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移民・難民の生存と受容
多様な主体・制度・実践
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年3月15日
- 書店発売日
- 2026年3月23日
- 登録日
- 2026年2月2日
- 最終更新日
- 2026年3月19日
紹介
移民/難民当事者、国家/政府、国際組織、NGO/市民団体等の支援組織、インフォーマル組織等の多様な主体が交錯して生み出される多層的な制度とその実践について、世界各地域、日本国内の各エスニック・グループを対象とした事例から「生存」と「受容」を鍵概念に描き出す。人の国際移動の複合的要因とその実相に迫る意欲的論集。
目次
序章 移民・難民の生存と受容を問う[明石純一]
生存と受容の概念――本書における考え方
各章の位置づけ
第Ⅰ部 移民・難民をめぐる世界の動向――越境的課題の多様な要因と主体
第1章 党派性を強めるアメリカの移民政策――連邦政府・州政府・州市民の相互関係[手塚沙織]
はじめに
1.無許可の越境者の現状――出身国の多様化とプッシュ要因の複雑さ
2.アメリカの国境管理政策の変更とアクター間の対立
3.無許可の越境者をめぐるアクター――連邦政府、州政府、州市民の相互作用
おわりに
第2章 ラテンアメリカにおける人の国際移動の背景とアクターの取り組み――ベネズエラとコロンビアを中心に[磯田沙織]
はじめに
1.ラテンアメリカ諸国を移動する人々の背景
2.ベネズエラのプッシュ要因
3.コロンビアのプル要因
おわりに
第3章 交差点としての移民・難民大国ヨルダン――移動が織りなす生きる場の生成[佐藤麻理絵]
はじめに
1.移動が織りなす国家形成――ヨルダンにおける国際人口移動概観
2.移民・難民の「受容」をめぐるフォーマル/インフォーマルな制度
3.移民・難民の「生存」を支える/脅かす諸枠組み
おわりに
第4章 トルコにおける難民の受入れと「調和」の実相――多主体による多層的対応[伊藤寛了]
はじめに
1.トルコの外国人人口とシリア難民の概要
2.トルコにおける難民対応――一時性・支援施策・アクター
3.難民の現状――生存と受容の狭間
おわりに
第5章 ニジェールを舞台にした密入国をめぐるポリティクス[中山裕美]
はじめに
1.アフリカ――ヨーロッパ間の人の移動と密入国
2.ニジェールを舞台としたEUの安全保障のためのポリティクス
3.ニジェール国内での矛盾の表出
おわりに
第6章 ウクライナ侵攻後のロシア人の中央アジア移住をめぐる語りの分析[ダダバエフ ティムール/園田茂人]
はじめに
1.新たな「旧」移民受入れ国としての中央アジア
2.調査の設計とデータ収集
3.中央アジア選択をめぐる語り――プッシュ要因とプル要因
4.中継地か定住地か――滞在合理化の論理
5.固定観念の打破と中央アジアの「再発見」
おわりに
第7章 ASEANの移住労働をめぐる規範形成と国内政策化――協働関係の進展と課題[首藤もと子]
はじめに
1.背景と調査研究動向
2.生存と受容に関する出国前の制度化と連携
3.移住労働者の権利保護に関する制度化と連携の進展
おわりに
第Ⅱ部 移民・難民をめぐる日本の動向――制度と実践の現在
第8章 4つの移動チャネルにみる移住労働者政策の両義性と限界――フィリピンの対日本送出し[安里和晃]
はじめに
1.フィリピンの移住労働者政策の歴史
2.海外送出し政策の概略
3.日本に対する移住労働者政策
おわりに
第9章 2つのコミュニティを生きる若者の生存戦略――在日クルド人1.5世代の語りを通じて[片山奈緒美]
はじめに
1.在日クルド人の移動と集住
2.クルド人の若者が語るコミュニティと受容
おわりに
第10章 救済からの排除――緊急避難措置を通じたミャンマー人の受入れ[人見泰弘]
はじめに
1.国家が行政管理を通じて作り出す排除と不平等
2.2021年軍事クーデター後のミャンマー人の移住背景
3.調査データ
4.救済からの排除――緊急避難措置を通じたミャンマー人の受入れ
おわりに――緊急避難措置による救済から排除されるのは誰なのか
第11章 移民と難民の境界――日本に退避したアフガニスタン人[小川玲子]
はじめに
1.移民と難民の境界
2.9.11以降のアフガニスタンにおける「国家建設」と日本
3.退避を求めてきたアフガニスタン人とは誰か?
4.退避のプロセスにおける移民と難民の境界形成
おわりに
第12章 国際人道保護としての制度・支援・世論の動向――在日ウクライナ避難民の受入れ[大茂矢由佳]
はじめに
1.ウクライナ人の国際移動・移住の概況
2.ウクライナ避難民に関わる日本の制度とアクター
おわりに
終章 移民・難民の生存と受容の諸様相と課題[首藤もと子/佐藤麻理絵]
世界における移民・難民の移動――「受容」するさまざまな主体と方法
日本における移民・難民の「受容」――多層的な問題と政策課題
あとがき
前書きなど
序章 移民・難民の生存と受容を問う[明石純一]
(…前略…)
各章の位置づけ
上記の問題関心にそって、本書は、第Ⅰ部と第Ⅱ部に分けて構成されている。7つの章からなる第Ⅰ部「移民・難民をめぐる世界の動向――越境的課題の多様な要因と主体」は地理的な近接性や経済的・社会的な関係性を踏まえ、5つの章からなる第Ⅱ部「移民・難民をめぐる日本の動向――制度と実践の現在」は歴史的な順次性を意識して章を並べている。
移民・難民の受入れは喫緊の内政問題であると同時に、多くの場合において対外政策上の課題でもある。第Ⅰ部では、その交錯が彼らの生存と受容に関わっている現実が、世界の諸事例の中に見いだされるであろう。第1章「党派性を強めるアメリカの移民政策――連邦政府・州政府・州市民の相互関係」(手塚沙織)は、アメリカ合衆国を事例として、同国への無許可の越境者をめぐるポリティクスを描き出すものである。(……)
続く第2章「ラテンアメリカにおける人の国際移動の背景とアクターの取り組み――ベネズエラとコロンビアを中心に」(磯田沙織)は、そのアメリカ合衆国へ多くの移民を送り出す後背地とみなされやすい中南米であるが、この地域それ自体が、人の移動を促進する経済的統合を背景に、多くの移民を抱えている。この「南南移動」の整理から始まる磯田論文は、ベネズエラ人の他国への移動とその背景、そしてホスト国であるコロンビア側の受入れ体制を検討している。(……)
第3章と第4章では、中東へと地域を移し、同地域の難民の生存と受容が論じられる。第3章「交差点としての移民・難民大国ヨルダン――移動が織りなす生きる場の生成」(佐藤麻理絵)で言及されるヨルダンもまた前述の「南南移動」の目的地であり、「オープン・ドア」をもって難民を受け入れているが、その「受容」は難民の生存を保証するものではない。同章では、移民と難民、政府と市民社会組織、フォーマルな制度とインフォーマルな制度が交差し、相互に作用する様相が論じられる。
前章でも登場したシリア難民の最大の受入れ国であるトルコの事例に分析を試みるのが、第4章「トルコにおける難民の受入れと『調和』の実相――多主体による多層的対応」(伊藤寛了)である。(……)
第5章「ニジェールを舞台にした密入国をめぐるポリティクス」(中山裕美)では、視点をさらに「西」へと移し、アルジェリア、チュニジア、リビアとイタリアを結ぶ「中央地中海ルート」に言及しつつ、自ら送出し国であり、また他の西アフリカ諸国の移民にとっての経由国でもあるニジェールが主な考察対象となる。(……)
第6章「ウクライナ侵攻後のロシア人の中央アジア移住をめぐる語りの分析」(ダダバエフ,ティムール/園田茂人)が目を向けるのは、ウクライナ侵攻を受けて、中央アジアなどへの国外脱出を選んだロシア人移民である。(……)
第Ⅰ部を締めくくる第7章「ASEANの移住労働をめぐる規範形成と国内政策化――協働関係の進展と課題」(首藤もと子)は、送出し国、経由国、受入れ国が混在する東南アジア地域、特にASEANの事例を分析する。(……)
第Ⅱ部は、海外から日本への人の移動について、異なる国籍や民族集団を取り上げ、彼らの生存と受容の状況を探ろうとするものである。第8章「4つの移動チャネルにみる移住労働者政策の両義性と限界――フィリピンの対日本送出し」(安里和晃)は、前章で取り上げられたASEANの構成国の一つ、そのなかでも自国労働者の保護に関心が高いことで知られるフィリピンから日本への移住労働を取り上げている。(……)
(……)日本ではいわゆる「クルド人問題」への風当たりが厳しいなか、第9章「2つのコミュニティを生きる若者の生存戦略――在日クルド人1.5世代の語りを通じて」(片山奈緒美)は、コミュニティとアイデンティティを手掛かりとして、現代の日本社会における彼らの生存と受容の可能性を示す。
在日クルド人よりもはるかに大きいプレゼンスをもって、日本における移民・難民の生存と受容を問うのが在日ミャンマー人である。第10章「救済からの排除――緊急避難措置を通じたミャンマー人の受入れ」(人見泰弘)は、2021年2月の軍事クーデーターをきっかけに日本政府が実施した「緊急避難措置」により日本に留まるミャンマー人に着目する論考である。(……)
(……)第11章「移民と難民の境界――日本に退避したアフガニスタン人」(小川玲子)で明らかになるのは、日本に逃れてきたアフガニスタン人の生存の過程と、日本社会への適応と定着、すなわち受容の経緯において観察される生々しい現実と課題である。
(……)第12章「国際人道保護としての制度・支援・世論の動向――在日ウクライナ避難民の受入れ」(大茂矢由佳)が論じるウクライナ避難民への対応は、世論の関心も高く、前章が論じたアフガニスタン退避者との格差が批判されるほどに、特例的に手厚いものであった。その点で特異性すら帯びたこの人道支援も、移民・難民の生存と受容という観点から課題やリスクと無縁ではない。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。
