクションリサーチ論
主要著作:『映画で読み解く東アジア:社会に広がる分断と格差』(明石書店、2023、編著)、『貧困と排除に立ち向かうアクションリサーチ:韓国・日本・台湾・香港の経験を研究につなぐ』(明石書店、2022)、『東アジア都市の社会開発:貧困・分断・排除に立ち向かう包摂型政策と実践』(明石書店、2022、共編著)、『分断都市から包摂都市へ:東アジアの福祉システム』(東信堂、2020、編著)、『包摂都市を構想する:東アジアにおける実践』(法律文化社、2016、編著)、『包摂型社会:社会的排除アプローチとその実践』(法律文化社、2015)など。

上記内容は本書刊行時のものです。