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現代中国を知るための54章【第7版】
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年2月29日
- 書店発売日
- 2024年3月7日
- 登録日
- 2024年2月2日
- 最終更新日
- 2024年3月11日
紹介
前著第6版(2018年刊)をベースに再構成し全面的に内容を改稿した最新版。第6版刊行以降の約5年間に起きた重大事件や新しい情報を盛り込み、複雑多岐を極める現代中国を多角的に複眼的に理解するために読者を導く最適な書籍である。
目次
「習近平の中国」をどう見るか――まえがきにかえて
Ⅰ 習近平政権3期目の内政動向
第1章 紆余曲折の現代中国政治史――人民共和国建国から改革・開放までの軌跡
第2章 一党独裁システムの基本原理――権力集中がもたらす「人治」のひずみ
第3章 長期化の様相を見せる習近平時代――――第20回党大会と第3期政権の指導体制
第4章 「中国式現代化」の挑戦とリスク――欧米の制度・価値観と一線を画す独自路線
第5章 改革・開放で深まる「信念の危機」――情報化社会が促す脱イデオロギー
第6章 「国家安全」と「法治」――人権・民主化を取り巻く抑圧構造
第7章 中国共産党の伝統的な政治風土――組織原則と族群・派閥・地方主義の関係
第8章 終わりなき反腐敗闘争――政治・行政に巣食う構造的な体制病
第9章 膨張を続ける「党の軍隊」――波紋を広げる核戦略・海洋進出・宇宙開発
第10章 「中華民族共同体」と少数民族――「漢化」が増幅するアイデンティティー危機
第11章 国際問題化する新疆ウイグル情勢――「反テロ」「反分裂」の陰で進む人権侵害
第12章 和解遠のくチベット問題――「ダライ・ラマ後継」の行方に漂う不透明感
第13章 習近平政権の「宗教中国化」――宗教管理政策の段階的強化と細分化
Ⅱ 低成長期経済の新発展戦略
第14章 国家主導で進む「数字中国」建設――デジタル・トランスフォーメーション戦略の行方
第15章 変貌する「ニューエコノミー」――「B to C 型」から「B to B 型」へ
第16章 中央銀行デジタル通貨の試み――「デジタル人民元」は普及するのか
第17章 深化するイノベーション――新常態における「創造大国」への転換
第18章 中国独自の経済制度――「曖昧な制度」が生み出す第2世代イノベーション
第19章 先行き不透明な不動産市場――コロナマネー流入と痛みを伴う規制
第20章 内外情勢に揺れる株式市場――「コロナテックバブル」と国産化政策への期待
第21章 後退する国有企業改革――市場原理と一線画し、党の管理・指導を強化
第22章 激増する農産物輸入――自給率の高い世界最大の輸入大国
第23章 労働力不足と農業の担い手――誰が農業をするのか、どのように農業をするのか
第24章 強化される脱炭素化の取り組み――「3060目標」の実現可能性と課題
第25章 加速する再エネ開発と自動車の電動化――万国共通課題への戦略的な挑戦
第26章 止まらない米中の技術覇権争い――現実味を増すハイテク切り離し
第27章 日中経済交流は量から質へ――相互補完に商機も政治の緊張に危うさ
第28章 論議呼ぶ「一帯一路」――浮上する「債務の罠」の懸念
Ⅲ 流動化する社会の地殻変動
第29章 社会を揺るがしたコロナ禍――政権の強圧姿勢が国民の不満を増幅
第30章 増大する中間層とその政治社会意識――社会の安定装置か、体制転換勢力か
第31章 競争社会を生きる若者世代の苦悩――「内巻」と「躺平」のはざまで
第32章 多様化する大学生の就職戦線――公務員人気の一方で「スロー就職」組も
第33章 若者たちを魅了する「二次元」文化――サブカルチャーからカルチャーへ発展
第34章 変容する市民の消費行動――「爆買い」から理性志向へ、モノからコトへ
第35章 生活を脅かす「食の安全」問題――急がれる管理・監督体制の確立
第36章 貧富格差縮小を目指す「共同富裕」――成長と分配のバランスに苦慮
第37章 デジタル時代の新型主流メディア――管理強化による世論誘導はどこまで可能か
第38章 変化に富む情報空間の世論――SNS「民意」と政府のせめぎ合い
第39章 国際的発信力の強化と信頼性の壁――ネガティブな中国イメージを変えられるか
第40章 国民の間に浸透するキリスト教――信者急増と「宗教中国化」で強まる統制
Ⅳ 緊迫する対外関係と台湾・香港
第41章 対立が深まる米中両大国――威信をかけて競い合う軍事・科学技術覇権
第42章 歴史の呪縛が続く日中関係――色あせた「友好」と遠い「成熟」への道のり
第43章 激化する東シナ海の日中攻防戦――尖閣諸島をめぐる対立と増大するリスク
第44章 揺れ動く中朝・中韓関係――融和と確執のはざまの朝鮮半島外交
第45章 ASEANに対する「分断」外交――「親中」諸国への重点支援で影響力拡大
第46章 危機が連鎖する南シナ海――人工島造成で強化される実効支配と軍事拠点化
第47章 国境問題で険悪化する中印関係――アジアの安定を左右する人口大国間の軋轢
第48章 戦略的連携を強める中露――米国に対抗し、「多極的世界秩序」を追求
第49章 敵対と友好の対欧州関係――2000年を超す相互交流の歴史
第50章 世界が注視する対バチカン関係――歴史的和解の裏で国交回復交渉は膠着
第51章 中南米で広まる影響力――台湾孤立化や資源獲得を狙い、「米国の裏庭」へ進出
第52章 独自路線の対中東・アフリカ外交――内政不干渉を原則に加速する関係緊密化
第53章 緊張高まる台湾海峡情勢――強まる統一攻勢と離れる民意
第54章 死文化した香港「一国二制度」――北京の統制強化と民主化運動の終焉
前書きなど
「習近平の中国」をどう見るか――まえがきにかえて
2012年11月に中国のトップの座に就いた習近平総書記(国家主席、中央軍事委員会主席)は2期10年の国家運営を経て、2022年10月開催の中国共産党第20回大会を機に異例の第3期目政権を本格始動させた。この間、習総書記は反腐敗闘争をテコに着実に権力基盤を固め、自らの指導思想に基づくイデオロギー統制を強化し、改革・開放以降の歴代指導者のなかでは最も個人独裁色の強い、突出したリーダーシップを確立した。
経済建設の面では過去10年間に国内総生産(GDP)を倍増させ、世界経済に占める中国経済の比率を18・5%(米国に次いで第2位)へと躍進させたが、厳しい言論・報道統制、少数民族や宗教の「中国化」推進、有無を言わせぬ「ゼロコロナ」政策などに象徴的に見られたように強権発動型の政治手法が目立ち、国民の間には不満と閉塞感が広まっている。対外関係では軋轢を厭わずに自己主張を強め、東シナ海や南シナ海で力による現状変更を試みるなど、覇権主義的行動が際立つようになった。なりふり構わずに影響力拡大を図る中国の積極攻勢は外交、通商、軍事、国際協力、ソフトパワーなど多くの分野で関係国の警戒と反発を招いている。2023年7月、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は中国の「野心と威圧的政策」を「NATOの利益、安全、価値観への挑戦」と断じる共同声明を採択し、中国を脅威と見なす立場を鮮明にした。
強権体制はそれを防衛・維持するために、より強圧的な手法を駆使する。また、求心力を高めるために、常に「敵」の存在を必要とし、危機感を煽る。危機感はさらなる強権の発動を促し、政権に対する内外の反発を増幅させる。習近平の中国はそうした強権体制にありがちな悪循環に陥っているように見える。
(…中略…)
いま私たちの目の前にある中国は四つの異なる顔を見せている。「変わろうとしない中国」と「変わりつつある中国」、そして「自信をみなぎらせる中国」と「不安にさいなまれる中国」である。四つの顔はにらみ合い、入り乱れ、微妙な均衡を保ちながら、今日の中国の全体像を構成している。
将来的な問題はこの均衡が崩れる日が来るのかどうか、もし来るとするならば、いつ、何をきっかけに、どのような変動が生じるのか、ということである。転換の引き金になるのは低成長期に入っている経済をめぐる変事かもしれないし、台湾海峡危機の暴発かもしれない。現時点ではそれらは推測の域を出ない問題であるにせよ、中国の存在感と影響力の大きさゆえに、いったん事あれば「対岸の火事」視できないことを、私たちは肝に銘じておかなければならないだろう。その意味では、中国が好きであるとか、嫌いであるとか、あるいは親中であるとか、反中であるとか、といったようなことは問題にならない。求められているのは、客観的な情報と実態に基づいて「中国を知る」、そして根拠の乏しい言説や偽情報、プロパガンダに惑わされることなく、自分の視点で「中国を考える」ということに尽きる。
*
本書は2018年11月に刊行した『現代中国を知るための52章【第6版】』をベースにして章立てを再構成し、内容を全面的に改稿した最新版である。これまでと同様に政治、経済、社会、外交の4分野の注目されるテーマを選択し、歴史的経緯を踏まえつつ、【第6版】刊行以降の約5年間に起きた重大事件や新しい情報、データ、分析を、できる限り盛り込むよう配慮した。また、新しい筆者にも加わっていただき、旧版では取り上げることのできなかったテーマを追加した。本書が複雑多岐を極める現代中国を多角的、複眼的に理解する一助になれば幸いである。
(…後略…)
追記
【執筆者一覧】
藤野彰(ふじの・あきら) ※編著者プロフィールを参照
安生隆行(あんじょう・たかゆき)
経済産業省通商政策局国際経済課課長補佐(総括およびOECD担当)。在広州日本国総領事館・在上海日本国総領事館専門調査員、三井住友銀行(中国)有限公司企業調査部部長代理、外務省国際情報統括官組織第三国際情報官室専門分析員などを歴任。独立行政法人経済産業研究所コンサルティングフェロー。共著に『日中関係は本当に最悪なのか――政治対立下の経済発信力』(日本僑報社)。他に雑誌への寄稿多数。
池上彰英(いけがみ・あきひで)
明治大学農学部教授。1957年生まれ。東北大学大学院農学研究科博士前期課程修了、博士(農学)。農林水産省農業総合研究所、同国際農林水産業研究センターを経て、2001年より明治大学勤務。著書に『中国の食糧流通システム』(御茶の水書房)、『WTO体制下の中国農業・農村問題』(東京大学出版会、共編著)、『中国農村改革と農業産業化』(アジア経済研究所、共編著)など。
石井利尚(いしい・としなお)
読売新聞東京本社調査研究本部主任研究員。1965年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。北京特派員、経済部、台北特派員、国際部次長、世論調査部次長、金沢支局長などを経て現職。共著書に『膨張中国』(中公新書)、『チャイナNOW――50歳の中国診断』(中央公論新社)。共訳書に『2030年 中国はこうなる』(科学出版社東京)。
葛旭(かつ・きょく)
中国河北大学新聞伝播学院講師。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程修了。博士(学術)。論文に「中国の地方『政務微博』に見る情報公開の役割と限界――4直轄市における突発事件への対応を事例として」、「突発事故発生時における中国の地方『政務微博』の役割と限界――8・12天津港爆発事故での対応を事例として」など。
佐藤千歳(さとう・ちとせ)
北海商科大学商学部教授。1974年生まれ。東京大学教養学部地域文化研究学科卒業後、北海道新聞国際部記者、同北京支局長を経て、北海道大学文学研究科博士課程修了。2013年より現職。主な著書に『現代中国の宗教変動とアジアのキリスト教』(北海道大学出版会、共著)、『インターネットと中国共産党』(講談社)など。
西茹(シー・ルー)
中国瀋陽在住メディア研究者。1986年、瀋陽師範学院中国語言文学系卒。遼寧省『新思惟輯刊』『遼寧青年』編集者を経て、北海道大学大学院国際広報メディア研究科博士課程修了、博士。2008年同大学院准教授に着任。19年教授に昇進。22年退職。著書に『中国の経済体制改革とメディア』(集広舎・中国書店)、『習近平政権の言論統制』(蒼蒼社、共著)など。
杜海川(と・かいせん)
Tencent Group、Proxima Beta Japan株式会社プロジェクトマネージャー。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院修士課程修了。DeNA、FunPlus勤務を経て現在まで日中間のゲーム開発、ゲームパブリッシングの共同プロジェクトに従事。修士課程ではコンテンツツーリズムを研究。著作に「中国人観光客を誘致するためのコンテンツツーリズム」(論文)、「日本のコンテンツのメディア越境――日本アニメの伝播における隠された架け橋『字幕組』」。
西村友作(にしむら・ゆうさく)
対外経済貿易大学国際経済研究院教授。1974年生まれ。2010年に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士を取得し、同大学で日本人初の専任講師として採用される。同副教授を経て、2018年より現職。日本銀行北京事務所客員研究員。専門は中国経済・金融。
比嘉清太(ひが・きよた)
読売新聞国際部記者。1978年生まれ。東京大学教養学部地域文化研究学科卒。長野支局記者、東京本社編集局社会部記者、瀋陽特派員、台北特派員、広州・香港特派員、政治部記者、北京特派員などを経て現職。共著書に『現代中国を知るための44章』。
本間圭一(ほんま・けいいち)
北見工業大学教授兼国際交流センター長。1968年生まれ。パリ第5大学大学院法学部国際展望学科修了。読売新聞東京本社でリオデジャネイロ特派員、ロンドン特派員、パリ特派員などを経て現職。著書に『アメリカ国務省』(原書房)、『イギリス労働党概史』(高文研)、『反米大統領チャベス』(高文研)、『パリの移民・外国人』(高文研)、『南米日系人の光と影』(随想舎)。
三竝康平(みつなみ・こうへい)
帝京大学経済学部専任講師。2015年、神戸大学大学院経済学研究科博士課程後期課程修了、博士(経済学)。主な研究業績は、KAJITANI, Kai, CHEN, Kuang-hui, MITSUNAMI, Kohei, How Do Industrial Guidance Funds Affect the Performance of Chinese Enterprises?, RIETI Discussion Paper Series 22-E-110, 2022 やNAKAGANE, Katsuji, MITSUNAMI, Kohei, Nexus between privatization and marketization during transition process: an experimental analysis based on China’s provincial panel data, Journal of Contemporary East Asia Studies, Volume 7, Issue 1,pp.50-75, 2018 など。
山田周平(やまだ・しゅうへい)
桜美林大学大学院特任教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、北京大学外資企業EMBA修了。日本経済新聞で台北支局長、アジア部次長、中国総局長を歴任し、日本経済研究センター研究員兼務を経て2023年より現職。共著に『技術覇権 米中激突の深層』(日本経済新聞出版社)、『習近平「一強」体制の行方』(文眞堂)など。
吉田健一(よしだ・けんいち)
読売新聞東京本社論説委員。1969年生まれ。大阪外国語大学タイ・ベトナム語学科ベトナム語専攻卒。香港特派員、広州特派員、リオデジャネイロ特派員、ハノイ特派員、中国総局長などを経て現職。共著書に『膨張中国』(中公新書)、『日中対立を超える「発信力」――中国報道最前線 総局長・特派員たちの声』(日本僑報社)など。
李志東(り・しとう)
長岡技術科学大学大学院情報・経営システム系教授。1962年生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。1990年に日本エネルギー経済研究所勤務。1995年に長岡技術科学大学に着任。助教授、准教授を経て、2007年より現職。著書に『中国の環境保護システム』(東洋経済新報社)など。論文多数。
劉亜菲(りゅう・あひ)
株式会社KDDI総合研究所コアリサーチャー。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程修了。博士(学術)。現職では、市場調査・事業戦略検討に従事。調査テーマはメディアコンテンツ、消費、NFTなど。論文、調査レポートなど多数。著作には「ライブコマースによって変容する消費行動」(論文)、「読書離れに効くオーディオブックの市場拡大戦略を探る」(調査レポート)など。
魯諍(ろ・そう)
北海道文教大学国際学部国際コミュニケーション学科准教授。2006~14年読売新聞瀋陽支局、同中国総局で助手を務めた後、北海道大学国際広報メディア・観光学院大学院博士課程修了、博士(国際広報メディア)。2021年より現職。共著に『日中対立を超える「発信力」』(日本僑報社)。共訳書に『中国における報道の自由』(桜美林大学北東アジア総合研究所)。
上記内容は本書刊行時のものです。