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移民の人権 近藤 敦(著) - 明石書店
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移民の人権 (イミンノジンケン) 外国人から市民へ (ガイコクジンカラシミンヘ)

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発行:明石書店
A5判
208ページ
並製
価格 2,400円+税
ISBN
978-4-7503-5255-8   COPY
ISBN 13
9784750352558   COPY
ISBN 10h
4-7503-5255-1   COPY
ISBN 10
4750352551   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2021年9月20日
書店発売日
登録日
2021年8月17日
最終更新日
2021年9月22日
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紹介

国民と外国人の二分法ではなく、「外国にルーツを持つ人」「将来の国民」も含む“移民”の人権をめぐる国内法上の問題について判例を分析しながら整理。人権条約と憲法に照らして課題を乗り越える、多文化共生社会に求められる指針を提示する。

目次

序文

第1章 移民の態様と権利の性質
 はじめに
 1.市民的権利(自由権・受益権・包括的人権)
 2.政治的権利
 3.経済的権利
 4.社会的権利
 5.文化的権利
 おわりに

第2章 市民的権利
 はじめに――市民社会におけるすべての人の権利
 1.精神的自由
 2.入国の自由と居住の自由
 3.身体の自由
 4.幸福追求権と平等
 5.受益権
 6.国籍の取得と喪失
 おわりに――家族の権利と子どもの権利

第3章 政治的権利
 はじめに
 1.外国人参政権をめぐる諸外国の動向
 2.日本における動向
 3.外国人の選挙権・被選挙権をめぐる憲法解釈
 4.外国人の住民投票
 5.外国人の公務就任権
 おわりに

第4章 経済的権利
 はじめに
 1.職業選択の自由
 (1)外国人に法律上制限されている職業
 (2)資格外活動における制限
 (3)技能実習における職場選択の自由の制限
 2.公正かつ良好な労働条件を享受する権利
 (1)日本で働く外国人労働者の現状
 (2)日本の労働関係法令における国籍差別・人種差別禁止規定
 (3)労働関連の判例
 3.財産権
 (1)財産権の内容と制限
 (2)外国人の財産権の制限

第5章 社会的権利
 はじめに
 1.年金・恩給等
 2.生活保護法の準用
 3.国民健康保険
 4.医療通訳
 おわりに

第6章 文化的権利
 はじめに――文化的権利と教育
 1.自己の文化を享有する権利
 2.教育を受ける権利の裏返しとしての「教育を提供する義務」
 3.外国人の教育に関する判例
 4.多文化共生社会における課題

第7章 マクリーン判決を超えて
 はじめに
 1.ノン・ルフールマン原則
 2.家族結合原則
 3.恣意的な収容禁止原則
 4.差別禁止原則
 おわりに――入国・在留に関する国際慣習法の5つの原則と2021年入管法等改正案の問題点

 巻末資料(重要判例抄録)
 索引

前書きなど

序文

 (…前略…)

 第1章は、総論的に、移民の態様と権利の性質に応じた人権保障のありようを概観した。権利の性質によって、国民と等しく外国人にも保障される場合もあれば、一定の外国人に一定の制約が認められる場合もある。一口に外国人といっても、その態様はさまざまである。たとえば、永住市民、その他の正規滞在者、非正規滞在者によって、その権利状況は大きく異なる。また、移民ないし移民の背景を持つ人には、外国人のほかに、帰化者もいれば、国際児もいる。これらに加えて、外国にルーツを持つ人は、日本国籍を持って帰国した中国帰国者・日系人・外国生まれ外国育ちの帰国子女など多様である。文化的な権利や差別禁止は、広い意味での移民の人権としての性質を持っている。
 第2章は、いわゆる自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)における市民的権利をめぐる問題を検討した。市民的権利とは、市民社会におけるすべての人の権利としての意味を今日は持つ。平等権、プライバシーの権利などの幸福追求権、適正手続などの人身の自由、集会の自由などの精神的自由、裁判を受ける権利などの受益権を含み、原則として外国人住民にも保障されている。ただし、政治的な表現の自由や、入国の自由・居住の自由などの経済的自由については一定の制約がみられる。
 第3章は、政治的権利に当たる、選挙権・被選挙権と、公務就任権の問題を検討している(ただし、今日の日本の憲法学説では、政治職を除く公務就任権の性格は、政治的権利というよりも、職業選択の自由の問題として考える傾向が有力である)。また、住民投票権や外国人市民代表者会議を通じた外国人の政治参加の新しい試みも分析している。
 第4章は、いわゆる社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)における経済的権利の問題を扱う。経済的権利とは、職業選択の自由と労働に関する諸権利を含む権利のことである。財産権は、市民的権利に含める意見と経済的権利に含める意見の一致をみず、国際人権規約での規定は見送られた。しかし、ここでは経済的権利の問題として扱うことにした。
 第5章は、社会的権利をめぐる問題を検討した。社会的権利としては、恩給法・戦争犠牲者援護法の問題、国民年金法における障碍者と高齢者の無年金問題、生活保護法の問題、国民健康保険法の問題などを検討している。すでに立法された場合は、社会保障を受ける権利の差別を禁止した社会権規約2条2項、自由権規約2条1項、同26条の裁判規範性が認められることに今後は留意すべきである。
 第6章は、文化的権利について扱う。文化的権利は比較的新しい権利であるが、伝統的な教育を受ける権利の問題を中心に論じつつ、マイノリティの文化享有権をめぐる新たな可能性にも言及している。個人の尊重を定める憲法13条が文化の多様性を前提としていることを踏まえた憲法解釈が求められている。
 第7章は、外国人の人権に関するリーディングケースであるマクリーン事件最高裁判決の問題点を考察する。今日の国際慣習法上、外国人の入国・在留については、国家が自由に決定できる裁量の幅は狭められている。ノン・ルフールマン原則、家族結合、恣意的な収容禁止、差別禁止なども国際慣習法といわれ、それらに反しない限りでの国の自由な裁量にすぎない。また、自国とみなしうる一定の長期滞在外国人の入国の自由および在留の権利は、保障されるべきである。国際慣習法や日本が批准している人権条約を指針として権利の性質を判断すべきであり、憲法の基本的人権は、在留資格の有無にかかわらず、保障されるものも少なくない。
 最後に、巻末には、外国人の人権をめぐる主要な判例の抄録を掲げている。(……)

 (…後略…)

著者プロフィール

近藤 敦  (コンドウ アツシ)  (

名城大学法学部教授。博士(法学、九州大学)。ストックホルム大学・オックスフォード大学・ハーバード大学客員研究員。名古屋多文化共生研究会会長。移民政策学会元会長。総務省・愛知県・名古屋市・可児市・安城市・春日井市・田原市・小牧市・西尾市・各務原市の「多文化共生推進プラン」づくり、法務省の「在留外国人に対する基礎調査」に参加。著書に『「外国人」の参政権――デニズンシップの比較研究』(明石書店、1996年)、『政権交代と議院内閣制――比較憲法政策論』(法律文化社、1997年)、『外国人の人権と市民権』(明石書店、2001年)、『新版外国人参政権と国籍』(明石書店、2001年)、『多文化共生と人権――諸外国の「移民」と日本の「外国人」』(明石書店、2019年)、『人権法〔第2版〕』(日本評論社、2020年)、編著にCitizenship in a Global World: Comparing Citizenship Rights for Aliens( Palgrave Macmillan, 2001)、Migration and Glabalization: Comparing Immigration Policy in Developed Countries(明石書店、2008年)、『外国人の法的地位と人権擁護』(明石書店、2002年)、『多文化共生政策へのアプローチ』(明石書店、2011年)、『外国人の人権へのアプローチ』(明石書店、2015年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。