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子どもアドボケイト養成講座
子どもの声を聴き権利を守るために
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年10月15日
- 書店発売日
- 2020年10月15日
- 登録日
- 2020年9月23日
- 最終更新日
- 2021年4月13日
紹介
いじめや虐待、貧困などにより権利侵害を受ける子どもたちを守り支援していく「子どもアドボカシー」の法制度化が日本でも目指される中、その全体像とエッセンスをわかりやすく伝え、支援者としての「子どもアドボケイト」を養成することを目的とした入門書。
目次
はじめに
第1講 子どもアドボカシーの意味
①辞書的意味
②アドボカシーの語源
③アドボカシーの担い手
④子どもアドボケイトとは?
第2講 子どもの権利条約と子どもアドボカシー
①子どもの権利条約の四つの柱
②子どもは「守られる権利主体」
③子どもの「意見及び気持ちの尊重」
④改正児童福祉法(二〇一六年六月三日公布)
第3講 イギリスの子どもアドボカシーから学ぶ
①イギリスアドボカシー政策の確立
②システムアドボカシーと個別アドボカシー
③イギリスの子どもアドボカシー制度から学ぶもの
第4講 子どもアドボカシーの四理念
①理念1――アドボカシーの本質としてのセルフアドボカシー
②理念2――権利行使主体としての子ども
③理念3――力関係(アダルティズム)への異議申立としてのアドボカシー
④理念4――アドボカシーはライフスタイル(生き方そのもの)
第5講 子どもアドボカシーの六原則
①原則1――子ども主導
②原則2――エンパワメント
③原則3――守秘
④原則4――独立性
⑤原則5――平等
⑥原則6――子ども参画
第6講 子どもアドボカシーの実践①――会議支援アドボカシー
①アドボカシー実践の類型
②会議支援アドボカシーの意義
③会議支援アドボカシーのプロセス
④会議支援アドボカシーの事例
第7講 子どもアドボカシーの実践②――訪問アドボカシー
①訪問アドボカシーとは
②訪問アドボカシーの体制
③訪問アドボカシーの実践
第8講 子どもアドボカシーの実践③――障害児のアドボカシー
①障害児のアドボカシーが必要な理由
②三つの事例
③子ども主導の重要性
④「障害の社会モデル」に基づくアドボカシー
⑤障害児の意見表明権とは
⑥非指示型アドボカシー
第9講 子どもアドボカシー制度化に向けての政策の動き
①子どもアドボカシー制度化に向けての検討の始まり
②「新しい社会的養育ビジョン」におけるアドボカシー
③制度化に向けての国の動き
④「児童福祉審議会を活用した権利擁護の仕組み」とその課題
⑤「アドボカシーに関するガイドライン案」の意義
⑥「アドボカシーに関するガイドライン案」の課題
第10講 求められる子どもの権利擁護制度
①求められる権利擁護制度の全体像
②公的子どもの権利擁護機関に求められる役割
③公的子どもの権利擁護機関が備えるべき特質
④児童福祉領域における権利擁護の仕組み
第11講 子どもアドボカシーセンターと市民の役割
①市民の役割の重要性
②イギリスの子どもアドボカシー団体
③求められる独立性とは――コーンウォールアドボカシーから学ぶ
④求められる当事者参画とシステムアドボカシーとは――障害児協議会から学ぶ
⑤子どもアドボカシーセンターの活動
補遺 子どもの権利に関する国内人権機関の独立性と機能――英国・北欧・カナダを対象とする比較研究
はじめに
1 子どもの権利擁護のための国内人権機関に求められる独立性と機能
2 英国子どもコミッショナーの独立性と機能
3 北欧子どもオンブズマンの独立性と機能
4 カナダオンタリオ州子どもアドボケイトの独立性と機能
5 国内人権機関の独立性と機能に関する国際比較
おわりに
前書きなど
はじめに
本書は子どもアドボカシーの全体像とエッセンスを、わかりやすく伝えることを目的とした入門書です。
子どもたち自らSOSをおとなに伝えていたにもかかわらず、虐待により命を奪われるという悲惨な事件が相次いだことを受けて、子どもアドボカシーが国会や地方議会、行政機関、マスコミなどで取り上げられるようになりました。厚生労働省も二〇一九年一二月に「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム」を設置し、子どもアドボカシーの制度化に向けて本格的な検討を開始しました。国会議員・地方議員、厚生労働省や自治体の行政関係者、児童相談所・児童福祉施設職員、そして子どもの権利を守ることを求める市民など、子どもに関わるすべての人にとって、「子どもアドボカシー」はキーワードになっています。
しかしながら、議員や行政、市民運動に携わる方々から、「子どもアドボカシーについてのわかりやすい本はありませんか」と尋ねられても、勧められる入門書がありませんでした。子どもアドボカシーについての研究書は増えてきました。しかし研究書であるために、一般の方々からのアクセスが難しいという問題点がありました。そのため、せっかく関心をもっていただいても、さらに知っていただく機会につながらず、残念な思いをしてきました。また子どもアドボカシーを進めたいと思っておられる関係者の中にも、十分ではない理解や誤解に基づくものもありました。そのため、「子どもアドボカシーを広げていくには、エッセンスをわかりやすくまとめた本が早急に必要だ」と感じてきたのです。
本書は子どもアドボケイトをめざす人を対象とした入門書です。子どもアドボケイトになるためには、アドボカシーの意味・理念・原則・実践方法について理解することが必要です。あわせて、ロールプレイや演習を通して子どもと信頼関係を構築し、子どもの声を聴き、子どもの意見の実現に向けて支援する技術を学ぶ必要があります。これは子どもアドボケイトとしての価値や生き方を体得するプロセスでもあります、そして実際のアドボカシー活動を通して、子どもに学ぶことにより、真にアドボケイトになれるのです。その意味で本書は、子どもアドボケイトという山の登山口だといえます。しかし、登山口がわからなければ、頂上にたどり着くことはできません。その意味で大切な第一歩だと考えています。
また本書は、国会や地方議会の議員、国や自治体で児童福祉行政に携わる方々、子どもアドボカシーを新たな活動として始めたいと考えている市民の方々、マスコミの方々など、子どもアドボカシーの実現に関わるすべての方々にとっての道案内となることをも願って執筆しました。
いじめや虐待を受けている子どもたち、貧困家庭の子どもたちをはじめ、権利侵害を受けて傷つきながら声を上げることができない子どもたちがたくさんいます。ニュースになり表に出ることもありますが、それは氷山の一角にすぎません。これをなんとか変えなければいけない。子どもの権利が守られる社会にしなければいけない。そのために必要なのが子どもアドボケイトです。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。