書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
中東・北アフリカの人類学
エスノグラフィーで読み解く知と権力
原書: Anthropology of the Middle East and North Africa
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2026年1月25日
- 書店発売日
- 2026年1月19日
- 登録日
- 2025年12月8日
- 最終更新日
- 2026年1月9日
紹介
オリエンタリズムの呪縛から逃れ、中東・北アフリカを人類学的探究の対象とし、社会や人々について書くとはどのようなことなのか。ダイナミックに変化するこの地域の権力の過程に焦点を当てながら、民族誌という方法論を触媒に現代人類学の視座を提示する。
目次
謝辞
序章 中東・北アフリカの人類学における権力と知
中東・北アフリカの人類学における知の生産
さまざまな主体――中東・北アフリカの国民国家における若者、ジェンダー、家族、部族
中東・北アフリカにおける宗教と世俗主義の人類学
仮想の中東・北アフリカにおける人類学とニューメディア
第Ⅰ部 中東・北アフリカの人類学における知の生産
第1章 先行研究レヴューをレヴューする――中東・北アフリカ人類学概説
カールトン・クーン(一九〇四年~一九八一年)――アメリカ人初の中東・北アフリカ人類学者?
一九七七年――私の分水嶺の年
中東人類学と「地域特有の問題」の謎
第2章 差異の探究を妨げるもの――エスニック・アイデンティティと中東・北アフリカの変化する理論の領域
差異の過剰
岐路に立つ人類学
うつりゆく理論の領域
ネイション
ジェンダー
宗教
複数のアイデンティティと差異
これからの道
刺激
第3章 人類学の中東的前史――ある知の考古学
第4章 北アフリカ辺境での人類学的協働の実際と政治
植民地期の協働
ポスト植民地期の北アフリカにおける/の人類学
離散者の民族誌
人類学者と他の文化運動家
第5章 中東人類学の冷戦後の政治――対テロ戦争に直面する中間世代の見解
9・11という引き金と移行期世代の形成
政治との遭遇
アメリカ人類学会との出会い
第Ⅱ部 さまざまな主体――中東・北アフリカの国民国家における若者、ジェンダー、家族、部族
第6章 未来の人類学――アラブの若者と国家の状況
アラブの子どもと若者――マジョリティを定義する
アラブの若者――人口動態/プロフィール
アラブの若者――未来をとりまく状況と未来に向けた競争
レバノンの若者――人口動態/プロフィール
なぜ人類学者はアラブの子どもと若者を見過ごしてきたのか
アラブの子どもと若者に関して調査すべきこと
未来の人類学――その状況と挑戦
第7章 人類学者の記憶研究――紛争地域スーダンとエリトリアにおけるジェンダー化された政治の考察
はじめに
スーダンとエリトリアの重要性
記憶研究におけるパレスチナ/イスラエルの重要性
集合的記憶をつくりあげ、転覆させる
主観的経験の社会的構築
ジェンダーによって異なる記憶――スーダンとエリトリア
一九六〇年代から一九九〇年代に至るエリトリア/エチオピアの戦争における、ジェンダーによって異なる記憶、あるいは、エリトリアの女性戦闘員に関する覚書
ヌーバ女性とダルフール女性に関するノート
スーダン人共産主義者と「英雄的人生」
スーダン人民解放運動/軍(SPLM/A)と「英雄的人生」
結論
第8章 現代中東の沙漠的環境における真正性の拒絶――ジッダト・アル=ハラスィースの開発計画から
真正性・景観・アイデンティティ
歴史的背景
現代オマーンにおけるハラスィース部族
変容し、競合する真正性
おわりに
第9章 エジプトの旧免税特区における名家と資本主義の寄生虫――法、貿易、不確実性
ポート・サイード人と資本主義の寄生虫
法的擬制
帰属と義務とポート・サイード人意識
取引をする、未来をつくる
第Ⅲ部 中東・北アフリカにおける宗教と世俗主義の人類学
第10章 合理的で宗教的な方はご起立を――ムスリムの主体性と宗教の分析論
初期近代思想における宗教を概念化する
宗教的で合理的な個人はご起立を?
イスラーム的人格を再-創出する
相対性の限界――礼拝・感情・合理性
合理性と文化相対主義
おわりに
第11章 世俗的トルコでイスラームを定め、押しつける
トルコにおける宗教アイデンティティ
トルコの世俗主義
宗教教育
おわりに
第12章 離散のシャリーア――立ち退きと排除、旅する中東の人類学
リーガル・オリエンタリズムとしての植民地法
分割し、統治する
相手によって態度を変えない判事――されど女性のためにならず
グローバルなイスラームとムスリム的生活
ユーロ=シャリアという戦場
人権言説としてのリーガル・オリエンタリズム
共通の論議の場――リーガル・オリエンタリズムとしてのユーロ=シャリア
第13章 所属する場所――モロッコにおける植民地の過去、近代の言説、避妊の実践
モロッコにおける生殖補助医療政策と人口政治
避妊の実践とモロッコにおけるアイデンティティ形成のつながり
生殖と医療人類学からアイデンティティと自己定位を探る
避妊具の使用と不使用
妊娠・出産の語りを通じて分断を打ち壊しつつ再建する
複数のイメージ――「東」と「西」の衝突あるいは一致の源を追いかけて
立ち位置の複雑さ――中東人類学への提言
第Ⅳ部 仮想の中東・北アフリカにおける人類学とニューメディア
第14章 「われらがご主人さまの呼びかけ」――モロッコの一九七五年の緑の行進におけるマスメディアと人民
モロッコ政治を理論化する――マスメディアがつくった文化
行進に参加した者、呼びかけを受けた者
「おれたちはわれらがご主人さまの呼びかけを聞いた」、「おれたちは鳥肌が立った」
沙漠のなかへ
報酬を待ちわびる
「緑の行進をフェイスブックで」
第15章 ヴァーチャル・アイデンティティの構築――サウジアラビアにおけるオンライン部族主義とその先
サウジ社会
サウジアラビアにおけるインターネット
部族に関する議論をする掲示板(アル=ムンタディヤート)
サウジアラビアにおける部族的アイデンティティ
掲示板の実例
インターネットを調査手法として用いる
第16章 中東の若者と平和とニューメディア
ブログと宗教間対話、アラブ・アイデンティティを求める道
イランのブログ世界、ソーシャルメディア、政治活動
ソーシャルメディアの登場
グローバルメディアの力
ソーシャルメディアと離散の民
相互交流
ブログ、二〇一一年アラブの春、平和構築の動き
解説[鷹木恵子]
訳者解題
訳者あとがき
参考文献
索引
前書きなど
訳者あとがき
本書をすでに読んだ方はお気づきであろうが、本書は、『中東・北アフリカの人類学』というシンプルな題名に反して、中東と人類学が有する絡みあった関係性さながらの複雑さと厚みを持っており、「これ一冊を読めば中東(の人類学)がわかる!」といえるようなものではない。本書はむしろ、「人類学が中東とどう付き合い、中東をどう描き出してきたか、そこにどういう問題があるか」という自己批判の意識を持ちながら、「中東人類学」と「人類学から見た中東」の姿を描き出した論集である。各章の著者たちはほとんどがアメリカ合衆国で生まれ育ち(なかには中東・北アフリカの出身者やルーツを持つ者もいる)、普段は英語で思考し、各自の研究テーマに即したそれぞれ異なる問題意識を持っている。一言でいえば、本書はそれ自体「ややこしい」のだが、その「ややこしさ」こそが中東人類学のありようを表しているともいえる。
このような本書が翻訳され――私は可能な限り平易で読みやすく、原著者の意図が伝わる表現にしたつもりであるが、その成否は読者諸兄姉のご判断を仰ぎたい――出版の陽の目を見たことは望外の喜びであり、本書が日本における中東研究の進展に少しでも役立ち、中東に対する人類学的アプローチに関心のある人たちが参照する価値のあるものとなることを心より願っている。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。
