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ウェルビーイングな社会をつくる 草郷 孝好(著) - 明石書店
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ウェルビーイングな社会をつくる (ウェルビーイングナシャカイヲツクル) 循環型共生社会をめざす実践 (ジュンカンガタキョウセイシャカイヲメザスジッセン)

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発行:明石書店
四六判
228ページ
並製
価格 2,200 円+税   2,420 円(税込)
ISBN
978-4-7503-5433-0   COPY
ISBN 13
9784750354330   COPY
ISBN 10h
4-7503-5433-3   COPY
ISBN 10
4750354333   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年7月15日
書店発売日
登録日
2022年6月9日
最終更新日
2022年7月20日
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紹介

経済と社会を発展させながら、誰一人取り残さずに生活状態を改善することは可能なのか。本書は、潜在能力アプローチ、社会的関係資本、内発的発展論を援用し、経済成長モデルからウェルビーイングモデルへの転換を提唱する。私たち自身が社会を変えていくための処方箋。

目次

序章 誰一人取り残さないウェルビーイングな社会の提案
 新型コロナ禍で問い直される豊かなライフスタイル
 課題先進国日本
 社会変革へのビジョン
 循環型共生社会への変革

1章 2030アジェンダと循環型共生社会
 国連ミレニアム宣言から2030アジェンダへ
 2030アジェンダとは?
 SDGsがめざす「循環型共生社会」
 環境と調和する循環型経済
 いのちを大切にする共生社会

2章 経済成長モデルによって何を得て、何を失ったのか
 経済成長モデルの思い描く豊かさ
 経済成長モデルのしくみ
 暮らし向きはどう良くなったのか
 国民一人あたりのGDPと暮らし向き
 経済成長モデル下の暮らしの実像
 利益のパイを奪い合う社会
 貧困世帯の増加と高止まり
 心身の健康はどう良くなったのか
 世界トップクラスの長寿国へ
 健康寿命に注目する
 教育はどう良くなったのか
 才能を伸ばし、技能を磨く教育
 伸びる高校と大学への進学率
 いじめと不登校生徒の大幅増

3章 なぜ経済成長モデルは社会に歪みをもたらすのか
 経済成長モデルが引き起こす格差と分断
 アメリカ社会に見る経済成長モデルの落とし穴
 格差と分断を生む新自由主義経済
 企業利益重視の新自由主義経済政策
 持続困難な経済成長モデル
 ごみや公害を引き起こす経済のしくみ
 人と人を孤立させる勝者選別の社会
 経済成長モデルと幸福のパラドクス
 日本人の幸福感の変化
 固定化する幸福のパラドクス

4章 循環型共生社会の構想
 なぜ循環型共生社会に変革すべきなのか
 分かち合いの循環型共生社会
 循環型共生社会が大切にすること

5章 循環型共生社会をつくるウェルビーイングモデル
 ウェルビーイングの意味
 ウェルビーイングモデルのしくみ
 ウェルビーイングモデルの大黒柱:潜在能力アプローチ
 3つのタイプの潜在能力
 ウェルビーイングモデルの土台:社会的共通資本
 ウェルビーイングモデルと幸福度
 ウェルビーイングモデル対経済成長モデル

6章 ウェルビーイングモデルによる政策づくり
 自助・共助・公助原理の限界
 個人・地域・行政が対話し、協働する社会への転換
 ウェルビーイングモデルによる政策の軸足
 いのちを尊重する労働政策
 主体性と共感力を磨く教育政策
 健康長寿を重視する予防医療政策
 自然と共生する経済政策
 誰もが対話できる共生社会

7章 ウェルビーイングを大切にする地域づくりのカギ 地域社会を動かす市民の主体性
 地域協働で地域の未来のビジョンを描く
 地域協働を醸成する6つのポイント
 水俣市の環境モデル都市のまちづくり
 長久手市のたつせのある共生のまちづくり

終章 私たちがつくる未来

 引用・参考文献
 あとがき

前書きなど

序章 誰一人取り残さないウェルビーイングな社会の提案

 (…前略…)

社会変革へのビジョン
 “未来社会のビジョンを構想するなんて、机上の空論であって、無駄なこと”と思われるかもしれません。ところが、世界は、新しいビジョンとその実現に向かって、すでに動き出しています。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)という言葉を耳にした人も多いのではないかと思います。実際、『SDGs』(蟹江 2020)を皮切りに、ビジネス、行政、学校教育など多岐にわたり解説書や実用書が作られています。また、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットでSDGsが取り上げられています。SDGsは、国連加盟国が合意した「私たちの世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下、2030アジェンダ)の実現のためにつくられたもので、注目すべきは、2030アジェンダです。
 では、なぜ2030アジェンダという国際合意が必要になったのでしょうか。いくつかの理由が考えられます。自然災害がこれまでにない規模と頻度で起き、溶け出しているシベリアの永久凍土のように、地球環境の破壊が進み、このままでは取り返しのつかないことになってしまうという気候危機の問題があります。また、世界規模で貧富の格差が広がり、民族、ジェンダー、LGBTQなどを軸にした対立や差別などの社会問題の深刻化もあります。また、国内や国家間の対立や紛争によって、私たちの平和な日常がいとも簡単に崩れてしまうことへの危機もあります。
 急速に悪化する環境破壊を食い止めるには、環境に優しい経済のしくみ、循環型経済に変えていくことが不可欠です。また、格差を解消し、平和で多様性を認める社会をめざすには、誰一人取り残さない社会のしくみ、共生社会をつくっていくことが必要です。2030アジェンダは、循環型経済と共生社会の両方の実現を掲げています。障害のある人、LGBTQの人、外国につながりのある人など、さまざまな事情や特性を持つ人が特別扱いされることなく、気持ちよく生きられる社会をつくる、ハラスメントなどの差別や暴力をなくし、「誰一人取り残さない社会」を言葉だけに終わらせず、実現していくことなのです。
 循環型経済と共生社会の2つを併せ持つ社会こそ本書が提案する「循環型共生社会」であり、この社会像こそ、2030アジェンダがめざすウェルビーイングを大切にする未来社会につながっていくと考えます。

循環型共生社会への変革
 図1に示した課題を1つ1つ深掘りしていくと、それぞれが別々の問題ではなく、どこかでつながっていることに気がつきます。たとえば、プラスチックごみ(プラごみ)の問題は、食品の衛生管理や海洋汚染と関係していますし、食物連鎖によってマイクロプラスチックの人体への健康被害にもつながっています。"問題の根っこにあるのは何か"を突き詰めていくと、やがて、その本質は、これまで私たちが享受してきた経済や社会のシステムにあることが見えてきます。
 環境にダメージを与えることがわかっていても、物質的に豊かな生活を続けていくために経済成長を続けていくのではなく、未来にわたり環境を維持できる経済と、誰もが健康で幸せな生活のできる共に生きる社会を実現するシステムに変えていくことが必要です。そのためには、社会のあり方を決める社会発展モデルを見直し、経済システムと社会システムを同時に変革し、未来社会を変えていくことが重要なのです。将来、新たなパンデミックや大規模な自然災害が起きても、日々の生活基盤が容易に崩れない社会、地域住民同士の仲違いや地域の間のいさかいを引き起こさない社会を実現していくことこそ、私たちがめざすべき未来社会です。
 本書は、社会変革の必要性、社会発展モデルの方向性とその内容、そして、私たちが何をすべきかを考え、行動していくためのヒントを探り、どのようにしてウェルビーイングを大切にする循環型共生社会を実現できるのかを提案するものです。
 まず、国際合意された2030アジェンダはどういうものなのか、なぜ循環型共生社会をめざすのかを掘り下げることにします。それから、これまでの社会発展を牽引してきた経済成長モデルによって、私たちが手に入れることができたことと失ってしまったことを見ていくことにします。そのうえで、これまでのシステムに変わる新しい社会経済システムとしての循環型共生社会の構想について潜在能力アプローチと社会的共通資本に基づいて説明します。そして、循環型共生社会に変革する新たな発展モデルとして、ウェルビーイングモデルを提唱します。また、経済成長モデルとウェルビーイングモデルのどちらが幸せな社会をつくっていくことができるのか、経済社会政策がどう変わるべきなのかについても考えます。最後に、経済成長からウェルビーイングの向上へと実現すべき目標を変え、地域社会の変革に取り組む国内の2つの地域の実践を取り上げ、循環型共生社会への変革のカギは何かを具体的に考えます。とくに、誰一人取り残さないウェルビーイングを大切にする社会を地域レベルで実現するために、市民、行政、企業、地域団体の協働がカギになること、さらに、私たち一人ひとりに何ができるのかを考えていきます。

著者プロフィール

草郷 孝好  (クサゴウ タカヨシ)  (

関西大学社会学部教授。ウィスコンシン大学マディソン校PhD(開発学)取得。民間会社、世界銀行、明治学院大学、北海道大学、国連開発計画(UNDP)、大阪大学を経て現職。ブリティッシュコロンビア大学客員教授(2015~2016)、総合地球環境学研究所客員教授(2015~現在)。さまざまな立場の人々が主体的によりよい生き方を実現できる社会のあり方と実践を探求し、当事者主体の内発的なコミュニティづくりの理論的研究とアクションリサーチを行っている。地域共創による内発的な地域づくりや2030アジェンダ(SDGs)を推進する自治体を支援している。大阪府SDGs有識者会議委員、愛知県長久手市幸せのモノサシアドバイザー、兵庫県新但馬地域ビジョン検討委員会長、兵庫県朝来市第3次総合計画審議会長などを歴任。主な著書に『GNH(国民総幸福)』(共著、2011年、海象社)、『市民自治の育て方』(編著、2018年、関西大学出版部)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。