書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
多様性を志向する教師教育
各国の文脈に根ざした多彩な姿をひもとく
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年2月15日
- 書店発売日
- 2026年2月6日
- 登録日
- 2026年1月7日
- 最終更新日
- 2026年2月3日
紹介
世界各国において児童生徒の多様性が高まっているなか、そうした状況を前提とした学校で働く教師の養成や研修が求められている。世界8か国の比較分析をとおして、多様性のさまざまな次元から、その傾向を探るとともに、日本における多様性を志向する教師教育の進展にむけたヒントを探る。
目次
はしがき
序章 研究の目的と方法[佐藤仁/伊藤亜希子]
第1節 問題の背景
第2節 研究の目的と方法
第3節 各章の概要
第1章 日本における多様性を志向する教師教育――人権教育の可能性[佐藤仁/伊藤亜希子]
はじめに
第1節 教師教育全般における多様性の位置づけ――教職課程コアカリキュラムと教員育成指標
第2節 多様性の次元と教師教育――特別支援教育と外国人児童生徒等教育
第3節 多様性を志向する教師教育の可能性としての人権教育
第4節 教職課程における人権教育の課題
おわりに
第2章 韓国における多文化教育の展開と教師教育――多様な子どもへの対応と拡充[田中光晴]
はじめに
第1節 「多文化の子ども」の増加
第2節 国レベルの多文化支援政策と変化――マクロな変化
第3節 教師教育全般における多様性の位置づけ――マクロからメゾ・ミクロへ
おわりに――多様性を志向する教師教育をめぐる課題
第3章 フランスにおける「共和国」やライシテを動員した多様性への対応[島埜内恵]
はじめに
第1節 先行研究にみる学校教育と「多様性」
第2節 多様性の対象――「移民」という次元
第3節 「共和国」と多様性
第4節 ライシテに関する教師教育
第5節 「共通の基盤」に立脚した教師教育
おわりに
第4章 移民社会ドイツにおける多様性を志向する教師教育[伊藤亜希子]
はじめに
第1節 政策にみるインクルージョンと多様性
第2節 ブレーメン大学の事例
第3節 デュースブルク=エッセン大学の事例
第4節 多様性を志向する教師教育を展開するうえでの示唆と課題
おわりに
第5章 オーストラリアの教員養成における「多様性」――公正・公平な教育機会の提供と成果の保証を目指して[青木麻衣子]
はじめに
第1節 教員養成制度の展開と現状
第2節 教師の専門性スタンダードと教員養成プログラムの国家認定制度
第3節 教員養成プログラムにおける「多様性」の扱い
第4節 近年の教師をめぐる動向――遠隔地の教師不足への対応
おわりに――教員養成プログラムにおいて「多様性」は志向されているのか
第6章 ニュージーランドの教師教育政策の展開にみる「多様性」[高橋望]
はじめに
第1節 教員養成分野のアクレディテーションの展開――養成段階
第2節 教員登録制度の展開――採用段階
第3節 教員評価とスクールリーダー教育の展開――研修段階
おわりに
第7章 イングランドにおける多様性への対応と教師教育政策[菊地かおり]
はじめに
第1節 保守系政権下の教師教育政策
第2節 保守系政権における多様性へのスタンス
第3節 教師の多様性確保に向けた取り組み
おわりに
第8章 イングランドの教師教育における反人種主義の実践――理論と実践の架け橋としての反人種主義フレームワーク[川口広美]
はじめに
第1節 イングランドの多様性と教育をめぐる動向
第2節 反人種主義を軸とした教員養成改革の動き
第3節 反人種主義フレームワークの活用実態とその意義と課題――バーミンガム・ニューマン大学の場合
おわりに
第9章 アメリカの教師教育における多様性と公正――研究動向と政策に着目して[佐藤仁]
はじめに
第1節 社会正義を志向する教師教育の展開――研究動向をもとに
第2節 社会正義を志向する教師教育の政策的動向――専門職基準にみる特徴
第3節 ワシントン州の教師教育制度における多様性の位置づけ
おわりに
第10章 アメリカの教師教育実践における「地域」重視の意義と課題[太田知実]
はじめに
第1節 教員養成における「地域」の重視
第2節 資源ベースの教師教育の実現可能性と困難――地域主導型プログラムの特徴・変遷に注目して
第3節 資源ベースの教師教育の成立要件と限界――地域主導型プログラムの構造・関係に注目して
おわりに
終章 研究の総括――国際比較を通して[佐藤仁/伊藤亜希子]
第1節 多様性を志向する教師教育の姿――各国についての整理
第2節 多様性を志向する教師教育の構造――各国に共通する傾向
第3節 まとめと今後の研究課題
あとがき
前書きなど
序章 研究の目的と方法[佐藤仁/伊藤亜希子]
(…前略…)
第3節 各章の概要
本書は序章に続いて、各国の多様性を志向する教師教育を分析した全10章、そして比較分析を行った終章から構成されている。以下、各章の概要を整理しよう。
第1章は日本を取り上げる。まず、多様性を志向する教師教育の政策に関して、教職課程コアカリキュラムと教員育成指標の内容分析から整理している。そのうえで、多様性の次元として、特別支援教育と外国人児童生徒等教育に着目し、それぞれの領域における多様性を志向する教師教育の特徴を考察している。そして、日本における多様性を志向する教師教育の可能性として、人権教育を取り上げ、教師教育における人権教育の現状を教職課程のシラバス分析から明らかにしており、今後の展開可能性を論じている。
第2章は韓国である。韓国は日本と教育制度上の類似性があり、外国にルーツのある子どもの増加に直面しているという点でも共通点がある。特に外国にルーツがある子どもに対する支援に着目し、「多文化支援」政策が「多文化教育政策」へと変化する過程をマクロレベルで整理している。そして、そうしたマクロレベルの変化を受け、メゾレベルとして教員養成(多文化教育講座の設置)と現職研修(世界市民教育先導事業)に着目している。そのうえで、世界市民教育の展開というミクロレベルの特徴を捉え、これらから、韓国における多様性を志向する教師教育の特徴と課題を示している。
第3章は、共和国の価値のなかでも「ライシテ」によって教育が特徴づけられるフランスを取り上げる。学校教育と多様性にまつわる先行研究の議論を踏まえ、多様性をめぐる議論で着目される移民の存在を整理し、フランスの文脈における多様性の次元としての移民について言及している。ライシテと多様性はややもすると相容れないものとされるが、ライシテがもつ多様性への志向を描き出し、ライシテに関する教師教育の展開を整理している。そのうえで、ライシテを動員した教師教育がもつ可能性と危険性を論じている。
第4章は、インクルージョンの概念が導入されたことにより多様性を志向する教師教育が推進されたドイツを取り上げる。移民社会であることを前提に多様性への対応を進めるドイツにおいて、インクルージョンや多様性といった理念がどのように政策に受容されたのか、連邦レベルの教師教育政策を確認している。さらに、州ごとに教育政策や制度が異なることを踏まえ、異なる州に位置するブレーメン大学とデュースブルク=エッセン大学の教員養成の事例を取り上げ、インターセクショナルな視点の獲得が資源ベースの教育の実現に不可欠である点を論じている。
第5章は、多文化・多言語国家であるオーストラリアの教員養成において、多様性がどのように扱われてきたのかを政策・制度面から論じている。まず、教員養成政策の展開と制度の現状を概観し、そのうえで専門性スタンダードと教員養成プログラムの国家認定制度において多様性がどのように規定されているのかを分析している。次に、オーストラリアの文脈における多様性の次元として先住民を取り上げ、先住民児童生徒理解に関わる科目やプログラム、先住民を対象とした教員養成プログラムの特徴を検討している。これらを踏まえ、オーストラリアの教員養成における多様性が意味するところを指摘している。
第6章は、多様な民族から構成されながらも、マオリとパシフィカの子どもに重点的な教育政策を展開してきたニュージーランドにおいて、多様性がどのように位置づけられているのかを整理している。その際、養成機関のアクレディテーション、採用段階の教員登録制度、研修段階の教員評価とスクールリーダー教育に着目し、整理が試みられている。また、多様性の次元の一つに先住民が挙げられるが、ニュージーランド特有のマオリの位置づけを踏まえ、ニュージーランドの教師教育における多様性の取り上げられ方とその特徴を論じている。
第7章と第8章はイギリスのなかでもイングランドを取り上げる。第7章は、イングランドにおける保守系政権下(2010年から2024年)の教師教育政策について、多様性への対応に着目して検討を行っている。教師教育を含め、教育政策は、政府による多様性への対応と大きく関係する。そのため、保守系政権における多様性へのスタンスとそれが教育政策にもたらした影響を整理している。そして、平等法との関わりから、「多様な教師の確保」(教師の多様性)についてその状況と課題について検討している。これらの検討を踏まえ、さまざまな多様性への配慮がもたらす問題についても指摘している。
第8章は、イングランドの教師教育における反人種主義の実践に目を向けている。イングランドの教育政策は制度的に現場での裁量が大きいという特色を踏まえ、実際の現場において反人種主義に基づく教員養成改革がいかに取り組まれているのか、「反人種主義フレームワーク」に着目し、検討している。まず、多様性と教育をめぐる動向において反人種主義が再注目される流れを確認し、反人種主義に基づく実践の重要性を提示している。そして、上記のフレームワークが開発された背景とそのプロセス、全体構成と特色を整理し、実際の活用実態とその限界について指摘している。そのうえで、こうした実践を可能とするイングランド固有の文脈を浮かび上がらせている。
第9章と第10章はアメリカを取り上げる。第9章では、アメリカにおける多様性を志向する教師教育として、社会正義を志向する教師教育に着目している。社会正義を志向する教師教育は多文化教師教育から発展し、その理論化が進められた。こうした研究動向がいかに政策や実践に反映されているのか、全米の専門職基準の特徴を整理し、州レベルの例としてワシントン州における社会正義を志向する教師教育の制度的特徴について論じている。
第9章は特に研究と政策の2つの側面について論じているが、第10章はアメリカにおける特徴的な実践を取り上げる。多様性の次元として人種に焦点を当てたアメリカの教師教育実践では、資源ベースの実践が目指されているが、その具体的方向性として、「地域」が重視される傾向にある。それを踏まえ、教師教育における地域の重要性を提起する先行研究の整理・検討を行い、地域主導型で資源ベースの教師教育を試みる事例としてボール州立大学の取り組み事例を取り上げている。そして、地域がどのように教師教育実践で重視されるのか、そこで目指される資源ベースとは何かを論じている。そして、資源ベースの教師教育の成立要件と限界を検討している。
終章では、各国における多様性を志向する教師教育の特徴をRQに沿いながら簡単に整理し、多様性の位置づけを踏まえたうえでの多様性を志向する教師教育の構造を比較分析する。そこから、多様性を志向する教師教育の共通する傾向を析出していく。
上記内容は本書刊行時のものです。
